第12回県教弘クラシックコンサート
99/06/12 加賀市文化会館

1)外山雄三/管弦楽のためのディヴェルティメント
2)ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調,op.26
3)ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調,op.92
(アンコール)
4)バッハ,J.S./G線上のアリア
●演奏
田中一嘉/Oens金沢/吉本奈津子(Vn*2)

偶然入手したタダの券で行ってきた演奏会。加賀市文化会館に一度行ってみよう,という理由で出かけてみた。会場は加賀市の名産品が陳列されていたりしてかなりローカルな雰囲気だったが,ホール自体は1階のみの長方形で広すぎることもなく,なかなか良い響きだった。ただ,会場の前方がやや平べったい感じなので少々ステージが見にくかった。私自身そういう席に座ったので途中で後悔した。音も頭の上を越えて行く感じだったので,もう少し後の座席で聞いた方が良かったのかもしれない。

演奏会は,恐らくタダ券で来た人ばかりだったようで盛り上がらないコンサートだった。やはり,演奏会はお金を払って聴くものである。

最初の外山さんの曲は3楽章構成だが,発想は有名なラプソディと良く似た曲。OEKも何回も演奏している曲で今度CDも発売される。手の内に入った演奏で,安心して聴けた。特に,通常抑えられていることの多い管楽器が気持ちよさそうに演奏していたのが印象に残った。田中一嘉さんの指揮はダイナミックな感じではなかったがオーケストラを美しく聴かせてくれた。

ブルッフのヴァイオリン協奏曲は全体に慎重な音楽の運びだった。悪くいうと少々ともたれた。独奏の吉本さんは,金沢市出身で,以前シマノフスキの曲を演奏するのを聴いたことがある。一音一音に気持ちがこもっていて,とても丁寧に弾いているのがわかる演奏で好感を持ったが,その割に全体としてあふれ出るような感情の動きが伝わって来なかった。また,丁寧すぎるのも少々疲れる。もう少し力を抜く方が曲全体として見るとメリハリがつくのではないか,と感じた。吉本さんの音色は派手ではなく,どちらかというと暗い感じがした。甘さも感じなかった。甘すぎる演奏よりは良かったが,ブルッフを聴くならもう少しせつない演奏の方が私は好みである。

後半は,これもOEKのレパートリーになっているベートーヴェンの第7交響曲。管楽器にはエキストラが多く,なんとなく雑な雰囲気があったが,全体としてはいつもどおりのキビキビとした演奏が聴けた。昨年,岩城さんの指揮でもこの曲を聴いたが,その時の熱演を彷彿させるような場面が何度かあった(逆にいうとその時の演奏を越えていなかったような感じ)。特に第4楽章は熱気がよく伝わってきた(逆にいうと4楽章だけに力を入れていたような感じ)。田中さんの指揮にはあまり個性を感じなかった。雰囲気も一般の人と変わらないような感じだったので印象に残りにくい方だった。いずれにしても,ベートーヴェンの第7交響曲は,何度もOEK演奏会に登場する曲なので,もう少し違った解釈を聞きたかった,というのが正直なところである。