吉野直子ハープリサイタル
97/09/17 北陸学院栄光館

1)ヘンデル/主題と変奏
2)バッハ,J.S/イタリア協奏曲ヘ長調,BWV.971
3)フロートハウス/オルフェウスの墓に,op.37
4)マレスコッティ/ムーヴマン
5)ロータ/サラバンドとトッカータ
6)ルニエ/黙想
7)マヤーニ/トッカータ
8)ドビュッシー/月の光
9)サルツェード/古代様式の主題による変奏曲
(アンコール)
10)ドビュッシー/アラベスク第1番
●演奏
吉野直子(Hp)

今回報告する演奏会は,掘り出し物的演奏会でした。金沢にある北陸学院という学校の主催する演奏会で,そのせいもあって吉野直子さんの演奏会が1000円で聴けました。会場はコンサート・ホールではなく北陸学院の講堂だったのですが,ミッション・スクールだけあってなかなか味のある建物(パイプ・オルガンもあります)でした。礼拝を行う場所らしく,堅い木の椅子に座って聴くことになりました。建物の外の雨だれの音や虫の声などもかすかに聞え,風流な雰囲気に包まれました。

ハープのソロの演奏会というのは一生の間に何度も聴けるものではないと思うのですが,それが吉野さんの演奏だったことは幸運でした。ハープの音だけをじっと聴くということ自体初めてだったので,どこから音が出ているのかよくわからない不思議な響きだ,とまず思いました。それと,弾くのが大変そうだとつくづく思いました(両手両足を使っているのですね。)。調律も大変そうでした。

前半は,前の方に座ったのですが,座る位置を誤りました。ハープを三角定規だとすると,やはり三角形の見える位置に座るべきでした。吉野さんの顔が見え隠れするような位置だと,欲求不満(?)になるので,後半は,奇麗に三角形の見える席に移動しました。

プログラミングはとても面白いと思いました。ハープのオリジナル曲が多く,知らない曲ばかりだったのですが,古典から現代までいろいろな曲があり全く退屈しませんでした。吉野さんの書いたプログラムの解説も充実していました。

ハープの音は,1音出しただけで音楽的に響きますね。「オルフェウスの墓に」という曲が演奏されたのですが,さすが神様の時代からある楽器だと思いました。

とはいうものの,「ハープは現代曲の方が合う」とも感じました。現代曲にありがちなギスギスしたところがハープの響きで中和されるのです。バッハのイタリア協奏曲はオリジナルの楽譜どおり弾くと解説に書いてありましたが,これはちょっとイメージが違うかなという気がしました。ただ,装飾音とかトリルをハープできちんと弾いていたのには驚きました。

ハープはダイナミックな感じを出すのは苦手だと思うのですが,ドビュッシーみたいな曲にはぴったりですね。「月の光」の中の木の葉の音のような感じはハープ用だととてもうまく表現できます。アンコールのアラベス第1番(何かのCMで使われていますね。)もオリジナル曲のように響きました。時々聞える,つや消しみたいな音も,ギターっぽく響き,面白いと思いました。

最後にいちばん華やかな曲が演奏されて,プログラムもきちりと締まり1000円とは思えない充実した演奏会でした。吉野さんの自信たっぷりの響きと演奏の雰囲気からは,「若くして既に第1人者」という印象を持ちました。