第82回Museum concert:エリック・サティへの旅
99/03/21石川県立美術館

1)ケージ/イン・ア・ランドスケープ
2)サティ/オジーブ第1番,第4番
3)サティ/サラバンド第3番
4)サティ/グノシェンヌ第1番
5)サティ/ヴェクサシオンから
6)サティ/自動記述から
7)サティ/スポーツと喜遊曲から
8)サティ/ジムノペディ第1番
●演奏
島田璃里(Pf)

今回報告するのは,石川県立美術館で行われたサティ専門家の島田璃里さんによる無料の演奏会(といえるかどうか?)です。曲の間には島田さんのお話が入り,演奏にあわせてビデオやスライドによる映像が入るという独特の雰囲気の漂う演奏会でした。映像が入るというのは音楽をわざわざBGM的にしようという意図だと思います。その意味では,視覚的な芸術を売り物とする美術館にはふさわしい企画かもしれません。サティの曲をまとめて生で聴くのは初めてのことだったのですが,温泉での宴会の翌日ということで,半分居眠りしながら聴くことになってしまいました。ただ,サティに関してはこういう聴き方(?)も許されるようです。

まず,会場に入ると「840回同じモチーフが繰返されなければならない」というヴェクサシオンがBGMで流れていました。聞き流す分にはBGMのように響きますが,じっと聴いていると気持ちの悪くなるような曲かもしれません。

会場が暗くなると,島田さんがスッとピアノのところに入ってきて暗いままジョン・ケージの曲を弾きはじめました。「偶然性の音楽」というやつではなく,非常に気持ちの良い音楽でした。言われなければサティの曲と区別がつかないかもしれません。

サティの曲ではほとんどの曲についても映像が入りました。グノシェンヌではノートルダム寺院の中のビデオ映像,ジムノペディではイスタンブールの上空を飛ぶコウノトリのビデオ映像とそれぞれ催眠にかかるような雰囲気でした。自動記述という曲では,サティが「読んではいけない」と指示している,楽譜に書かれた記述を読みながらの演奏でした。島田さんが「小さな波」というと確かに「小さな波」のような雰囲気になりなかなか楽しめました。スポーツと喜遊曲では,この曲の書かれるきっかけとなった絵本のスライド映像と一緒に弾かれました。こちらの方はイメージがあまりわきませんでした。

休憩の間にも例のヴェクサシオンが延々と流れていました。前半同様,島田さんがスッと入ってきて,BGMのヴェクサシオンにオーバーラップするようにピアノでヴェクサシオンを弾き始め,後半が始まりました。なかなかうまい演出だと思いました。

というわけで,ピアノ演奏以外の要素が大半を占める演奏会だったので,演奏自体についてはあまり印象に残っていません。曲の区別さえよくついていません(前述のようにほとんど寝ながら聴いていたので...)。いずれにしてもサティの曲というのは評価をするために聴く音楽ではないようですね。そういう意味では,演奏会前や休憩時間に流れていたヴェクサシオンのように,聴いているのか聴いていないのかわからないが,なんとなく雰囲気が盛り上がる,といった聴かれ方が最適なのかもしれません。