石川県立音楽堂開館記念式典 2001年9月12日 石川県立音楽堂 1)バッハ,J.S./トッカータとフーガ ニ短調 2)バッハ,J.S./G線上のアリア 3)モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調「ジュピター」 ●演奏 小林英之(Org*1) 岩城宏之/OEns金沢(2-3) ![]() ホールは,シューボックス型で,立派なパイプオルガンが付いています。このパイプオルガンの起動式も記念式典の中で行われました。谷本石川県知事と県出身の国会議員などからのあいさつが延々と続いた後,その起動式が行われました。知事がステージ上のボタンを押すと,自動的にパイプオルガンの演奏が始まりました。野球の始球式のような雰囲気がありました。 その後,記念演奏が行われました。最初に,起動したばかりのパイプ・オルガン独奏でトッカータとフーガが演奏されました。実は,本格的なパイプオルガンを生で聴くのは生まれて初めてのことでした。音量的には,室内オーケストラに全くひけを取らないと感じました。3階席だとパイプが真正面に来て,音がダイレクトに届くからかもしれません。音域の幅広さもオーケストラと同等です。特に重低音の迫力はオーケストラの中の楽器にはないものです。このパイプオルガンは,これからこのホールの大きなセールスポイントになることでしょう。 小林英之さんの演奏は,非常にオーソドックスだったと思うのですが,私自身,オルガンについては,どこをポイントにして鑑賞すれば良いのかまだよくわからないところがあります(普通のコンサートにしても,適当に聞いているのですが...)。今後,別の人の演奏をいくつか聴いてあれこれ比較をしていくうちに,聴き方のポイントがわかってくるかもしれません。 続いて,岩城さんの指揮でOEKがジュピター交響曲を演奏...するはずだったのですが,前日,アメリカで発生した同時多発テロの被害者を悼んで,急遽,バッハのG線上のアリアが,ジュピターに先だって演奏されました。この日は,OEKを応援している人たちにとって,手放しでお祝いできる記念すべき日になるはずだったのですが,こういう事件が起こってしまうと,はしゃぎすぎるわけにもいきません。音楽堂の開館の日が,悲劇的な事件とともに記憶されることになったのは,残念だったのですが,音楽は平和の時だからこそ楽しめる,という真理を教えてくれたのも事実です。このことは貴重な教訓だったかもしれません。さらりと速いテンポで演奏された,とても美しい演奏でした。 最後に演奏されたジュピターは,OEKの基本的なレパートリーなので,全く不安なところのない演奏でした。こちらも速目のテンポでさらりと演奏していました。強い主張はなく,新しいホールでの新しいOEKの響きを楽しんでもらおう,という意図だったのかもしれません。このホールの響きは,非常に柔らかくマイルドで,ホール全体の見た目の印象も加わり,OEKはこれまでになく高級な音を出しているように思えました。響きの美しさは,静かで休符の多い第2楽章で特によく実感できました。ただ,3階で聴いたせいか,音自体の迫力や力強さはそれほど感じませんでした。また,ティンパニの音もかなりこもって聞こえました。この辺りについては指揮者の解釈にもよるものかもしれません。これからしばらくは,いろいろな場所で響きを比較しながら,楽しんでみたいな,と思っています。 アメリカのテロ事件のせいで,TVのローカルニュースが吹き飛んでしまい,石川県立音楽堂開館のニュースは,大きく報道されることはなかったのですが,石川県の音楽をめぐる環境が1つ上のレベルになったことは確かだと思います。 |