オータム・チェンバー・コンサート
98/09/16金沢市芸術ホール

ハイドン/弦楽四重奏曲第76番ニ短調,op.76-2「五度」
ハイドン/弦楽四重奏曲第78番変ロ長調,op.76-4「日の出」
ハイドン/弦楽四重奏曲第77番ハ長調,op.76-3「皇帝」
(アンコール)
ハイドン/弦楽四重奏曲第78番変ロ長調,op.76-4「日の出」〜第2楽章
●演奏
サンライズQ(マイケル・ダウス,坂本久仁雄(Vn),石黒靖典(Vla),大澤明(Vc)

今回紹介する演奏会は,オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバーによるハイドンの弦楽四重奏曲の演奏会です。OEKのメンバーによる室内楽のプログラムではオーケストラの中のアンサンブルというメリットを生かして,五重奏,六重奏といったやや大きめの編成の曲や管楽器の入った曲を演奏することが多いのですが,今回はオーソドックスに弦楽四重奏曲のみのプログラムでした。この弦楽四重奏団には,ザ・サンライズ・クワルテットという名前がついており,この日のプログラムと同じ内容のCDがつい最近発売されました(VICTORPRCD-5282)。この演奏会は,そのCDのお披露目ということになります(ただし,この日はサンライズとは裏腹のひどいどしゃ降りになり,参りました)。

ザ・サンライズ・クワルテットの第1ヴァイオリンは,OEKのアーティスティック・ディレクターのマイケル・ダウスさんです。貫禄のある外見からしてもダウスさんが実質リーダーです。その他のメンバーもすべて男性です。劇団四季の俳優のような顔立ちの方,いかにもチェロという感じの方などなかなか印象的な雰囲気を持っています。ネーミングの由来はよくわかりませんが,今回演奏された,ハイドンの「日の出」と関係あるのかもしれません(日の出カルテットとすると銭湯とかコメディアンとかみたくて,しまりませんね)。

ハイドンの弦楽四重奏曲の名曲3曲ということで,古典的な形式美をじっくり味わうことができました。3曲ともほとんど同じ形式なのですが,それぞれにニックネームがついていて,違った趣向を盛り込んでいるのはいかにもハイドンらしいと思いました。「皇帝」は何度か聞いたことがあるのですが,ロマン的な雰囲気のある「日の出」,暗い情感をたたえた「五度」もそれぞれ名曲だと思いました。特に,「日の出」の第2楽章は,素晴らしい楽章でした。各曲の第3楽章のメヌエットはかなり速いテンポで現代的な印象を与えていましたが,少々強引な感じでテンポを動かしていたのが気になりました。

演奏は,CD録音しているだけあって大変こなれたものでした。ハイドンの曲の特徴かもしれませんが,全体に,第1ヴァイオリンだけが目立つような演奏でした。ダウスさんの音色は非常に艶やかで,他の3人はサポートにまわっているという感じでした。ダウスさんの演奏は,荒々しいというほどではありませんが,スピード感たっぷりで,バリバリと弾くような感じでした。”サンライズ”という名前にふさわしい演奏でしたが,その他の3人は”日の出”という感じで少々音楽性が違うような印象を持ちました。そのことは,例えば,「皇帝」の第2楽章などに現れていました。この楽章の変奏は,各楽器が順番にソロを取るのですが,ダウスさん以外のソロは少々さえないような気がしました。

アンコールは,CDにもアンコール的に収録されているセレナードしかないと思ったのですが,「日の出」の3楽章のメヌエットでした。徹底して,「日の出」に拘りたかったのだと思います。

演奏会の後,サイン会があったので,4人のサインを頂いてきました。さすがに小さいCDのジャケットに4人分のサインをするというのは苦しいものがありましたが,そのせいか,各方角に名前が飛び交うなかなかポップな感じのジャケットになってしまいました。