オーケストラ・アンサンブル金沢第115回定期公演PH
02/2/24 石川県立音楽堂コンサートホール

1)チャイコフスキー/組曲第4番ト長調,op.61「モーツァルティアーナ」
2)モーツァルト/クラリネット協奏曲イ長調,K.622
3)(アンコール)ドビュッシー/パンの笛
4)(アンコール)バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番〜ラルゴ
5)ショスタコーヴィチ/交響曲第9番変ホ長調,op.70
6)(アンコール)リャードフ/音楽玉手箱
7)(アンコール)ハチャトゥリアン/バレエ音楽「仮面舞踏会」〜ワルツ
●演奏
ドミトリー・キタエンコ/Oens金沢(1-2,5-7),ヴェンツェル・フックス(Cl*2-4)
マイケル・ダウス(コンサート・マスター)
ヴェンツェル・フックス,フロリアン・リーム(プレトーク)

Review by管理人hs  六兼屋さんの感想広太家さんの感想かきもとさんの感想
毎年2,3月頃のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演は,県外でも同一内容の演奏会を行っています。今年も前日,前々日に東京,名古屋で同一プログラムの演奏会を行っています。例年,名古屋公演では合唱入りの曲,東京公演では岩城さんの指揮だったのですが,今回はドミトリー・キタエンコさん指揮による合唱なしのプログラムでした。キタエンコさんがOEKを指揮するのも最初なら,OEKがショスタコーヴィチの交響曲を演奏するのも初めてのことです。というわけで,昨年までとは,ちょっと傾向の違う演奏会ということになります。この日のプログラムは,キタエンコさんのショスタコーヴィチ(どちらも”ドミトリー”です),ベルリン・フィルの首席クラリネット奏者のヴェンツェル・フックスさんの独奏によるモーツァルト,という2点がポイントでしたが,どちらもとても印象に残る演奏になりました。

プログラム最初は,チャイコフスキーのモーツァルティアーナという曲でした。この曲を聞いたのは初めてのことでしたが,後の2曲と微妙につながりのある,良い選曲だと思いました。この曲は,モーツァルトの曲をチャイコフスキーがオーケストレーションしたものなのですが,大げさになり過ぎず,美しい演奏になっていました。フルオーケストラで演奏すると,重苦しくなりそうな曲でしたが,OEKには雰囲気が良くあっていると思いました。アヴェ・ヴェルム・コルプスを編曲した第3曲なども通俗的になり過ぎず,とても清潔な感じでした。キタエンコさんは,非常に落ち着きのある,紳士的な感じの指揮ぶりでした。この曲のいちばんの聴き所は,第4曲の変奏曲です。何となく,キラキラ星みたいな可愛らしく素朴なテーマでしたが,クラリネットやヴァイオリンのソロが入るのがチャイコフスキー的だと思いました。ユーモラスな雰囲気もあり,予想以上に楽しめる曲でした。ずっと落ち着いた雰囲気だったキタエンコさんの指揮も曲の最後だけは,ビシっと締めており,目が覚めるようでした。

続いて,フックスさんの独奏で,モーツァルトのクラリネットが演奏されました。オーケストラはさらりと始まったのですが,クラリネットの方は,とても自由に演奏していました。音色は基本的に暖かく,軽い感じなのですが,その表情がびっくりするほど多彩でした。同じ音型が出てきても,それを同じニュアンス・音色で演奏することがないような感じでした。しかも,かなり沢山のアドリブ的な装飾音符を入れていました。この曲は,モーツァルト最晩年のシミジミした曲というのが普通の捉えかただと思うのですが,その予想を裏切ってやろうという意図があったのかもしれません。緩叙楽章の2楽章にまで入っていたのは,ちょっと饒舌すぎるかなという気はしましたが,これまで聴いたことのない面白い演奏でした。第2楽章など,弱音で入る時の音色がものすごく奇麗なのも印象的でした。この2楽章では,最初の主題が再現してくる時にさらに弱く弱く吹いており非常にデリケートでした。OEKの方もこれにピタリとあわせてppで演奏するあたりは,何か別世界に連れて行かれたような感じでした。こういう自在な感じの演奏は,楽しげな雰囲気のある3楽章のロンドにいちばん相応しかったかもしれません。ただ,フックスさんが,演奏時にかなり激しく楽器を回すのが,少々気になりました。音の方もフラフラと宙を舞っているように聞えました。また,じっと見ていると自分がトンボになった気分で首も目も回ってしまいそうでした。

拍手に応え,アンコールが2曲も演奏されました。最初の曲は,通常はフルートで演奏されるドビュッシーのパンの笛でした。非常に美しい高音から始まりびっくりしました。2曲目のバッハの曲もアレンジものだと思います。フックスさんは,クラリネットという楽器の持つあらゆる可能性を追求しているのかな,と思わせるアンコールの2曲でした。

