オーケストラ・アンサンブル金沢特別公演
キリンクラシック ニューイヤーコンサート

(99/01/10石川厚生年金会館)

1)ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
2)ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調,op.26
3)シュトラウス,J./祭典行進曲,op.452
4)シュトラウス,J./喜歌劇「こうもり」序曲
5)シュトラウス,J./ポルカ「休暇旅行で」,op.133
6)シュトラウス,J./ワルツ「メフィストの地獄の叫び」op.101
7)シュトラウス,J./喜歌劇「騎士パスマン」〜チャールダシュ
8)シュトラウス,J./ワルツ「皇帝円舞曲」
9)シュトラウス,J./ワルツ「美しく青きドナウ」
(アンコール曲)
10)シュトラウス,J.I/ラデツキー行進曲
●演奏 マイケル・ダウス(Vn)/Oens金沢

1999年最初に行った演奏会はオーケストラ・アンサンブル金沢のニューイヤー・コンサートでした。例年どおり,アーティスティック・ディレクターのマイケル・ダウスさんが弾き振りをするシュトラウスのワルツ・ポルカを中心としたプログラムです。定期会員に券が配布されていたので会場は満席でした。

前半後半とも,トロンボーン3本,ホルン4本,各種鳴り物が加わりいつもより華やかな印象でした。ただ,例によってホールの響きが悪く,室内オーケストラには酷でした。

前半は,ロッシーニの序曲で始まりました。指揮者無しなので焦点がない印象でした。ロッシーニの曲は短調で始まっても,クレッシェンドしていくうちに笑いが堪えられなくなって爆発してしまうような雰囲気があって好きなのですが,そういう楽しさはあまり感じられませんでした。全般に腰が重く,優雅な雰囲気もありませんでした。響きの悪いホールなので力が入り過ぎていたのかもしれません。

2曲目は,ダウスさんのソロによるブルッフでした。この曲を指揮者なしで演奏するのはかなり珍しいと思います。甘過ぎず,崩し過ぎないソロには好感が持てました。特に室内楽的な響きの2楽章が良かったです。両端楽章はもう少しスケールの大きい演奏が良いと思いました。特に第3楽章はもう少し冴えた演奏で聴きたいと思いました。オーケストラ
も響きに余裕がなく,悲鳴を上げているような音に聞えました。やはり,指揮者がいた方がこの曲の場合良い,と思いました。

前半は前の方で聞き過ぎたせいで,響きの美しさが感じられなかったのかと思い,後半はもう少し後の場所に移動してみました。そのせいか,後半はとても楽しめました。

後半は,アンコール曲をのぞくとすべて,ヨハン・シュトラウス2世の曲でした。毎年このコンビでやっているだけあって,聴かせ方がうまくなってきていると思います。特に良かったのは,2拍子系の曲のテンポでした。特に「休暇旅行で」は,のんびり目に演奏する事で伸びやかで楽しい雰囲気が非常によく出ていました。前半,やや力み気味に聞えた演奏も後半はきれいに聞えました。チャールダッシュでは,指揮者なしにも関わらずテンポの起伏を大きくつけて合奏の能力の高さを見せてくれました。

ワルツの中では,「メフィストの地獄の叫び」という曲が初めて聞く曲でした。序奏部分だけが深刻で,主部は楽しげな普通のワルツになるというのはよくあるパターンです。

最後の有名なワルツ2曲は,ダウスさんが真ん中に立って,指揮をしながらヴァオイリンを演奏するシュトラウス・スタイルでした。このスタイルだと演奏が終わった時のポーズが格好良く決まります。どちらの演奏も良かったと思いました。特に皇帝円舞曲には感動しました。曲の終わりの方で,ヴァイオリン,チェロ,ホルンが1本ずつで掛け合いをする,というような響きは聴いたことはありませんでした。名残惜しく,懐かしげな雰囲気がよく出ていて,「幸せだな」と感じました。ただ,「美しく青きドナウ」の方は昨年同様,終結部を省略して演奏していたので,少々物足りませんでした。

アンコールはお決まりのラデツキー行進曲でした。のんびりめのテンポの美しい演奏でした。クラッカーの音が入ったこと以外は,まじめにきちんと演奏していて,好感をお持ちました。曲の後,ダウスさんが拍手を止めて"Happy new year!"と小声で挨拶してお開きとなりました。優しくて紳士的な雰囲気のあるダウスさんの人柄の出たニューイヤーコンサートは完全に金沢の新春に定着したようです。

同様のコンサートは,大阪,清水市でも行われます。