ふだん着ティータイムコンサートVol.4
01/5/12 金沢市民芸術村

【第1部15:00〜】
1)ベートーヴェン/11のバガテル〜第1番(管楽合奏版)
2)モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番〜ラルゲット(管楽合奏版)
3)モーツァルト/セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」〜第3楽章トリオ(管楽合奏版)
4)春の小川
5)花の街
6)ポッパー/2つのチェロのための組曲,op.16
7)ヴィラ=ロボス/木管三重奏曲
●演奏
水谷元(Ob*1-5,7),加納律子(Ob*1-5),柳浦慎史(Fg*1-5,7),渡辺聖子(Fg*1-5),遠藤文江(Cl*7)
ルドヴィート・カンタ,大澤明(Vc*2)

【子供のためのコンサート16:00〜】
久石譲/もののけ姫,となりのトトロ
モーツァルト/セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」〜第1楽章
カバレフスキー/組曲「道化師」〜ギャロップ
1分間指揮者コーナー
●演奏
OEKのメンバー,柳浦慎史(司会)

【第2部17:10〜】
1)リゲティ/6つのバガテル
2)ベートーヴェン/クラリネットとファゴットのための二重奏曲WoO.27-3
3)ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第8番ハ短調,op.110
●演奏
岡本えり子(Fl*1),加納律子(Ob*1),木藤美紀(Cl*1),遠藤文江(Cl*2),柳浦慎史(Fg*2)
金星眞(Hrn*1),坂本久仁雄,上島淳子(Vn*3),石黒靖典(Vla*3),大澤明(Vc*3)

【第3部18:20〜】
1)ブラームス/クラリネット五重奏曲〜第1,4楽章
2)ドヴォルザーク/三重奏曲ハ長調,op.74
3)シュトラウス,J./チャールダッシュ
4)シュトラウス,J./喜歌劇「ヴェネツィアの一夜」〜ワルツ
●演奏
遠藤文江(Cl*1),江原千絵(Vn*1,3-4),原田智子(Vn*2-4),トロイ・グーキンズ(Vn*1),軍司玲美子(Vla*1),石黒靖典(Vla*3-4),フロリアン・リイム(Vc*1,3-4),今野淳(Cb*3-4),岡本えり子(Fl*3-4),遠藤文江,木藤美紀(Cl*3-4),金星眞(Hrn*3-4)

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は,毎年,4,5月頃の土曜日の午後に「ふだん着ティータイムコンサート」という入場無料の演奏会を開いています。OEKの大部分のメンバーがボランティアで参加し,子供向けの曲からマニアックな曲までを4時間以上に渡って聴かせてくれるという内容です。団員自ら飲み物のサービスもしてくれます。金沢市民芸術村という多目的スペースで開かれたのですが,紡績工場を改造して作られたレンガ作りの建物は,こういうカジュアルなイベントにはぴったりです。

入場無料ということもあり,毎年,子供を連れてこのコンサートに行っているのですが,今年は途中で子供を帰し,全部を聴き通しました。一種のマラソンコンサートで,背もたれのない堅い椅子や地べたに座り続けるのはかなり疲れることなのですが,そういうのもまた一興です。団員自身も自分の家族を連れて来たりしていたようで,非常に親近感が沸きました。

プログラムは「室内楽を中心とした3つの部分+子供のためのコンサート」の4部からなっていました。

第1部は,木管アンサンブルとチェロのデュオでした。最初の5曲は,ダブル・リードアンサンブルということでオーボエ族の楽器+ファゴットという組み合わせでした。モーツァルト,ベートーヴェンといった古典派の曲をアレンジしたもので,のんびり聴くことができました。どなたがアレンジしたものかは不明です。春の小川などの童謡っぽい歌は木管合奏で演奏するのには最適の曲です。子供たちも嬉しそうに聞いていました。次のチェロの曲は,ポッパーのかなり長い曲でした。高音が続出する難曲で,演奏する方もかなり苦労されているようでした。ヴィラ=ロボスの曲は,春の祭典を思わせる野性的で鋭い響きの曲でした。かなり珍しい曲だと思います。

続く「子供のためのコンサート」は,もう少し広いオープン・スペースで行われました。お決まりの楽器紹介コーナーですが,今回は,低音楽器から順に紹介していき,最後に第1ヴァイオリンが加わって全編成が揃うという工夫がされていました。伴奏だけだと音が足りず,変な曲に聞えていたのが,段々素晴らしい曲になっていくのがわかり子供たちも喜んでいたようでした。後半は,飛び入り指揮者コーナーでした。OEK団員の子供が登場したりしてなかなか楽しめました。団員の子供といっても,普通の子供と変わらなかったので妙に安心しました。

第2部の最初は女性4人+男性1人による木管五重奏でした。リゲティの曲ということでしたが,意外に洒落た感じで聴きやすい曲でした。続くベートーヴェンの珍しい曲でした。木管アンサンブルは,聴く機会が少ないせいか,埋もれている曲がたくさんあるのではないか,と思いました。第2部最後のショスタコーヴィチはこの日の中でいちばんの大曲でした。かなりシリアスな内容で,間近で聴いただけあって迫力がありましたが,休日の午後にのんびり聴くという,この日のコンサートの雰囲気にはややそぐわないのではないか,という気がしました。

第3部の頃になると,すっかり夕方になっていたので,ブラームスの室内楽はぴったりでした。クラリネットの遠藤さんは,演奏前に「全曲聴きたい方は,演奏会を企画して下さい」というPRをされていましたが,そういう気にさせてくれるくらいの素晴らしい演奏でした。次のドヴォルザークの三重奏曲(テルツェット)は,ヴァイオリン2本+ヴィオラという変わった編成のマイナーな曲でしたが,ドヴォルザークだけあって旋律が親しみやすい曲でした。これは知られざる名曲だと思いました。

最後の2曲は演奏会のシメということで,9人編成によるシュトラウスでした。アンサンブル金沢プチ,という雰囲気でした。ウィーン・リンク・アンサンブルと同じ編成ということで華やかさと親しみ深さを併せ持ったような絶妙の演奏でした。第1ヴァイオリンの原田さんの動きが非常に大きく,演奏全体を生き生きとひっぱっているようでした。これからも,時々,これぐらいの編成でリラックスできる曲を聴いてみたいものです。

というわけで,室内楽を中心に楽しめる演奏会となりました。ただ,曲によっては,団員の趣味に走っているところもあり,悪くいうと雑多なものを混ぜ合わせているような気もしました。個人的には,大きなテーマを決めて,その中で団員の好きな曲を演奏する,という形の方がより楽しめるような気がしました。それと,プログラムの最後に登場した9人編成のアンサンブルをもっと最初の方に出した方が華やかさがあって良かったのではないか,と思いました。何はともあれ,定期演奏会などでは,試せないようないろいろなアイデアを試してみるには最適な自由な雰囲気にあふれた演奏会で,これからも是非続けてもらいたいと思いました。