なお,フックスさんの奥様は金沢出身だそうです。日本的な感覚でいうと年に1,2回は奥さんの実家に帰って来ることがありそうなので,これからもOEKと共演したり客演奏者として登場する機会もありそうです。プレトークの中で,昨年10月にウィーン・フィルと金沢公演を行ったサイモン・ラトルと石川県立音楽堂の素晴らしさについて話したことがある,と語っていましたが,ベルリン・フィル金沢公演も夢ではないかもしれません。考えてみると,昨年以来,ベルリン・フィル関係者が続々と金沢に来ています。並べてみると,ラトル,パユ,安永徹,そして今回のフックスさんということになります(ダウスさんも入れても良いかもしれませんが)。これらの方が全部揃うのがベルリン・フィルだとしたらベルリン・フィルというオーケストラは物凄いスター集団と言えそうです。

後半は,恐らく金沢初演と思われるショスタコーヴィチの交響曲第9番でした。この日の楽器の配置は,前半後半とも,第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける対向配置でしたが,20世紀の曲については珍しいことかもしれません。そのことと関係があるかどうかわかりませんが,古典的な雰囲気に溢れた第1楽章でした。OEKの十八番であるプロコフィエフの古典交響曲と似た雰囲気がうまく出ていました。落ち着いたテンポでしっかりと演奏されており,音量のバランスもとても良かったと思います。この楽章では,ピッコロやトロンボーンのソロが目立ちますが,それぞれよく通る音で演奏されていたにも関わらず,全体のバランスを壊すことがないのが見事でした。それにしても,トロンボーンや小太鼓がよくコントロールされたバランスで入って来る行進曲風の雰囲気には,実に気持ちが良いものがあります。

第2楽章は,早めのテンポでさらりと演奏されており,あまり怖い雰囲気はありませんでした。やはり,曲全体を古典的な雰囲気でまとめていたのだと思います。冒頭のクラリネットや弱音器をつけた弦楽器の響きもよくコントロールされていました。

第3楽章になると,管楽器が派手に活躍し始め,非常に色彩的になってきました。とても気持ち良さそうに吹いていたトランペットソロが特に印象に残りました。

第4楽章は,3本のトロンボーンのまとまりの良さが素晴らしいと思いました。それに続く,ファゴットソロは,恐らく,この曲最大の聴き所かつ難所だと思います。柳浦さんのソロは,この長い長いソロを見事に演奏していました。高音がかなり出てくるので,聴いている方も思わず息を詰めて聴いてしまいました。演奏終了後は,もちろん最初に祝福を受けていました(ちなみにその次はエキストラのピッコロの方でした)。

第5楽章の最初も(というか4楽章と続いているのですが)ファゴットソロで始まります。ショスタコーヴィチの曲をこれだけ少ない弦で弾くことは珍しいと思うのですが,この楽章ではそのメリットが出ていたと思います。フォルテの部分では,非常に頑張って弾いているなという気がしたのですが,楽章最後のテンポがぐっと上がっていく部分のスピード感は少ない弦の小回りの良さが出ていました。そのせいで,とてもシャレた雰囲気になっていました。

というわけで,小編成のOEKの良さを生かして,この曲の古典的な雰囲気を表現した良い演奏だったと思います。キタエンコさんは,美しい白髪で,紳士的な雰囲気があり,「ロシア=荒々しい」というイメージ(私が思っているだけですが)とは違った方でした。指揮の姿勢も背筋がピンと延びた感じで無駄な動作がありませんでした。決め所だけで大きな動作をするので,演奏のメリハリも効いていたと思います。地味な印象のある方ですが,これから巨匠指揮者と呼ばれるようになってくるのではないかと思います(いや,すでに巨匠かもしれません)。

アンコールには,音楽玉手箱という聴いたことがあるようでない曲が演奏されました。この曲は,ハープ,フルート,ピッコロ,クラリネット,グロッケンシュピールだけで演奏される非常に可愛らしい雰囲気の曲でした。この演奏には,前半に登場したフックスさんも参加しており,再度盛大な拍手を受けていました。(会場の掲示ではルイーゼ・ファレンク作曲となっていましたが,これはリャードフ作曲のような気がします。詳しい方があれば教えて下さい(注)。実は,この曲のCDを1枚持っているのですが,あの有名な「超絶の音痴フローレンス・フォスター・ジェンキス」の歌ったものなので良く曲がわからないのです)。この曲は,オーケストラ全員が出ない曲だったので,絶対もう1曲あるな,と思っていたらやはりもう1曲演奏されました(ロシアの指揮者は,2曲アンコールを演奏するという法則(?)を聞いたこともあります。昨年のフェドセーエフもそうでした)。今度は,ハチャトゥリアンのダイナミックなワルツでした。いかにも「ソ連」というイメージのあるワルツでしたが,こういうわかりやすいワルツは非常に会場が盛り上がります。OEKの弦は重くないので,洗練された感じに聞えました。

