オーケストラ・アンサンブル金沢特別公演
ウェルカム・スプリング・コンサート
01/4/21 石川厚生年金会館

1)ロッシーニ/歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
2)チャイコフスキー/ノクターン
3)ジェイコブ/ホルン協奏曲〜第1楽章
4)モンティ/チャールダーシュ
5)シューベルト(フランセ編曲)/軍隊行進曲
6)ラヴェル/ツィガーヌ
7)飛び入り指揮者コーナー
モーツァルト/交響曲第40番〜第1楽章の一部
ハイドン/交響曲第101番〜第2楽章の一部
ベートーヴェン/交響曲第5番〜第1楽章の一部
8)ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調,op.67〜第1楽章
●演奏
ルドルフ・ヴェルテン/Oens金沢
大澤明(Vc*2),金星眞(Hrn*3),ルトヴィート・カンタ(Vc*3),吉本奈津子(Vn*6)
OEKの木管奏者たち(5)
小村良智,小林豊,沢村竜介,高木修一,高橋淳,中河秀俊,端名桃子,布施健市郎(7)
サイモン・ブレンディス(コンサート・マスター)
フロリアン・リーム(司会)

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が毎年4月に行っている会員招待のこの演奏会は,昨年から「ファン感謝デー」のようになってきました。今年はさらにファンサービスが増え,「飛び入り指揮者コーナー」が登場しました(飛び入りといってもあらかじめ募集してあったのですが)。前半は,OEKの奏者たちがソリストとして登場し,全体として非常に楽しめる演奏会になりました。チェロのリームさんが流暢な日本語で司会を務めていたのも盛り上がった原因です。ジョークが見事に受けていました。パンフレットには,全団員の顔写真入りプロフィールが掲載され,このところ,ますます聴衆と団員との距離が短くなってきているような気がしています。

前半は,通常の演奏会の形でした。とはいえ,オーケストラの配置は下手から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリン。コントラバスはチェロの後方,という変則的な配置で指揮者のヴェルテンさんのこだわりが感じられました。

プログラムの最初は,ロッシーニの気軽な序曲でした。率直に演奏されており,オープニングに最適でした。オーボエのソロが非常にきれいだったのが印象に残りました。

2曲目はチェロの大澤さんのソロによるチャイコフスキーのロマンスという曲でした。有名なヴァイオリン協奏曲の第2楽章のような雰囲気の曲でした。大澤さんにとっては失恋の想い出(?)が絡んだ曲だそうで,渋い情感がこもっていました。

続く,ジェイコブのホルン協奏曲というのは珍しい曲ですが,ホルンの多彩な響きを楽しめる面白い曲でした。金星さんの非常に力強い音が印象的でした。ミュートも面白い効果を出していました。

モンティのチャールダーシュのソロはおなじみの首席チェロ奏者のカンタさんでした。速いパッセージを見事に弾きこなし,フラジオレットなどの超高音を駆使した技巧的な演奏でしたが,どういうわけか音が全然鳴っていない気がしました。ホールのせいなのでしょうか?

フランセ編曲による木管十重奏版のシューベルトの軍隊行進曲は,本当に楽しめました。聞いていて何となく懐かしい気分になり,リラックスできました。面白い合いの手が入ったりして,洒落っ気もありました。こういう演奏を,オーケストラ演奏の間に聞くというのは,良い気分転換になります。ちなみに,木管十重奏は,英語でいうとDouble wood wind quintetとなるようです(プログラムによる)。「なるほど」と思ってしまいました。

前半最後は,数年前の石川県新人登竜門コンサートに出演した,金沢出身の吉本さんのソロによるツィガーヌでした。まず,前半の無伴奏部分の音程が良いのに感心しました。非常に安定感があり,音も良く鳴っており,素晴らしいと思いました。オーケストラの伴奏が登場し,テンポが速くなる後半も,丁寧にじっくりと演奏されており曲全体として見事な仕上がりになっていました。全般にやや腰が重い感じはしましたが,数年前に聞いた時から順調に成長されているようで,頼もしく思いました。

後半は,いよいよ飛び入り指揮者コーナーです。8人の「指揮者」が舞台の脇に登場し,順番にモーツァルト,ハイドン,ベートーヴェンの交響曲の一部を指揮する,という企画です。ずっと昔,TBSでやっていた山本直純さんの「オーケストラがやってきた」の中に「1分間指揮者コーナー」というのがありましたが,それを8人続けてやるという大サービスでした。小学生ぐらいの女の子から元県の教育長まで,という年齢層も多彩で,全然飽きずに楽しめました。団員も,笑いをこらえながらもきちんと演奏していたようでした。

聞いてみて,やはりそれぞれ違った演奏になるのが面白かったです。いずれにしても安定したテンポ感を出すのは素人には結構難しいことだと感じました。OEKのメンバーは,結構指揮棒に忠実に演奏していたようで,思わず吹き出しそうになるようなリタルダントが出て来たりしました。そう考えると,奇妙なテンポで指揮するということは,よほどそのテンポに自信を持っているか,心臓が強くないとできないことだな,という気がしました。

最後に口直し(?)にヴェルテンさんが再度登場し,ベートーヴェンの第1楽章を全部指揮しました。やはり,迫力が違いました。ヴェルテンさんの指揮は非常にビート感があり,気合いが入っていました。やはり,プロの意地(?)があったのかもしれません。ヴェルテンさんは,ちょっと派手目なジャケットを着ていましたが,従来のクラシック音楽の枠にとらわれない演奏をしようとしているのではないか,と感じました。これからもOEKの演奏会に何回か登場されるようなので,今後が楽しみになってきました(来週の定期公演にも登場されますが,これは,残念ながら都合で行けません。)。
ウェルカム・スプリング・コンサート