チェロ・アンサンブル・レクチャー・コンサート
01/3/11石川県立美術館

1)ポッパー/2台のチェロのための組曲の中の3曲
2)シューマン(ベトヒャー編曲)/チェロ協奏曲
3)シュトラウス.J.II/ピチカート・ポルカ
4)チェロ四重奏のためのタンゴ
5)バラ色の人生
6)ガーシュイン/サマー・タイム
7)ハロー・ドゥーリー
(アンコール)
8)カサブランカの音楽
●演奏
Oens金沢のチェロ奏者
ルドヴィート・カンタ,十代田光子(1-8),大澤明(3,5-8),早川寛(2-8),フロリアン・リイム(2-8)

どこのオーケストラでもチェロ・パートは仲が良くまとまりやすい,というのはベルリン・フィルの例もあるように定説のようですが,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のチェロ奏者たちもとても仲が良いようです。この日は,石川県立美術館のホールで「県民音楽セミナー」というクラシック音楽を啓蒙する講座の一環として解説入りのチェロ・アンサンブルの演奏会が開かれました。無料ということもあり,気楽な気分で出かけてきました。

前半は,解説の大澤さんがおっしゃられていたとおりかなりマイナーでマニアックな選曲でした。ポッパーというのはヴァイオリンでいうパガニーニに当り,技巧的な曲を沢山書いた人です。そういう曲をチェロのデュオで聴くというのは非常に聴き応えがあります。

次のシューマンは,この日のプログラムのメインと言っても良い曲でした。ベルリン・フィルのチェロ奏者のベトヒャーという人が「独奏チェロ+伴奏のチェロ三重奏=チェロ四重奏」に編曲したもので,こういう形で演奏されるのは非常に珍しいと思います。この曲は以前OEKの定期でやはりカンタさんのソロで聴いたことがあります。その時もかなり渋い印象を持ったのですが,それがさらに渋くなっており,楽章間の対比・区別,ソロと伴奏の区別はつきにくくなっていたような気がしました。その分,第2楽章のチェロ四重奏のハモリ具合などは室内楽ならではの美しさがありました。いずれにしても音域が広く,独奏楽器にも伴奏楽器にもなる,チェロならではのアンサンブルといえると思います。

後半は,まず,「お客さんにチェロの重さとチェリストの苦労?」を体験してもらうコーナーがありました。ステージ上にこの日の5人の奏者のチェロ入りチェロケースを置いておき,それをお客さんの手に取ってもらう,という企画です。いずれにしても飛行機で運ぶ時は,人間もう一人分の席が必要で,費用の面でも苦労があるようです。大澤さんはチェロの分の機内食をスチュワーデスさんにいつも要求してみるのだそうです。その時の対応が「ジョークで返す」「まじめに返す」「固まる」といろいろあって面白いとのことでした。

後半は,このような企画やおしゃべりがあり,さらにリラックスした雰囲気となりました。曲も軽い曲ばかりでした。

最初のピチカート・ポルカは,アンサンブルの面ではあんまり揃っていなかったみたいですが,大澤さんが合いの手のトライアングルで参加し,ここでも道化役として楽しませてくれました。

後は,映画音楽,ミュージカルの音楽が続きましたが,中でいちばん良かったのがタンゴでした。チェロ四重奏のためのタンゴ(曲名ははっきり聞き取れなかったのですが)は,なかなか格好良いと思いました。チェロのタンゴといえばヨーヨー・マですが,もしかしたら,チェロとタンゴの相性は根本的に非常に良いのではないかと思いました。OEKの室内楽でタンゴだけのプログラムを組んでも面白いのではないか,と感じました。

この日の客席にはOEKの客演コントラバス奏者のクロイトラー(元ウィーン・フィル)さんも座っていらっしゃいました。とても楽しそうな顔で聞いているのが印象に残りました。本当に音楽を好きな方なのだな,と思いました。
チェロアンサンブル・レクチャー・コンサート