というわけで,演奏後の会場の雰囲気もはずんでおり,とても良い演奏会になりました。OEKの団員の方々もとても嬉しそうな雰囲気でした。3日連続の演奏旅行の最後が金沢ということで,解放感と充実感があったのかもしれません。

(注)その後,「アンコール曲」についての正しい情報をメールで教えていただきました。やはり,音楽玉手箱の方は,リャードフ作曲でした。オリジナルはピアノ曲のようですね。バッハの曲の方は,無伴奏ヴァイオリン・ソナタをクラリネット・ソロ用に編曲したものだったようです。(2002/2/25)

Review by六兼屋さん
ご無沙汰しております。演奏会の感想、なかなか書き込む余裕のない日々を過ごしておりますが、それでも、定期にはでかけております(10月のブランデンブルグの時には演奏会があるのをを忘れてしまって、、、不戦敗)。11月のピヒラー、1月の安永両氏の指揮でよい演奏を聴かせてくれたOEKですが、オケの充実度から言えば本日の第115回定期が今のところピークであるように思います。誰より、指揮、リーダーシップの技量が熟練の職人にもたとえられるキタエンコ氏において勝っていると思われました。

今日の演奏会が一番よかった(これは響きの美しさやリハーサルの充実が実演に結果としてでている、というような意味でですが)もう一つの原因は、ステージ上の反響盤の位置が、今日のが今までで一番よいと思われることにもよります。ようやくこのホールの音を聞かせてもらったような気がしました。

チャイコフスキーは嫌いではありませんが、第4組曲は何度聞いても私には共感できない作品です。ダウスさんのソロはなかなかエンターテイメントなものでしたね。でも、木管の方々は、私の我田引水になるかも知れませんが、曲に共感して吹くことが出来なかったんではないかなあ。

クラリネット協奏曲の演奏が始まって、先ず思ったのは、キタエンコの協奏曲での技量が素晴らしいという事です。hs様のお言葉を借りれば「しみじみ系」のオーケストラ伴奏ではなかったと思いますが、充実した演奏でした(演奏後のカーテンコールでは、キタエンコ氏にも何度か出てきて欲しいと思いました)。ソロについても、私はまあ肯定的です。OEK定期ではライスターが(今日のフックスと同じように体をくねらせて)演奏していますが、その時の音楽も「枯淡の境地」というよりは千両役者の芸に例えられる演奏、N響の定期で聴いたザビーネ・マイヤーも演出のある演奏姿勢でした。一筋縄ではいかない、というのが、何度か聴いてみてのこの曲の印象です。

ショスタコーヴィッチの演奏では、指揮者とオケとが作曲者への共感を完全に共有したように見えました。ファゴットの柳浦さんを前にも誉めましたが、今日にとっておけばよかった! あの4〜5楽章のソロを吹く事を、栄誉、ファゴット奏者冥利に尽きると思いながら演奏なさっておられたのではないでしょうか。

この曲でのキタエンコ氏の指揮ぶりは地味で、アンコールの時とは随分違いました。でも、不格好に両脚を外股に開いて両腕を伸ばしたときに、全楽員が前のめりになってクライマックスに突進する様(N響とのショスタコ5番でもそうだった)は、こちらをも思わず前のめりにさせる力強さがありました。

私にとっては、何度でもOEKに来て欲しい方です。(2002/2/25)

Review by広太家さん
掲示板がなかなか賑やかですね。

待ちに待ったショスタコ9番は、野暮ったさのかけらもなく洗練されたものであり、私にとっては初めて出会う新鮮で、爽やかな感覚がありました。タコ9のLPを買ったのが30年前であり、毎日のようにF4が日本海にスクランブル発進していた当時ですから、ショスタコの曲は大好きでも、その時代背景にどこかアレルギーを抱いていたのかもしれません。来沢したモスクワ放送交響楽団のタコ5にも違和感を感じていました。

しかし今回のOEKのタコ9は、丹念に作り上げられ、しかも構えすぎていない、そして十分なバランスの響きは、ポワンと良い音色で鳴っており、おかげで、アレルギーの元となっていた長年のアカをすっきり流すことができました。キタエンコ氏の指揮は、ぜひまた観たいです。

以前、ライスター氏の時は、テクニックをまじかで観たくて最前列に座りましたが、これは失敗でした。いつもそうですが、本当にうまい人は難曲を簡単そうに演奏してしまうので、気がついたら曲が終わってしまっている。大体、私のようなド素人にわかるわけないかm(_ _)m

