第6回石川県新人登竜門コンサート 01/3/5 金沢市観光会館 1)モーツァルト/クラリネット協奏曲イ長調,K.622 2)ブトリー/ディヴェルティメント 3)ヴェルディ/歌劇「椿姫」第1幕への前奏曲 4)ヴェルディ/歌劇「椿姫」〜「ああ，そはかの人か〜花から花へ」 5)プッチーニ/歌劇「トスカ」〜「2人の愛の家へ」「歌に生き，恋に生き」 6)プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッッキ」〜「私のお父さん」 7)プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」〜「ムゼッタのワルツ」 ●演奏 上田奈緒(Cl*1),川端文子(Sax*2),高崎尚美(S*4,7)，橋浦真紀(S*5,6) ジャン＝ルイ・フォレスティエ/Oens金沢 マイケル・ダウス(コンサートマスター） 毎年，4月に行われている石川県新人登竜門コンサートですが，今年は1ヶ月早く3月に行われました。今年は，「管・打楽器，声楽部門」でした。このコンサートは，他に「ピアノ部門」「弦楽器部門」があり，3年のローテーションで回っているのですが，今回で２巡したことになります。やはり，「管・打楽器・声楽」というのは，ピアノ，ヴァイオリンあたりと比較すると層が薄くなるので（石川県関係者に限っているのでますます層が薄くなります），今回はお客さんの数も含め，やや低調な印象でした。そのせいかどうかわかりませんが，来年からはオーディション対象者を北陸３県に広げるようです。来年からは新ホールで行われることもあり，もっと華やかな雰囲気になるのではないか，と期待しています。 最初はクラリネットの上田奈緒さんのモーツァルトでした。技巧的にほとんど問題はなかったと思うのですが（3楽章はちょっと危なかったですが），私には物足りなく感じました。細目のすっきりした音で素直に弾いていたのですが，全体にのっぺりとした雰囲気で練習曲か何かを弾いている感じに聞えました。モーツァルトの晩年の曲とはいえ，もう少し明るさと闊達さがあるといいなと思いました。オーケストラと共演するのは，初めてだったようなので，緊張していたのだと思います。拍手も楽章ごとに入り（定期公演とは観客層が違う感じでした），かなり煩わしく感じました。 2曲目は川端文子さんのサクソフォーンでした。パリ・ギャルドの指揮者のブトリーさんの作品で，もちろん聴くのは初めての曲です。イベールあたりの曲のような洒落た古典的な感じの小品でとても楽しめました。今回はテナーサックスということもあり，2楽章のたっぷりとしたたくましさが魅力的でした。上田さん同様生真面目すぎる感じはしましたが，とてもしっかり演奏されており，良い演奏だったと思います。オーケストラは弦楽器だけだったのですが，ダウスさんの美しいソロが特に印象的でした。 後半は，ソプラノ2人が登場し，オペラのガラ・コンサートのような構成になりました。 最初の高崎さんは，とても可憐な感じの声質でした。ただし，かなりヴィブラートが多く，旋律がはっきりしませんでした。高音になると苦しそうで，声質も変わっていたようでした。「花から花へ」は最後の音がどうなるかな，と少々不安だったのですが，やはり，上がり切りませんでした。やはり，ここは無理せずにオクターブ下げた方が良かったのではないかと思いました（結果論ですが）。 次の橋浦さんは，高崎さんとは対照的なソプラノでした。どこかマリア・カラスを思わせるような，少々暗くこもったような声質で，メゾ・ソプラノかな，という気もしました。声質については好みが分かれると思うのですが，音程はしっかりしていて，高崎さんと比べると安定感がありました。派手ではありませんが，心に染みる歌で，私は大変気に入りました。 最後に再度高崎さんが登場し，ボエームの中の曲が歌われたのですが，この曲はそれほど盛り上がる曲ではないので，なぜこの曲で締めるのかな，という疑問が残りました。 最後に出演者4人が再度登場し，さかんに拍手を受けていました。出演者の皆さんにとっては，OEKをバックに演奏し，歌うという大変ぜいたくな経験をすることができたと思うのですが，やはりプロと呼ぶにはもう一つという気がしました。ステージマナーが不慣れ（ステージからなかなか引っ込まない人がいて少々ハラハラしました）ということは別として，突き詰めた表現をしているかどうか，という点で物足りなさが残りました。皆さん真剣に演奏していのですが，やはり，グッと来るものがまだ足りないと感じました。 PS.今回は，当初岩城さんの指揮の予定だったのですが，病気の治療のために急遽フォレスティエさんに変更になりました。3月の他の公演はジャン＝ピエール・ヴァレーズさんに変更になります。岩城さんはOEKが出来る直前にも大きな手術をされているのですが，今回の病気も克服してもらいたいと思います。新聞の報道では，5月の定期公演から復帰されるとのことです。