竹松舞&OEKジョイントコンサート
99/04/30 金沢市民芸術ホール

1)ドビュッシー(ルニエ編曲)/アラベスク第1番
2)サルツェード/タンゴ
3)ラヴェル/序奏とアレグロ
4)バーバー/弦楽のためのアダージョ
5)ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第1番
6)ヘンデル/ハープ協奏曲
(アンコール)
7)ワトキンス/ファイヤー・ダンス
8)ヘンデル/ハープ協奏曲〜第3楽章
●演奏
竹松舞(Hp*1-3,6-8)
松井直(Vn*3-6,8),原田智子(Vn*5,6,8),江原千絵(Vn*3-6,8),山本暁子(Vn*5,6,8),松井京子(Vla*3,6,8);軍司玲美子(Vla*4,6,8),フロリアン・リーム(Vc*3-6,8),今野淳(Cb*5,6,8),岡本えり子(Fl*3),木藤美紀(Cl*3)

連休の合間をぬって出かけてきた演奏会は,竹松舞さんとオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーによるジョイントコンサートです。調べてみると竹松さんは今話題の西武ライオンズの松坂投手と同じ年で3月に高校を卒業したばかりです。気のせいか若い男性の多い演奏会でした。

ジョイントコンサートということで竹松さんとOEKが交互に出てくるような形のプログラムでした。全般にかなり軽めのプログラミングでした。特に前半が軽く,30分もかからないうちに休憩になりました。

最初の2曲は竹松さんのソロでした。ドビュッシーのアラベスクはもともとはピアノの曲ですが,このところハープの曲としてもかなり浸透している感じです。竹松さんが登場し,「ごあいさつ」という感じで両手でスカートの裾をちょっと持ち上げて挨拶をすると(これは若い女性にしか許されない挨拶でしょう),照明が落とされ,すっとハープのアルペジオが始まりました。別世界に運ばれていくようで,演奏会の前菜にはぴったりでした。2曲目のタンゴも,ゆったりしたテンポ感が気持ちの良い曲でした。ハープといえば幻想的というイメージがありますが,竹松さんの演奏はかなりクリアでシャープな印象を受けました。優雅というよりは強さを感じました。弦を弾く時にノイズのような音が時々入りましたが,生で聴くとこんなものなのでしょうか?CDで聴くよりは,野趣を感じました。

前半のメインのラヴェルの序奏とアレグロではOEKのメンバー7人が加わりました。ダフニスとクロエあたりを思い出させるような曲でしたが,やや雰囲気不足のような気がしました。全般にもっとゴージャスな感じが欲しいと思いました。竹松さんの音もすっきり目でしたが,フルートの音などにももう少し強さがあるともっと面白かったと思いました。

後半はまず弦楽四重奏によるバーバーのアダージョでした。この曲は弦楽合奏の曲として有名ですが,実はこの形がオリジナルです。ビブラートが少なめの薄い響きからは虚無的な雰囲気が漂ってきました。弦楽合奏では甘さを感じますが,そういう雰囲気はなく切実さを感じました。やや音程が悪いような気がしましたが,この日のプログラムの中ではいちばん聴き応えがありました。

第1ヴァイオリン2人,第2ヴァイオリン2人,チェロ,コントラバス各1人という変則的な編成で演奏された次のロッシーニも見事でした。第1ヴァイオリン2人がユニゾンでピッタリ寄り添って息の長い旋律を演奏するのは見ているだけで楽しめました。この曲は非常に爽やかなので大好きな曲なのですが,そのイメージにぴったりの演奏で満足できました。

後半メインのヘンデルのハープ協奏曲は,弦楽器8人の伴奏による演奏。弱音器を使っているような感じの地味で控えめな伴奏だったので,竹松さんの独奏に近い感じでした。長いカデンツァ,多彩な音色などを楽しめましたが,少々物足りない感じでした。むしろ,竹松さんの演奏では,アンコールで演奏されたファイヤー・ダンス(デビューCDのタイトル曲)が圧倒的に楽しめました。かなり過激な音色,技巧がエキゾチックが曲想に詰め込まれ,生彩のある表現を楽しめました。古典的な曲,微妙な音色を表現するような曲よりも,こういう現代的なレパートリーの方が現在の竹松さんにはあっていると思いました。ハープは響き自体非常に音楽的な楽器なので,かなり前衛的な現代音楽を演奏しても美しく響くようなところがあります。むしろ,それぐらいの曲の方が面白と感じました。言い換えると,古い曲だとまともっぽく聞こえすぎてあまり面白くないような気がしました。

演奏会の後,サイン会があったので参加してきました。「mai」のiの上の点がハート型になっているピンクのサインペンで書かれたサインなどをもらってしまい,妻子のある身としては非常に恥ずかしかったのです。自分の孫からサインをもらっているようなおじいさんもいたりして何かほほえましい光景ではありました。