オーケストラ・アンサンブル金沢第77回定期公演
98/11/26金沢市観光会館

1)グノー/小交響曲変ロ長調
2)ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調
3)ドヴォルザーク/弦楽のためのセレナードホ長調,op.22
(アンコール)
4)チャイコフスキー/弦楽セレナード〜ワルツ
●演奏
ジャン=ピエール・ヴァレーズ/Oens金沢/仲道郁代(Pf2)

今回報告する演奏会は、ジャン=ピエール・ヴァレーズ指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢の定期演奏会です。ヴァレーズさんは主席客演指揮者ということでおなじみの方ですが、今回のプログラムは室内オーケストラのプログラムにしてもかなりこじんまりしたものでした。

1曲目が木管+ホルン、3曲目が弦楽合奏のみということで、この2つの編成を合わせてやっと室内オケになります。2曲目がプログラム全体の中でいちばん華やかで編成も大きいのですが、それにしても20分ほどの作品ですので、正直なところ少々食い足りないようなプログラムでした。

1曲目はオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンが各2人+フルート1人というまさに室内楽の編成で,交響曲というよりはモーツァルトの管楽器のためのセレナードのような雰囲気でした。そういう面では3曲目のセレナードとバランスが取れていました。フルートが1人だったのですが、フルート以外はよく音が溶け合うので、フルートがうまくソロとして浮き上がると思いました。オーボエの方も第2オーボエはほとんど吹いていなくて、オーボエもソロのような感じもしました。初めて聴く曲でしたが、食前の付け出しのようなとても聴きやすい曲で気に入りました。インティメートな雰囲気で指揮者は必要ないほどでした。ただ、その割に全体の印象はやや散漫な気がしました。

2曲目は仲道郁代さんをソリストに迎えてのラヴェルのピアノ協奏曲ト長調でした。この曲は室内オーケストラで演奏するのに雰囲気がぴったりの曲なのでOEKでも数回聴いたことがあります。OEKがやるとピアノ付きのディヴェルティメントのような雰囲気になります。

冒頭部は,鞭の音とピアノの音がピタリと揃い,非常に緊張感があったのですが,全体としては1曲目と同様は少々散漫な印象を受けました。オーケストラを締めるような求心力はヴァレーズさんにはあまりないのですが、そのせいで華やかに出てくるソロがバラバラでチープに聞こえました。そういう、チープさがふさわしい曲でもあるのですが、沸き立つような楽しさをもっと味わってみたいと思いました。

ソロピアノはそれほど目立っていませんでしたが、常に余裕を持って美しく演奏されていました。第2楽章のシンプルな主題の優しさは仲道さんの(見た目を含めての)雰囲気によくあっていました。オーケストラの楽器のソロも悪くはなくて、特に第1楽章の最後の方のホルンの高音(おなじみの客演の奏者です)とハープの弱音が良い雰囲気を出していました。第2楽章のソウルフルなイングリッシュ・ホルンも聞かせてくれましたが、私はもっとさり気ない演奏の方が好みです。

3曲目は、ドヴォルサークの弦楽セレナードでした。この曲を聴くのも2度目です。OEKのコンサートマスターと主席チェロ奏者はそれぞれチェコとスロバキア出身なのでこの曲は「お国もの」とも言えなくもない曲です(実際、この2人はNAXOSレーベルによく登場していたカペラ・イストロポリターナという団体に所属していたらしく、この曲もレコーディングしています)。演奏は、やはり散漫な印象がありました。気持ち良く聞けたのですが、ヴァレーズさんの演奏には微妙なニュアンスとかしっとりとした雰囲気というのがなく、漫然と流れるような感じがありました。この曲の懐かしくなるうような雰囲気が好きなのですが、ヴァレーズさんの音楽性とはあまり合わなかったのかもしれません。アンコールには「やはり」という感じでチャイコフスキーの弦楽セレナードのワルツが演奏されたのですが、こちらの方もテンポが速く落ち着きのない演奏で、この日の演奏を象徴しているようでした。

というわけで、OEKならではのプログラムだったのですが、やや焦点のないプログラムと演奏のせいで食い足りない気持ちが残りました。