オーケストラ・アンサンブル金沢第71回定期公演
98/02/24金沢市観光会館

1)ラヴェル/組曲「クープランの墓」
2)ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
3)ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
4)ドビュッシー/バレエ音楽「おもちゃ箱」
(アンコール)
5)ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ〜パゴダの女帝レドロネット
●演奏
ジャン=ピエール・ヴァレーズ/OEns金沢

今回報告する演奏会はオーケストラ・アンサンブル金沢のプリンシパル・ゲスト・コンダクターのジャン=ピエール・ヴァレーズ氏の指揮(指揮だけでヴァイオリンは奏きませんでした。)によるラヴェル,ドビュッシーのプログラムです。金沢の天候が悪い2月のこの時期の演奏会は毎年客の入りが悪いのですが,今年は悪い天候でもなかったのに客の入りは良くありませんでした。ソリストなしの地味なプログラムだったので仕方がなかったかもしれません。

今回も前回の定期演奏会の時と同様にプレ・トークがありました。今回はヴァレーズ氏がフランス語で曲目を解説するのをアメリカ人の団員が日本語で解説するという形になったので,やけに時間がかかりました。その割に内容がよく伝わらず,少々残念でした。プレ・トークは今後も継続的にやるようなのですが,今後は日本人による解説にしてほしいと思いました。

プログラムは前半はラヴェル,後半はドビュッシーということで,曲のトーンが統一されていました。1枚のCDを聴いているような大変良い選曲だと思いました。悪く言えば「どれも柔らかい弱音が中心で同じように聞こえる」ということなのですが,OEKが昨年録音した武満さんの作品集でも聴いているような演奏会全体の音色の統一感は見事なものでした。

前半のラヴェルはいずれも何度か聴いたことのある曲でした。いずれも管楽器が活躍するのですが,破綻なく演奏されていて安心しました。ソロがどんどん前に出てくる派手な演奏ではありませんでしたが,音のバランスが良く,気持ち良く聴くことができました。テンポはいずれも遅めでしたが,響きが薄いので,もたれることは全くありませんでした。眠くなる寸前の気持ち良さというところです(寝ていた人もいましたが)。

前半3曲の中では,特にゆっくりとしたテンポで演奏された「亡き王女のためのパヴァーヌ」が印象に残りました。この曲は最初のホルンだけが聴きどころと思っていたのですが,順番にソロが移っていって最後に皆で演奏するというのは,ボレロに似た作りだとも思いました。

「クープランの墓」はソリスティックな面で,もう少し鮮やかに演奏された方が良かったと思いました。「マ・メール・ロワ」の方は,チェレスタ,ハープ,各種鳴り物が加わりとても鮮やかでした。薄く明るい響きがここでは相応しく,聴き映えがしました。

後半のドビュッシーの「おもちゃ箱」という曲は初めて聴く曲でした。子供向けのバレエ音楽ということで,聴きやすい曲でした。曲の構成としては「おもちゃのチャチャチャ」同様,夜におもちゃが箱を飛び出して,おもちゃの兵隊などが騒ぎを起こすといった曲です。最後は,冒頭と同じような雰囲気に戻ったのできっとおもちゃ箱に戻ったのでしょう。

ここでも,OEKの薄い響きがおもちゃっぽいチープさには相応しかったと思いました。冒頭部をはじめピアノ,チェレスタなどががポロン,ポロンと入るのも透明な感じで印象的でした。後半にかなり長いイングリッシュ・ホルンのソロがあるのですが,これはまさに日本民謡風でした。このソロは,エキストラの方が吹いていましたが,大変見事でした。

ヴァレーズ氏の指揮は,緊張感があるようないような何ともいえない雰囲気を出していました。無駄な力が入っていなくて,弱音が神経質な感じになり過ぎていませんでした。ソロの楽器を支える,なにげない弦の柔らかい響きにも味がありました。

今回の演奏会は,かなり地味な内容で,退屈した人もいたかもしれませんが,私は各楽器の響きの面白さを十分楽しむことができ,満足できました(もう一度,同じ曲目を録音の良いCDででも聴いてみたい気にもなりましたが)。