オーケストラ・アンサンブル金沢特別公演:キリンクラシック
ニューイヤーコンサート

98/01/09金沢市観光会館

1)ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」
2)シュトラウス,J./ワルツ「春の声」,op.410
3)シュトラウス,J./ワルツ「酒・女・歌」op.333
4)シュトラウス,J./ポルカ「インドの舞姫」op.351
5)シュトラウス,J./ポルカ「閃光」,op.271
6)シュトラウス,J./ワルツ「ウィーンの森の物語」op.325
7)シュトラウス,ヨーゼフ/ポルカ「雷鳴と稲妻」op.324
8)シュトラウス,J./美しく青きドナウ
(アンコール曲)
9)シュトラウス,J.I/ラデツキー行進曲
●演奏
マイケル・ダウス(Vn)/OEns金沢

1998年最初に行った演奏会は恒例のOEKのニューイヤー・コンサートでした。ここ数年は,アーティスティック・ディレクターのマイケル・ダウスさんが弾き振りをするシュトラウスのワルツ・ポルカを中心としたプログラムのニューイヤー・コンサートが続いています。今年もそのパターンです。ヴァイオリンを弾きながら指揮をするシュトラウスのスタイルのニューイヤー・コンサートというのは意外に珍しいと思うので,来年以降も続くのではないかと思っています。その人気を反映してか会場も完全に満員でした。

前半はヴィヴァルディの四季の全曲でした。四季の全曲をオーケストラの演奏会で聴くのは意外に珍しいことです。とはいえ,全部で15人ほどの演奏で(ヴァイオリン,ヴィオラは全員立っていました。)室内楽の演奏会のようでした。

ソロは時々聴きなれない装飾音をつけたりしていたのですが,合奏全体になるとさらりと速めのテンポで演奏されたせいか常識的な感じがしました。変わったアーティキュレーションで演奏しているような部分もあったのですが,トゥッティの音に迫力がなく(会場が広すぎるせいもあるのですが),対比の面白さがあまりなかったと思いました。また,指揮者がいないせいか,出だしの部分ばかりに力が入っているようにも聞えました。

ソロが休みの秋の2楽章の静けさや,木目細かいダウスさんの音色などが印象に残ったのですが,広いコンサート・ホールでやるのなら,もう少しヴィルトーゾ風のソロの人の演奏で聴きたい気もしました。冬の最後はピタリと合った猛スピードで格好良く決めていました。

後半は,トロンボーン3本,ホルン4本をはじめ管が加わりシュトラウスの曲の華やかさもあって,一気に色彩的になりました。ただし,管は半分以上エキストラでした(管は最近メンバーが何人か退団して,定員が埋まっていないようです。)。

最初の春の声は,たっぷりとしたテンポで,華やいだ雰囲気にぴったりでした。前半退屈していた人も(私の隣の席の人はずっと寝ていました)後半はずっと楽しんでいたようです。

後半の曲(特にワルツ)はすべてテンポが妥当だと思いました。ヴァイオリンを弾くという動作に合わせての演奏だけに,ワルツというのは運動なのだ,ということを強く感じました。ダウスさんが揺れるとそれにあわせて自然にテンポが決まるという印象でした。演奏という行為を自然に行えば,そういうテンポにならざるを得ないというような妥当なテンポでした。テンポの揺れる部分などは皆があわせようとする様子が特に面白く思いました(微妙にずれるのも味になっていました。)。

弦が相対的に少ないので,管と打によるはっきりとしたアクセントがビシっと決まるのも気持ち良かったです。ただ,「美しく青きドナウ」については厚い弦の方が好みです。

シュトラウスのワルツは「ウィーンの森の物語」,「美しく青きドナウ」とも序奏の辺りにソリスティックな部分があるのですが,いずれもホルンが非常に危なっかしかったです。やはり,メンバーが固定していないせいかもしれません。ソロでは,主席チェロのカンタさんの音色がきれいでした。「ウィーンの森」はもちろんチターなしです。かわりにソロ・ヴァイオリンが演奏したのですが,これもなかなか良いと思いました。「ドナウ」は最後の方にカットがあり,いきなり終わってしまいました。昨年もそうだったので,何か意図があるのかもしれませんが,いつも聴きなれている方が余韻があって良いと思います。

「雷鳴と電光」では,ダウスさんのパフォーマンスが入りました。最初の方の打楽器総出の雷鳴が終わった後,金管が華やかに下降してくる部分で「うかれヴァイオリン(?)」という感じで踊りだしました。これは大いにうけていました。手の空いていたティンパニのオケーリーさんが拍手を促すのでこの部分では会場から手拍子が入りました。やはり,こういう意外性のあるパフォーマンスは外国人は得意です。

最後はお決まりのラデツキー行進曲だったのですが,やはり手の空いていたティンパニ奏者の手拍子に併せて会場から手拍子が入りました。今日のコンサートの場合,指揮者がヴァイオリンを弾いていて手が空いていなかったのでお客の拍手をコントロールしていたのはお客からいちばん見やすい位置にいてしかも手の空いているティンパニ奏者でした。歩いて行進できるくらいの非常にのんびりしたテンポでした。私はこれくらいの方が好きです。(別のところに書いた話題ですが)例の序奏部の後の休符では,やはり大太鼓でドンと入れていました。実演だとこの方が喜ばれるのでしょう。なお再現部では大太鼓のかわりにクラッカーをパンと入れていましたが,こちらは不発という感じで「ご愛敬」という感じになっていまいた。

同様のコンサートは,1月10日〜15日にかけて各地で行われます。富山県の小杉町,福井県の武生市,山口県の徳山市,大阪のいずみホール,静岡県清水市の順に回ります。一部のコンサートではヴィヴァルディの代わりにメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲になります。