仙台フィルハーモニー管弦楽団演奏会
99/05/11根上町総合文化会館音楽ホール・Tanto

1)スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
2)メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調,op.64
3)ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調,op.27
(アンコール)
4)バッハ,J.S./G線上のアリア
●演奏
神尾真由子(Vn*2)
外山雄三/仙台PO

今回報告する演奏会は,今年度の文化庁移動芸術祭巡回オーケストラ公演で石川県にやってきた仙台フィルの演奏会です。地方オーケストラという呼び方はあまり好きではないのですが,金沢同様オーケストラを持つ地方都市ということで仙台には親しみを感じています。仙台フィルを聞くのは初めてでしたが,外山さんの指揮の下で非常に充実した演奏を聴かせてくれました。

仙台フィルの通常の編成は知らないのですが,会場があまり広くないこともあり,中規模の編成でした。弦の響きが重くなり過ぎずこのホールにはちょうど良い音量でした。 最初の「売られた花嫁」序曲は,妥当なテンポできっちりと聴かせる演奏でした。要所で出てくる弦楽器の細かい音型の繰り返しなどをくっきり演奏しているのを聞くだけで気持ちの良くなる演奏でした。無難な演奏ともいえるのですがホールの響きの良さのせいもあってきっちり弾いていても機械的にならない演奏でした。

2曲目のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は先月も聞いたばかりだったのですが(このところ若い日本人女性がソリストの演奏会を立て続けに聞いており,少々食傷気味なのですが),今回のソリストの神尾真由子さんという人はまだ中学生ということでした。体型もまだ子供っぽく,赤い洋服に赤いリボンなどをつけて登場したので,ヴァイオリンの発表会という雰囲気でした。が,演奏は立派なものでした。まず,音が良く通るのに感心しました。オーケストラの中からすっと浮かび上がってくる音はソリストとしての素質を示していると思いました。ただ,音の表現力のようなものは練られていないようで「生のまま」「まだ子供」という雰囲気でした。カデンツァのじっくりとした聞かせ方は立派でしたが,2楽章などは少々退屈でした。3楽章も最初の方はやや走り気味でオーケストラとテンポが合わない感じでした。とはいえ,まだ中学生ということを考えると信じられないほど巧い演奏でした。この曲の伴奏はいつもは室内オーケストラで聞いているせいか,少々重苦しく,鈍い響きのように感じました。

後半はラフマニノフの交響曲第2番でした。実は,この曲を生で聴くのがこの日の目当てでした。この曲はカット版で演奏されることも多いようですが,演奏時間が約1時間もあったところから考えると全曲版で演奏されたようです。

先に述べたように中規模編成による演奏だったので,弦のカンタービレがしつこくならず,曲の形をゆがめずに再現したような演奏でした。甘くなり過ぎなかったのは外山さんの特徴だと思います。甘い旋律もさることながら,要所要所に出てくる盛り上がりの作り方が素晴らしく,映画音楽ではなく,力強い交響曲を聴いたという印象を持ちました。楽章ごとの盛り上げ方の配分も絶妙で,冷静に曲を作る職人的なイメージのある外山さんならではの演奏でした。その一方,ライブならではの音の熱気もあり,知情のバランスのとれた,まずは理想的な演奏だったと思いました。 ただ,仕事が終わった後でかつやや寝不足という悪いコンディションだったので,さすがに長いと感じました。もう少し短いともっと良い曲だと思うのですが...聴き込めば印象も変わるかもしれません。

アンコールはG線上のアリアでした。とはいっても,かなり変わった演奏でした。恐らく,ストコフスキー編曲版ではないかと思います。いきなりフォルテの低弦から始まったのでびっくりしました。全曲を通じて弱音はなく,ほとんどゴージャスなレガートで演奏されていました。いきなり,こういう演奏を聴かされたら驚くと思いますが,ラフマニノフの後ということで,なかなか考えたアンコールだな,と納得しました。