オーケストラ・アンサンブル金沢第78回定期公演ゲネプロ
99/01/29石川厚生年金会館

1)モーツァルト/歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」序曲,K.588のリハーサル
2)ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調,op.55「英雄」のリハーサル
3)モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調,K.218のリハーサル
4)バッハ,J.S./G線上のアリアのリハーサル
●演奏
大友直人/OEns金沢/矢部達哉(Vn*3)

今回報告するのは趣向を換えてゲネプロの様子です。オーケストラ・アンサンブル金沢では今回の定期演奏会から演奏会直前のリハーサルを公開することになりました。リハーサルというものを一度見てみたいと思っていたので,話のタネのために仕事を休んで出かけてみました。大友直人さんの指揮,矢部達哉さんのヴァイオリンという人気のあるお二人が登場したのですが,平日の昼ということで,聴きに来ていたのは20人ほどでした。

リハーサルの順序はプログラムの順とは違っていました。編成の大きいものを先にやって,終わった人が先に帰るということなのでしょうか?リハーサルといってもゲネプロなのですべての曲を止めずに通して演奏していました。つまり演奏会をまるごともう一回聞くことになります。事務局の人が「ゲネプロだけ聴いて本番は来ない,ということはありませんように。」といっていた理由がわかりました。ただ,本番とは会場の雰囲気は全然違いますので「本番に行けば二度楽しめる」と私は思いました。
ゲネプロと本番でいちばん違うのは,
@オーケストラの服装が普段着だということ
Aホールの残響が長いということ
の2点です。@は,結構新鮮に見えました。Aについては,日頃残響のない石川厚生年金会館でも残響があることに気づき驚きました。このホールでこんな良い響きで聴けたのは初めてです。逆にいうと人が入るとかなり音が吸収されているということになります。どうせなら,お客が入った状態での残響を計算して設計してほしかったと思いますが...。

リハーサルの内容ですが,残念ながら,座る席が限定されていたのでステージで何を言っているのかはほとんどわかりませんでした(OEKにはかなり外国人がいるので英語まじりの日本語で,指示をしていました)。先に書いた通り,全曲を通して演奏した後,コンサートマスターや主席奏者たちと弾き方を確認するだけ,という感じでした。リハーサルといえば,トスカニーニのような指揮者が厳しく指導する...といったイメージを持ったりするのですが,現代の指揮者となるとそういうことはなく,オーケストラと一緒に音楽を作っていく,という雰囲気が伝わってきました。特に,OEKは40人ぐらいの編成なので丁度「先生+1クラス分の生徒」といった感じでした。ただ,穏やかな雰囲気というのは,大友さんの持ち味だからなのかもしれません。また,アンコールの曲まで丁寧にリハーサルをしていたのは,なかなか面白い光景でした(本番の時バラさないで下さいとのことでした。)。

プログラム自体はOEKの基本レパートリーのような曲ばかりだったので,すでに完璧に仕上がっている感じでした。曲の内容については別に報告しようと思いますが,全般に非常に流れの良い,仕上がりのきれいな演奏でした。英雄交響曲では,それにホルンやトランペットの強奏が時々加わり,強いアクセントになっていました。実は,英雄がメインのこのゲネプロの本番には行かず,ジュピターがメインの別会場での演奏会の方に行く予定なのですが,この英雄なら本番でもさぞかしうまく行ったことだろうと思いました。

というわけで,ゲネプロは予定どおり丁度2時間で終わりました。OEKは,岩城さんの提案で(だと思うのですが),次々と面白い企画をやってくれますが,こういう形の「情報公開」も面白いと思いましたす。今度は,いわゆる現代音楽や新曲がプログラムに入っている時のゲネプロを聴いてみたいと思いました。ゲネプロでは,本番よりも,指揮者のキャラクターがダイレクトに伝わって来るので,他の指揮者の時も行ってみて比較するのも面白いかもしれません。