オーケストラ・アンサンブル金沢第69回定期公演
97/11/23 金沢市観光会館

1)フォーレ(ラボー編曲)/ドリー組曲,op.56
2)シュトラウス,R./オーボエ協奏曲,ニ長調*
3)サン=サーンス/交響曲第2番イ短調
(アンコール曲)
4)ビゼー/アルルの女第2組曲〜メヌエット
●演奏
インゴ・ゴリツキ(Ob*2)/ジャン・フルネ/OEns金沢

今回報告するコンサートはOEns金沢の定期公演です。指揮はジャン・フルネさん,ソロ・オーボエはインゴ・ゴリツキさんということで渋く,味わい深いコンサートになりました。プログラミングも渋かったせいか(連休の真ん中ということもあり)お客の入りは悪かったです。

最初の曲はフォーレのピアノ曲をオーケストラ用に編曲したものです。フルネさんは,高齢ということもあってかなりゆっくりした足取りで指揮台まで来られました。大げさな表情は全然見せませんでしたが,冷たい雰囲気でもなく,神父のような印象を受けました。出てきた音もそのとおりで,落ち着いて,悟ったような感じの演奏でした。OEKのホルンには外国人の客演の奏者が1人加わっているのですが,その人の吹く高音の弱音がいつもながら美しかったです。さすがに終曲のスペイン舞曲だけは華やさが加わりましたが,それでも浮ついた感じはありませんでした。

2曲目は,団員の数が減ってモーツァルトのコンチェルトでもやるような感じになりました(イングリッシュ・ホルンが入っているのが独特ですが。)。ゴリツキという人については詳しく知りませんが,第1印象は,地味だが実力はあるという雰囲気でした(名前からしてそういう感じです。)。

曲が静かに始まると,長い長いオーボエ・ソロが始まりました。ゴリツキさんはものすごく赤い顔で演奏していました。聴いている方は爽やかに聴ける部分ですが,演奏する側からすれば非常に緊張するフレーズなのかな,と思いました。実は,この曲はハインツ・ホリガーのCDで予習したのですが,それに比べると随分ゴツゴツして素朴な印象を受けました。どちらが良いとはいえないのですが,こういう気合の入った演奏はCDでは味わえないものです。

R.シュトラウスは,80歳過ぎにこの曲を作曲したのですが,これは現在のフルネさんの年齢とほぼ同じです。そういったことを考えると遅めのテンポで演奏されたこの日の演奏はなかなか感慨深いものがありました。3楽章が管楽器のユニゾンで終わるとジーンと来るものがありました。いずれにしても,この曲は聴くほどに味わいが増す良い曲ですね(話はそれますが,以前話題になっていたラデク・バボラクさんの演奏するR.シュトラウスのホルン協奏曲の演奏が最近にFMで放送されていましたね。すごい演奏だったと思います。)。

休憩後は,サン=サーンスの交響曲第2番1曲ということで時間的には短い演奏会でした。この曲がメインの曲というのは少々軽いかなという気もしたのですが,聴いてみると,充足感がありました。サン=サーンスといえばオルガン付きの交響曲だけが有名ですが,この曲にも捨て難いものがあります。確かに恥ずかしくなるほど明快で,短調部分でも本当に深刻な感じはしないのですが,そこがサン=サーンスらしさだと思います。例えば,ビゼーの交響曲とかと組み合わせたCDがもっと登場しても良いと思いました。

そういうやや軽めの交響曲なのですが,フルネさんの指揮だとやはり浮ついた感じにはなりませんでした。フィナーレは軽やかな感じの曲なのですが,金管楽器をかなり強奏させていて,軽いだけではないことを強調しているようでした。

アンコールにはビゼーのアルルの女からフルート・ソロで有名なメヌエットが演奏されました。意外にこの曲を生で聴くことはないのですが,聴いてみるとフルート・ソロだけの曲ではないことがわかりました。ボレロのように,だんだんと楽器が加わり,全奏になり,最後にまたフルートだけになる,という構造だというのがよくわかりました。お客さんの拍手はさらに続いたのですが,高齢のフルネさんを何度も呼び出すのも悪いような気がしました。

このコンサートは,地味だがしっかりと聴かせる,というフルネさんらしさを十分味わえるコンサートだったと思います。ゴリツキさんもフルネさん同様の地味な感じの方で良い組み合わせでした。オーケストラの方もしっかりとそれに応えていたと思います。フルネさんのような指揮者になると,オーケストラの方も指揮者を盛り立ててやろう思わない方が不思議だと思います(ちなみに,今回はゲスト・コンサートマスターとしてリチャード・ディーキンというイギリス人が参加していました。)。

PS.以前,ここで報告した黛さんの遺作が初演された演奏会(の一部)が来週NHK教育TVで放送されるようです。N響アワーの時間です。お客さんがいっぱい入った良い演奏会だったので,関心のある方はご覧下さい。これからもN響以外の日本のオーケストラの演奏会が放映される機会が増えれば良いのに,と思っています。