鮫島有美子とオペラコーラスの夕べ
98/10/20石川厚生年金会館

マスカーニ/歌劇「カバレリア・ルスティカーナ」間奏曲
マスカーニ/歌劇「カバレリア・ルスティカーナ」〜オレンジの花はかおり**
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」〜恋とはどんなものかしら*
トーマ/歌劇「ミニヨン」〜君よ知るや南の国*
ビゼー/歌劇「カルメン」第1幕への前奏曲
ビゼー/歌劇「カルメン」第4幕〜闘牛士の行進**
スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
スメタナ/歌劇「売られた花嫁」〜やっと一人になれた*
プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」〜私の愛しいお父さん*
ウ゛ェルディ/歌劇「ナブッコ」〜我が想いは黄金の翼にのって**
レハール/喜歌劇「メリー・ウィドゥ」〜ウ゛ィーリアの歌*,**
ウ゛ェルディ/歌劇「アイーダ」〜凱旋の場の合唱
(アンコール)
レハール/喜歌劇「メリー・ウィドゥ」〜ワルツ*,**
ウ゛ェルディ/歌劇「アイーダ」〜凱旋の場の合唱**
●演奏
鮫島有美子(S)*/ジャン=ルイ・フォレスティエ/Oens金沢/石川オペラ・シンガーズ**

オーケストラ・アンサンブル金沢は今年で設立10周年になります。その特別企画として,鮫島有美子さんを招いて,有名なオペラアリアと合唱曲によるコンサートが行われました。鮫島さんの知名度もあってほとんど席は埋まっていました。指揮者は,ジャン=ルイ・フォレスティエさんという若いフランス人でした。過去に何度か客演しているお馴染みの指揮者です。

今回は,石川厚生年金会館というホールで行われたのですが,このホールの音響の悪さは相当なもので,このホールに行くたびに音がよく聞えるポイントを探して動き回っています。とにかく音が響かず,雰囲気がなく,音が届かないホールです。今回も半分あきらめて前半は,後部の座席で聴いてみたのですが,やはり満足できず後半は音をダイレクトに聴くしかないと思い,たまたま1個空いていた最前列のサイドで聴くことにしました。

さすがにこの席はよく聞えました。第1ヴァイオリンの音ばかり聞え,バランスは悪かったのですが,鮫島さんと指揮者の表情や身振りがよく見えとても楽しめました。これから,このホールに行く時は,この手で行くかなと考えています。

というわけで,前半と後半でかなり印象は違います。前半の曲は,ほとんど音が届かず,強い印象が残りませんでした。合唱は,県内のアマチュアの選抜メンバーなのですが,ホールの残響がほとんどないため,がさがさとしか聞えませんでした。オーケストラの編成も弦楽器がいつもより少なく,このホールでやるには物足りませんでした。中では,ビゼーのカルメンからの2曲が身振りが大きく楽しめました。実際,フォレスティエさんは大変手が長い指揮者で,指揮を観ているだけで楽しめます。派手目の曲を勢いよく聴かせるのが得意なようです。

後半は,まず「売られた花嫁」の序曲に感動しました。この曲の最初の方に弦楽器だけの速い動きが続く部分があるのですが,この部分が非常に正確に弾かれているのに感心しました。第1ヴァイオリンの直前で聴いていただけに迫力満点でした。

鮫島さんは,ビラの写真と全く同じで(当たり前ですが,あまりにもそのままでした)大変美人な方でした。鮫島さんは,ソプラノということですが,高音を派手に聴かせるというよりは,清潔感のある情感をきちんと聴かせるようなタイプだと思いました。歌われた曲もメゾソプラノで歌われるような曲がいくつかあり,すべての曲をしっとりと聴かせてくれました。音程が正確で,すべてが整っていました。それでいて堅い印象も残さない,ということで完成された歌手だと思いました。どちらかといえば,歌曲の方が得意なのでしょうが,間近で聞いた限りでは,オペラのアリアでも迫力不足ということはありませんでした。

コンサートの最後は,アイーダの凱旋行進曲だったのですが,初めてアイーダ・トランペットというのを見ました。バルブがないアルペン・ホルンのようなものを想像していたのですが,ちゃんとバルブはついていました。そのアイーダ・トランペット奏者が6人,舞台の両袖にゾロゾロと出てきたのですが,さすがにこれを最前列で聴くのはうるさかったです。派手好きのフォレスティエさんが気をよくしてアンコールに凱旋行進曲をもう一度演奏したのですが,これには参りました。

というわけで,アイーダのせいで,頭の中がトランペットの音で一杯になってしまったコンサートでした。こういうのはストレス解消にはいちばんかもしれません。