大阪センチュリー交響楽団第45回定期演奏会
97/11/10ザ・シンフォニー・ホール

1)ハイドン,M./アルトトロンボ-ン協奏曲ニ長調(校訂:クリスチャン・リンドバーグ)*
2)クレストン/トロンボーンとオーケストラのためのファンタジー*
(アンコール)
3)サンドストレーム/カルツァ・デラ・マンチャン
4)トミ・ドーシー/僕はセンチになって(I'm gettin'sentimental over you)
5)ベートーウ゛ェン/交響曲第3番変ホ長調,op.55「英雄」(ベーレンライター版)
●演奏
高関健/大阪センチュリーSO/クリスチャン・リンドバーグ(Tb*1-4)

たまたま大阪で4泊5日の研修があり,一度行ってみたかったザ・シンフォニー・ホールに出かけてみました。そこでたまたまやっていたのがこのコンサートでした。このホールは私の持っていた観光ガイドには載っていなくてどこにあるのか迷ったのですが,あれこれ調べているうちに私の宿泊していたJR大阪駅付近の宿から歩いて行ける距離にあることがわかりました。内装は落ち着きと風格がある感じで大変良いホールだと思いました。ただ,階段が多くて少々疲れました(エレベータもありましたが,あまり好きではないので)。

チケットは当然当日券でした。これまで一度も座ったことのない指揮者の正面の席が空いていたので試しに買ってみました(2000円でした。)。座ってみて「これはTVカメラの視点だ」「TVでナイター中継を見ている雰囲気」と思いました。開演前のアナウンスがこの席では全然聞こえなくて,いつもと違う音響なのだと実感しました。演奏中もステージ同様の明るさで,しかも高い位置にいるのでお客さん(私もお客さんだったのですが)に見られている感じで少々落ち着きませんでした。ステージに近い割に音が聞こえなかったり,ダイレクトな音が多かったり,金管と打楽器だけは腹の底から聞こえてきたりとバランスは悪かったのですが,貴重な体験ができました。とはいえ,やはり普通の座席にも行ってみたくなり(幸い空席があったので)後半は、密かに正面の2階の方に移動してみました。ステージは遠かったのですがバランス良く聞こえました。

まず、 弦楽器の配置が大変変わっていました。第1,第2Vnが左右に分かれるのは時々見ますが。その他の弦楽器の配置は見慣れないものでした。考えてみるといつもと左右反対という感じです(指揮者の正面から見ていた時にいつもどおりcbが右手にあるのが妙だと思ったのですが。)。

前半はトロンボーンを背後から聞くという悲惨なことになりましたがそれでもリンドバーグさんの素晴らしさは良く分かりました。アルトトロンボーンというのは,何かフランスのホルンのような感じの独特の音でした。高関さんの指揮を正面から見ていたのですが,あわせるのがとても巧いと思いました。カデンツァの後など「ああやって合わせるのか」というのがわかった気がしました。

2曲目は、アメリカ人の作曲家の作品で,そのせいか中間の緩い部分などガーシュインとかバーンスタインの曲のような印象を持ちました。普通のトロンボーン・ソロとチューバまで入るフル編成だとさすがにズシリと来ました。お客さんもオーケストラの人も大喜びでしたね。背後から聞いてもすごいと思いましたから正面の人はさぞかし圧倒されたことと思います。

さらに凄かったのがアンコールでした。リンドバーグさんはステージ脇からの出入りの時は走るように出てこられる,明るくて素朴な感じの方でしたが、1曲目のアンコールは、いきなり意味不明の言葉を叫び出して(日本語も入っていたような気もします)パフォーマンスを開始して驚きました。こちらからはどういう顔をしてあの演奏をしていたのかわからなかったのですが,大した演技力だと思いました。即興演奏かと思ったのですがちゃんとした曲(?)だったのですね。2曲目はお口直しという感じで本当に甘い曲でした。ビブラートが非常に美しかったです。

後半は新原典版による英雄交響曲の初演(?)といっても私には例の1楽章の終わりのトランペットのところがいつもと違うということしかわかりませんでした。完全にメロディが消えている感じでもなかったですね。テンポは快適で非常に気持ちの良い英雄でした。私もこの演奏は大変気に入りました。

高関さんの音楽はいつもリズムが弾んでいる感じでした。指揮の身振りと出てくる音楽があっていて非常に的確な指揮でした。いかにも信頼がおけるという印象の指揮者ですね。木管など明るくサラサラとしすぎている気もしましたが、新鮮な音楽を作ろうという意図には合っていたと思います。やや小さめの編成という特徴が生きていて、透明感のある響きでした。ピタリと音が揃っていたので,時々入る強いアクセントも効果的でした。ホルンも破綻なく吹いていましたが,4楽章の朗々とホルンが旋律を演奏するところはやはり普通の版の方がいいかな,と私は思いました(これも版の問題だったのですね。)。指揮台の上の楽譜を閉じてから演奏を始めたのも印象的でした。いずれにしても高関さんのベートーヴェンをまた聴いてみたいなと思いました。

コンサートの合間にザ・シンフォニー・ホールでこれから行われるコンサートのビラをあれこれ見ていたのですが,これから年末にかけて英雄と第9が何回も演奏されるようですね。第9は,年中行事なのでわかるのですが,英雄の方もこんなに何回も演奏してお客さんは入るのかな,と思ったりしました。やはり,この辺が大都市たる由縁なのでしょうか?

たまたま行った2000円のコンサートで,いつもと違う位置から鑑賞でき,最高のトロンボーンと変わったパフォーマンスを楽しみ,非常に気合の入った英雄に出会うことができ,大変得をした気分です。