高木綾子フルートリサイタル:明治生命ハートフルコンサート2001
01/6/11 金沢市観光会館

1)ドゥメルスマン/オベロンの主題による幻想曲,op.52
2)マレ/ラフォリア
3)ドップラー/ハンガリー田園幻想曲
4)フォーレ/シシリエンヌ,op.78
5)クライスラー/美しきロスマリン,op.55-4
6)ピアソラ/ブエノスアイレスの冬
7)松任谷由実/春よ,来い
8)荒井由実/中央フリーウェイ
9)カーペンター/トップ・オブ・ザ・ワールド
10)カーペンター/イエスタデイ・ワンス・モア
(アンコール)
11)ドゥメルスマン/オベロンの主題による幻想曲,op.52〜終結部
●演奏
高木綾子(Fl),與口理恵(Pf*2以外),三枝成彰(話)

今回報告するのは,明治生命主催のトーク付きの演奏会です。招待券がたまたま当選したので出かけてきました。JクラシックスとしてDENONから次々とCDを出している高木綾子さんのフルート演奏を聞くのがいちばんの目当てです。

高木さんが主役とはいえ,実は,解説を担当した三枝成彰さんのトークもかなり長く,演奏会は2時間以上かかりました。演奏会後に,このお二人のサイン会があったこともあり,閉演は9:00近くになりました。ちょっと,三枝さんの話は長過ぎたかもしれません(薀蓄たっぷりのとても面白い話ではありましたが)。

前半は,通常のクラシック音楽だけのプログラムでした。最初のドゥメルスマンは初めて聞く名前でしたが,三枝さんによると「フルートのパガニーニ」とのことでした。フルートらしさの溢れる速い動きが中心の技巧的な曲でした。高木さんの演奏は,音も技巧も,非常に自然でした。基本的に,真面目な演奏だったと思うのですが,優等生的な堅さはなく,よくこなれていたと思います。音質はスリムですが,音量は十分に豊かで,若い人らしい快活さとセンスの良さに溢れていたと思います(前から2列目,しかもフルートの管の先,という「音をダイレクトに楽しむのに最適な場所」にいたせいもあるかもしれません。ただし,演奏中右側を見つづけているのが辛くなり,後半は2階に移動しました。ここでも十分に音の迫力が感じられました。)。

2曲目は,ラフォリアで,よく聞く主題による変奏曲でした。無伴奏ということもあり,この日の曲の中ではいちばんシリアスに聞かせてくれました。演奏中照明をかなり落としていたので,演奏にぐっと引き付けられました。

3曲目は,日本人好みのフルート曲の代表であるドップラーでした。前半は,アジア的なメロディが出てきますが,それほどしつこい感じではありませんでした。後半はかなりポップな感じでした。

後半のプログラムは,クラシックとポピュラーを交えた小品集でした。いずれも軽く演奏されたもので,グッと来るものはありませんでしたが,中ではピアソラが,高木さんにはよく合っていると思いました。ポピュラー音楽とクラシック音楽を同じスタンスで演奏している高木さんのような人が,ピアソラのような「どっちつかず」の曲を演奏するのは,まさに適役という感じです。その他の曲は,早い部分は歯切れ良く,遅い部分はたっぷりと,という感じの演奏で快適でしたが,悪く言うとBGM的でした。技巧的な曲からユーミン・カーペンターズまでという幅の広さと柔軟性が現在の高木さんの特徴ですが,やはり,こういうプログラミングだと,クラシック音楽を中心に聴いている人にとっては物足りなさが残ります。今後,高木さんがどういう方向に向かうのかわかりませんが,何でもかんでも演奏する中から,本当に自分の演奏したい曲を見つけて行く,という方向に向かって欲しいものです。個人的には最新アルバムの「南の想い」のような,「ボサノバ=さわやかなラテン」的な路線がフルートの音色から見ても,いちばん合っているような気がします。

PS.高木さんは,ジャケット写真のとおりファッショナブルな方でした。ファッショナブルといっても派手に飾っているわけではなく,演奏同様,自然体でいるところが現代的だと思いました。ルックスの点でも,ポピュラーとクラシックの区別は既に無くなっているようです。
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