朝比奈隆のブルックナー交響曲第8番
98/09/13大阪フェティバルホール

ブルックナー/交響曲第8番ハ短調(ハース版)
●演奏
朝比奈隆/大阪PO

今回は,大阪まで日帰り旅行をして朝比奈さんのブルックナーを聞いてきました。朝日新聞創刊120周年記念の企画の一つということで,数ヶ月前朝日新聞に掲載された広告を見て,衝動的に行きたくなり,現金書留で申し込んだものです。パンフレットを読むと,席は完全に売り切れになったようで早く申し込んで良かったと思いました。ただ,衝動的とはいっても「一度でいいから,ブルックナーを朝比奈さんで...」「お元気なうちに...」という気持ちが意識の中にあったことは確かで,いわば「念願の演奏会」でした。

チケット代は5000円という良心的な価格で,金沢から大阪までの往復の特急代(サンダーバードというふざけた名前の列車です)と合わせても2万円以下で済みました。

会場のフェスティバルホールに行くのは2回目なのですが,なかなか味のあるホールですね。赤絨毯が敷いてあって,風格のある大旅館という感じです。朝比奈さんと大阪フィルのイメージと合っているのではないかと思いました。緩い傾斜のついた横長のホールなので,どこからもステージが見やすいような気がしました。残響は豊かではないと思いますが,楽器の音がクリアに聞こえて悪くないと思いました。

朝比奈さんと大阪フィルの組み合わせ生で聴くのは初めての経験でした。枯れた演奏または荒っぽい演奏かなと予想していたのですが,正真正銘の現役の音楽でした。気力が充実していて,疲れを感じさせませんでした。洗練されたという感じでもないのですが,荒っぽいという印象もなく,非常に模範的な演奏だったと思いました。テンポは遅めだと思うのですが,全然違和感はなく,納得のいくテンポ設定だと感じました。

充実していた,と感じたのは大阪フィルの実力のお陰だと思いました。CD評などを見ると,大阪フィルは一流ではないような書き方をされることがありますが,少なくともブルックナーの演奏については一流なのではないかと思いました。特に良いと思ったのは迫力たっぷりのティンパニでした。演奏を引き締めていました。格好良かったです。鋭いけれどもうるさくない金管も見事でした。プロのオーケストラであれだけホルンが並ぶのを見たのも,初めてで,見るだけで嬉しくなりました(4楽章の第2主題の提示部?でホルンとワーグナーチューバが主旋律を演奏するところで何か違和感を感じたのですがミスだったのでしょうか?曲をよく知らないのでよくわかりませんでしたが)。音の出だしとかがピッタリ揃わないところもあったような気がしましたが,これは朝比奈さんらしさでしょうか。

各楽章については,曲をよく知らないので,詳しく書けませんが,1〜2楽章はドイツ的な交響曲の伝統の延長。3〜4楽章は,それを越えた音楽という印象を持ちました。輝かしい終結部を持つ4楽章がいちばん印象に残りましたが,念を押すように終わる1楽章の終結部とか柔らかな響きが気持ち良い3楽章とか,それぞれに楽しめました。

ただ,例のブルックナー休止というのでブツブツ曲が切れて,親しみにくいという印象は今でも残っています。朝比奈さんのブルックナーを聴けば,ブルックナーが大好きになるかもしれない,と期待していたのですが,そこまでは至りませんでした。

弱音の繊細さを楽しむというよりは,時々出てくる豪快なクライマックスの迫力を待つような聴き方になってしまうのですが,これは朝比奈さんの特色のような気もします。

カーテンコール(実はこれを見るのも目的だったのですが)も盛大なものでした。あんなに大勢の人が立ち上がって拍手するのを見たのは初めてでした。ただ,時間的には意外に短いと思いました。東京だともっと長いのでしょうか?

9月15日は敬老の日ですが,スタンディングオベーションにじっと応える朝比奈さんの姿を見て「日本一幸せなおじいちゃんだな」と感じました。

PS.ロビーで第320回定期演奏会で演奏されたブルックナーの交響曲第5番のライブCD(2枚組3200円)を売っていたので,記念に買ってきました。FCLAにもメッセージが残っているようなので,後で読んでみようと思っています。