OEK,石川県ジュニアオーケストラ,OEK合唱団ジョイントコンサート
99/08/22金沢市文化ホール

1)シューベルト/交響曲第7番ロ短調,D.759「未完成」
2)榊原栄編曲/ドイツ民謡集(ローレライ,流浪の民,もみの木,ムシデン,乾杯の歌)
3)ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調,op.67〜第1楽章
4)カバレフスキー/組曲「道化師」op.26〜第1,2,5,7,10曲
(アンコール)
5)シュトラウス,J./ラデツキー行進曲
●演奏
1)関谷弘志/OEK
2)榊原栄/OEK,OEKCho
3-5)榊原栄/OEK,石川県ジュニアO

今回の演奏会は昨年に続いて行われたオーケストラ・アンサンブル金沢とその関連アマチュア団体のジョイント・コンサートでした。知人が合唱団に参加しているので,その応援の意味も含めて出かけてきました(実は,同じ時間帯に「力の武士("もののふ"と入れて"武士"と変換されたので感動しています)」こと出島関の祝賀パレードがあり,どちらに行こうか迷ったのですが。それにしても「力の武士」とは格好良いキャッチ・フレーズを見つけたものです。)

前半の第1曲はOEKによる未完成でした。未完成にはトロンボーンが入るので,OEKで聴く機会は意外なことにほとんどありません。指揮は関谷弘志さんでOEKには2回目の登場だと思います。地味な印象の方でしたが,演奏もつつましく,清潔な感じでした。ただ,アインザッツが揃わないような所がいくつかあったのが気になりました。これは客演?の見慣れない方がコンサートマスターをされていたせいもあるかもしれません。1楽章の最後の無気味な感じなど非常に良かったのですが...携帯電話で「トオリャンセ,トオリャンセ...」と(しかも休符の時に)鳴り出したのでがっくりきました。1楽章の最後の音には版の問題があるようですが,短めに切り上げていたようでした(何版かは知りませんが)。第2楽章も全般に良い印象だったのですが,もう一つ強い印象は残りませんでした。静かに終る曲のせいか,曲の後のカーテンコールもなく,すぐに拍手が止んでしまいました(この日のお客さんは「子供の発表会」を見に来ているような人が非常に多かったです。きっとそのせいだと思います。また,金沢市文化ホールだといつも拍手の量が少ないので,ホールの響きのせいもあるかもしれません。)。関谷さんはこれで出番がなかったので,関谷さんには少々可哀想な演奏会でした。

2曲目からは指揮が榊原栄さんに変わり,ポピュラー・コンサート的な雰囲気に変わりました。まずは,OEK合唱団とOEKによる榊原さんの編曲によるドイツ民謡集でした(それぞれ作曲者はいるような気がするのですがプログラムでは民謡ということになっていました)。

合唱団はとても良く声が出ていました。テンポを全般に遅めにとっていて,合唱の響きをたっぷり聴かせてくれたので,ドイツ民謡の素朴さにはふさわしいと思いました。普通はピアノで伴奏される曲ばかりでしたが,オーケストラ伴奏だとピアノにはない暖かみが出ていました。榊原さんの編曲は打楽器をいっぱい使っていて親しみやすいものでしたが,「流浪の民」などはもう少し地味なアレンジの方が良いと思いました。ただ,中間部の祈りの音楽っぽいところでぐっとテンポを落すあたりの雰囲気はとても良かったと思いました。この曲のソロは合唱団の方が歌っていましたがさぞかし緊張したことだと思います。

合唱の最後の曲の「乾杯の歌」は,最初プログラムを見た時,例の三大テノールでお馴染みの「椿姫」の乾杯の歌かと思ったのですが,ドイツ民謡集ということで,紅白歌合戦の入場行進曲でした(今でも使っているのでしょうか?)。昔の良き時代の紅白歌合戦を思い出して,妙に懐かしくなりました。他の曲もみんな懐かしくなるような曲ばかりでした。やはり,「なじかはしらねど」といった文語の歌詞には味があります。

後半は石川県ジュニアオーケストラとOEKとの合同演奏でした。ジュニアオーケストラは県内の小中学生からなるオーケストラです。コンサートマスターはジュニアオーケストラの人が担当していたので,チューニングからしてハラハラしました。当然のことながら締りのない響きでしたが,運命では,出だしもピタリと揃い,迫力のある響きを聴かせてくれました(トランペットが10人ほどいましたから)。2曲目はカバレフスキーの道化師の抜粋でしたが,こちらの方が編成がより大きく,打楽器がたくさん入るので楽しめました。有名なギャロップの木琴のソロもジュニア・オーケストラのメンバーが担当しており,見事に演奏してさかんに拍手を受けていました。

このところ私は夏バテ気味だったのですが,子供たちとOEKのメンバーが一緒に演奏する姿を見ていると何か元気が出てきました。演奏会に行く前と後ですっかり気分が変わってしまい,来て良かったと思いました。

いずれにして,アマチュア演奏家にとってプロと共演するということは夢のようなことなので,今後もこの演奏会は続けていって欲しいと思います。