イル・ジャルディーノ・アルモニコ演奏会
98/11/23ハーモニー・ホールふくい

1)ロック/組曲「テンペスト」
2)ビーバー/戦争
3)バッハ,J.S./ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調,BWV.1050
4)ウ゛ィウ゛ァルディ/ウ゛ァイオリン協奏曲集「四季」
(アンコール曲)
5)不明
●演奏
イル・ジャルディーノ・アルモニコ/エンリコ・オノフリ(Vn3,4);ジョウ゛ァンニ・アントニーニ(フラウト・トラウ゛ェルソ)
オッタウ゛ィオ・ダントーネ(Cem)

今回は休日を利用して福井市にあるハーモニー・ホールふくいで行われたイル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏会に出かけてきました。アンサンブル金沢の方から案内のビラが来て,割引料金でチケットを買ったのですが,行って後悔のない演奏会でした。

金沢市から福井市までは国道8号線でつながっているので(高速料金をケチっただけなのですが)2時間強ひたすら国道を走ってハーモニーホールまでたどり着きました。8号線沿いの田んぼの中にいきなり,どこかのオペラハウスのような建物があったのですぐにわかりました。昼食を食べようと思って,併設されているイタリア・レストランに入ってみると,ジャルディーノのメンバーらしき人々とすれ違いました。やはり,イタリア人はパスタがないと力が出ないのかもしれません。

ハーモニーホールは,噂どおり大変立派な建物でした。床も壁も木,天井には豪華シャンデリアがあり非常に美しいホールでした。座席もゆったりしており,石川県や金沢市ののお役人にも見せてあげたいほどでした。もちろん音響にも雰囲気があり,まずは申し分のないホールだと思いました。ただ,私の座席は1階イの1というまさにイの一番の座席で(主催者側が送ってきたのですが)2時間ずっと右に首を曲げていたのでかなり首が痛くなりました。また,ヴァイオリンの背後にいる形になったので音がやや間接的に聞えることになりました。

ビラにはイル・ジャルディーノ・アルモニコ演奏会とだけ書いてあったので指揮者なしなのかと思ったのですが,バッハ以外はジョヴァンニ・アントニーニさんが指揮をしていました。名前を大きく出さないのには何か意図があるのかもしれません。

それと楽器の音程を非常に気にしていました。コンサート・マスターのオノフリさんが「音程の先生」という感じで,団員1人1人と向かい合ってチューニングをしていました。人数が室内楽なみに少ないから出来ることですが,独特の光景でした。これが彼らの音の透明感の秘密だと思います。

最初の曲はロック(Locke)という人の組曲でした。イルジャルディーノのロック(しかもテンペスト)ということで,ロック(Rock)のような演奏を期待したのですが,普通の?美しいバロック音楽でした。終曲にG線上のアリアを思わせるような深さがあり,良い曲だと思いました。

2曲目は,ビーバーの戦争というやはり標題音楽風の組曲でした。コンサート・マスターが1曲ごとに日本語で「タタカイノジュンビ」という感じで曲名を叫んでくれたので大変分かりやすかったです。こちらは起伏に富んだ曲で「およそクラシックに似つかわしくない(ビラの宣伝文句)」演奏だったと思います。特に3曲目ぐらいに演奏された「酔っ払い」とかいう曲は各楽器が全然違う調性で弾いていて,前衛的な感じもしました。激しいコルレーニョ奏法などもあったのですが,うるさく響かないのはホールのおかげだと思いました。

3曲目のバッハは比較的普通の演奏でした。ソロ3人の室内楽+合奏という形がはっきりわかるような演奏でした。2楽章では,ソロ3人以外は後の椅子に座ってじっと聴いていました。フラウト・トラヴェルソという楽器を初めて聴きましたが,かなり音量が小さいと思いました。ただ,非常に暖かみのある音で魅力的でした。全体の音量もチェンバロとフラウト・トラヴェルソに合わせてかなり押さえていたようです。きっちりと音が揃い,キビキビとした軽さのある演奏は,ドイツ風の演奏とは別の魅力があると思いました。

後半は,期待どおりのヴィヴァルディでした。少し前に買ってみた四季のCDの演奏と同じく,技のデパートという感じの非常に大胆で面白い演奏でした。即興的に弾いているようにも見えましたが,アンサンブルが揃うべきところは完璧に揃っており,考えた末の解釈と思いました。とはいえ,印象はやはり自由奔放な感じで,それだけ解釈がこなれているということだと思いました。テンポの緩急の差が急激で,音量の強弱のつけ方に意表をつくようなところがあるの特徴で,すべての楽章にわたって独特でした。特に印象に残ったのは...春:第1楽章:ソロ・ヴァイオリンと第1ヴァイオリンが出てくるところでテンポを急に落とすところ。指揮者が指揮を止めてテンポ感がなくなり,まさに小鳥が鳴くような感じになりました。第2楽章:ヴィオラによる犬の鳴き声がリアル。音程を悪くしてまでも非常に強い音を出していました。これを1人でやっていたとは驚きでした。第3楽章は...と書いていると切りがありませんので,あとはCDを聴いてみて下さい。買って損のないCDだと思います。

CDの演奏メンバーとはかなり違うようですが,解釈は同じなので指揮のアントニーニ氏の解釈なのでしょう。あと,ビラの写真にはリュートのような形をした楽器(テオルボ?)をひいている人が写っているのですがこの日の演奏では登場していませんでした。CDの方にはギターっぽい音が入っているように聞えるのですがこの辺はよくわかりません。また,CDの方が非楽音的な音が生々しく聞える感じです。私の席で聴いた感じでは,残響が豊かなせいかそれほど生々しくは聞えず,大胆さが薄められたように聞えました。

演奏の後,裏口付近で誰か出てこないか待っていたらソロ・ヴァイオリンのオノフリさんが出てきたのでCDにサインをもらってきました。この辺は「旅の恥は...」という感じになってしまいました。