ジョイントコンサート:オーケストラ・アンサンブル金沢,石川県ジュニア・オーケストラ,オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団
98/08/26 金沢市観光会館

1)アフリカ民謡/ホノノ
2)アメリカ黒人霊歌/ノーバディー・ノウズ・ザ・トラブル
3)イギリス民謡(ヴォーン・ウィリアムズ編曲)/グリーンスリーヴス
4)スペイン・アンダルシア地方の民謡/セヴィリア・ボレロ
5)スウェーデン・ダーラナ地方の民謡/禁じられた詩編
6)クロアチア民謡/緑の木陰に
7)朝鮮民謡(間宮芳生編曲)/カン・ガン・スゥォ・レ
8)日本古様(武満徹編曲)/さくら
9)J.シュトラウス2世/アンネン・ポルカ
10)アンダーソン/シンコペーテッド・クロック
11)アンダーソン/トランペット吹きの子守歌*
12)ケテルビー/ペルシアの市場にて
(オーケストラ・アンサンブル金沢作曲登竜門オーディション入賞
作品初演) 13)清水目千加子/幻想天女(初演)
14)テオドール・プラッツ/ラプソディエッタ(初演)
15)堀内貴晃/小編成管弦楽のためのカプリッチョ−あばれ祭りに寄
せて(初演)
16)ベートーヴェン/合唱幻想曲*
●演奏
1-8)大谷研二/OEns金沢Cho
9-12)榊原栄/石川県ジュニアO,OEns金沢/藤井幹人(Tp)*
13-15)岩城宏之/OEns金沢,OEns金沢Cho*/松井晃子(Pf)

今回報告するのはオーケストラ・アンサンブル関連の地元のアマチュア音楽団体とOEKとのジョイント・コンサートです。上記のとおり種々雑多でかなり長いコンサートになったのですが,OEKを中心として地元のアマチュアの活動が活発になっていることがわかり,予想外に感激しました。

このコンサートは3つのステージに分かれていました。最初は,OEKと共演するために結成されたOEK合唱団がOEKなしで演奏した世界の民謡集でした。ビラを最初に見たときは良く分からないプログラムだと思ったのですが,演奏が始まると大変楽しめました。まず,アフリカ民謡に合わせ,踊り,歌いながら原色系の私服を来た合唱団員と指揮者が入場しました。指揮者の大谷さんの解説が大変面白く,それぞれの曲を面白く聞けました。民謡集とはいえ,かなり凝ったプログラミングでした。東京混声合唱団のためにアレンジされた朝鮮民謡と「さくら」ももちろん良かったのですが,フルートのオブリガート付きのスウェーデン民謡の「禁じられた詩編」という曲が非常に美しかったです。団員自身が振り付けをしたり,大谷さんが太鼓を叩いたりとサービスたっぷりの楽しめるステージでした。ちなみに指揮者の大谷さんは曲の始まるまえに音合わせのためにハミングをしていましたが,これが絶対音感か,と初めてありがたみ?を実感しました。

第2ステージは,地元の小中学生からなる石川県ジュニア・オーケストラとOEKとの共演でした。正直なところ,聞く前は,技術面で不安があるのでは...と心配していたのですが,予想以上に上手でした(かなり,指導の先生方が応援していましたが)。何よりも映画「オーケストラの少女」のような雰囲気がステージが伝わり,胸が熱くなりました。プロのオーケストラと小中学生が共演する機会などめったにないことなので,この子供たちにとっては特別な夜になったと思います。この中の一人でもがOEKに入れば「よい話」になると思ったりしました。

コンサートマスターは中学3年生がつとめていました。なかなか初々しかったです。OEKの団員も暖かく見守っている感じがあり,こういう演奏会も良いものだと思いました。最後に演奏された「ペルシャの市場にて」は実は生で聞くのは初めてでしたが,急遽,OEK合唱団も動員され,合唱入りの豪華な演奏になりました(私でも歌えるメロディでしたが)。指揮者の榊原さんも明るいキャラクターの方で,こういう子供を指導するにはうってつけだと思いました。

第3ステージの前半は,オーケストラ・アンサンブル金沢作曲登竜門オーディションの入賞作品の初演でした。このオーディションは石川県ゆかりの人によるOEKのアンコール・ピースを募集する企画で,1位には50万円(岩城さんによるとかなり割の良い金額だそうです)が贈呈されました。3人の入賞者のうち,1人は前述のOEK合唱団員,もう一人はOEKのコントラバス奏者のテオドール・プラッツさんということで,結果的に内輪の人が多くなってしまったようです。1位になった堀内さんの作品は,岩城さんによると「ストラヴィンスキーより難しい非常な難曲」ということで,選んでは見たものの,アンコール・ピースとしては使いにくいようです。入賞作の解説者として来ていたコンポーザー・イン・レジデンスの藤家さんが言っていたように複雑なわりに少々退屈なところもありましたが,変拍子がなかなか面白い作品だと思いました。ただ,やはり演奏が難しすぎるせいか,実際にはプラッツさんの作品の方をアンコールとして使うと岩城さんは言っていました。

第3ステージの後半は,締めということでOEKとOEK合唱団とOEK合唱団のピアニストの松井さんという方の共演によるベートーヴェンの合唱幻想曲でした。この曲は,第9のパロディのような(第9の方が後に出来たのですが)旋律が出てくる曲なのですが,やはり第9に比べるとかなり劣ると思いました。ピアノのパートは実はかなり重要で,最初の方などは延々とソロが続きました。松井さんという方は,派手な感じではありませんでしたが,とてもきちんと弾いており,このコンサートのソリストとしては相応しいと思いました。合唱団の伴奏のピアニストにスポット・ライトが当たるというのも感動的なことかもしれません。声楽のソリストの方も合唱団の方が自前で担当していました。ソロではなく2人ずつで歌っていたようです。最後の方は,がっしりとしたドイツ風の雰囲気が伝わり,長いプログラムを締めるだけの充実感がありました。

というわけで,OEKを中心に地元のアマチュアも力をつけているのがわかり嬉しくなった演奏会でした。年に一度はこういう「晴れ舞台」があるのも良いかもしれません。