渡辺玲子ミニライヴ,トーク&サイン会
98/6/28金沢市立泉野図書館オアシスホール

プロコフィエフ/無伴奏ウ゛ァイオリン・ソナタ〜第1楽章
バッハ,J.S./無伴奏ウ゛ァイオリン・パルティータ〜プレリュード,ガウ゛ォット
パガニーニ/「ネル・コル・ピウ」による主題と変奏曲(一部)
●演奏
渡辺玲子(Vn)

今回報告するのは演奏会ではないのですが,一応生で演奏を聴いてきたので書くことにします。報告するのはヴァイオリニストの渡辺玲子さんの新譜CD「マイ・フェイヴァリッツ」のPRを兼ねたライブ&トーク&サイン会で,地元のFM局とCDショップが金沢市立図書館の小ホールを借りて行った入場無料のイベントです。実は昨年も同様の企画があり,その時は曽根麻矢子さんのCDにサインをもらってきました。というわけで,このところ国内盤CDを定価で買っているのは,サイン入りCDばかりです。不況の中,CDを売るには「実演販売」が,いちばんと思うこのごろです。

ピアノ伴奏者がいなかったのでCDのプログラムとは違い,無伴奏の曲ばかりでした。このホールはもともと演劇を中心とした多目的小ホールなので,あまり残響はなかったのですが,すぐそばで聴いただけあって,非常にクリアな音を聴くことができました。

そういう場所で無伴奏の曲ばかりを聴いたせいか,渡辺さんの演奏には,「集中力とキレで勝負」という印象を持ちました。弾き崩しがなく,真剣で,ストレートで,張り詰めた強さが感じられ,聴衆を強くひきつける力がありました。これはCDの演奏全般にもいえることでした。いずれにしても,演奏からプライドのようなものが感じられる正統的で素晴らしいヴァイオリニストだと再認識しました。

最初のプロコフィエフは,以前別の人で聞いた時はぎこちなくて冴えない印象を持ったのですが,渡辺さんの演奏は,技巧のキレが良く格好よくスマートに聞こえました。プロコフィエフのクールさに実に良くあっていました。

次のバッハは非常に速いテンポで一気に聞かせてくれました。「バッハ=古い人」というイメージとは正反対の演奏でした。バッハの曲には厳格な感じのものが多く,私はあまり親しみを感じてこなかったのですが,こういう風にストレートに聞かせてくれると楽しめるなと思いました。もっとも比較的なじみのある曲だったせいもあるかもしれません。イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタで引用している楽章です。比較的最近,イザイの方も聴く機会があったのですが,かえってオリジナルの方が新鮮に聞えたりします。

トークの後にアンコール的に演奏されたパガニーニは曲の一部だけの演奏でした。カプリースと似た雰囲気のある技巧を聴かせる曲でした。全曲をひくと小曲というよりは10分ほどかかるかなりの大曲(中曲という感じ)です。技巧はもちろん素晴らしいのですが
前面に出るのは「音楽」で,浮ついた感じはありませんでした。

曲の間にかなり長いトークがあったのですが(FMのDJが聞き手でした),こちらもなかなか楽しめました。演奏からすると,話しかけにくいような方かと思ったのですが,それほど神経質な感じの方ではなく,気楽にトークを楽しむことができました。
内容は次のような感じでした。

・楽器の話:ストラディヴァリウスを借用中。
・1歳半の時にヴァイオリンに出会い,3歳からレッスンを始めた。
・絶対音感はある。が,オーケストラと共演をする時は都合が悪い時もある。絶対音感が絶対ではない。絶対リズムとかいうのもあっても良いのでは。
・尊敬する指揮者はショルティ。共演して印象に残った指揮者は,ヤンソンス。

いただいたサインは,やはり細くてキレのよいスタイリッシュな感じのものでした。「マイ・フェイヴァリッツ」のジャケットにピタリと金文字で収まり,初めから印刷されていたような感じになりました。筆跡は結構人柄を表すと,感じました。