フックス氏の演奏は、装飾をちりばめた色彩感があり、面白かった。3階席はいつも以上に高いクオリティでしたが、これも反響盤の位置が関係しているんでしょうか?アンコールのシランクスは息が管を抜けてゆく音まで迫ってきた。これはフックス氏の遊び心?帰ってマクサンス・ラリューのフルートで聞き比べました。(2002/2/25)

Review byかきもとさん
久しぶりに生活に時間的な余裕が作れるようになったので、コンサートレポートを書いてみました。今回も幼児二人を託児コーナーに預けての鑑賞となりました。子供たちは子供たちなりに楽しませていただいたようですが、大人たちも演奏そのものの素晴らしさと音楽会全体のしゃれた雰囲気を十分堪能できた2時間半でした。

今回の演奏会は、OEKが新音楽堂に本拠地を構えるようになってからの、おそらくベストの演奏会ではないでしょうか。指揮者のキタエンコ氏の音楽性ゆたかな指揮姿や、多彩な音色でモーツアルトの比較的単純な曲想の協奏曲の中にびっしりと表現の幅を詰め込んだクラリネット独奏、そしていつも思うのですが、OEK団員の方々の(特に管楽器セクション)ハイレベルな演奏など、本当に聴きどころの豊富な演奏会だったと思います。

チャイコフスキーの組曲は初めて聴く曲でしたが、第3および第4楽章が聴きどころでした。静謐で敬虔な祈りの音楽であるアヴェ・ヴェルム・コルプスをチャイコフスキー一流のオーケストレーションで、華麗にそれでいて過度に派手にはならず夢のように美しく聞かせてくれました。高域の弦楽器が主旋律を歌い、それが柔らかな木管群に受け渡されてゆくところがいかにもチャイコフスキーらしいところでした。第4楽章の原曲となっているのはピアノ独奏のための可愛らしい変奏曲ですが、管弦楽版になると俄然雄弁なスケールに変貌していました。しかし、各変奏ごとに原曲の曲想を失わないような楽器がクローズアップされており、編曲の見事さとそれをうまく引き出しているOEKの洒落た演奏は素晴らしいものでした。特にマイケル・ダウス氏のソロにゆだねられた、終曲近くの協奏曲的な雰囲気の変奏は聴き応えがありました。

2曲目のモーツアルトのクラリネット協奏曲では、フックスさんのクラリネットのテクニックの見事さもさることながら、音色や微妙な息づかいの見事さにすっかり夢中になってしまいました。以前のカール・ライスターさんの時も思ったのですが、クラリネット奏者が思い入れたっぷりに極を演奏するときは、体の重心を上げ下げしながら実によく動くものですね。いくら見事な演奏でもCDではそんなところまでは分かりませんが、曲想とともに体をくねらせながらの実演に接していると、つい知らず知らずのうちに音楽の流れに引き込まれてしまい、こちらも体が動いてしまいます。モーツアルトのクラリネット協奏曲については、よく晴れ上がっているのだけれど、ふともの寂しさがよぎるような晩秋の空の色に例えられることが多いのですが、第2楽章のしみじみとした演奏と息づかいからは本当にそんな雰囲気が伝わってきました。両端の第1、第3楽章では、すっきりとセンスの良いOEKの弦楽器群の演奏に乗って、実に気持ちよさそうに演奏されていました。特に第3楽章では千変万化の音色と早いパッセージでのテクニックの冴えも素晴らしく、フィナーレへ向かっても盛り上がりも見事というほかありませんでした。

フックスさんはとてもサービス精神の旺盛な方なのか、協奏曲の後にソロの曲を2曲もアンコール演奏してくれましたが、ドビュッシーもバッハも原曲はクラリネットのための曲ではないのに、あそこまで見事に演奏されるとクラリネットがオリジナルのようにも思えてきて不思議な気がしました。

クラリネットの美しい音色と技の冴えを堪能して幸福な気分に浸った後は、休憩を挟んでOEKのメンバーの力量をたっぷりと楽しむことができたショスタコーヴィッチでした。モーツアルトからいきなりショスタコーヴィッチですから、聞く方も相当覚悟していなければ、テンションは上がりっぱなしになるところなのですが、この日の演奏は一言で言うと、実によく交通整理が行き届いたわかりやすく透明度の高い演奏でした。そのせいか、モーツアルトでリラックスした雰囲気のまま引き続いて楽しむことができました。ショスタコーヴィッチだからと言って決して力任せの号砲にはならない、小編成ならではのセンスの良さがキラッと光る演奏でした。特に、既に皆さんの感想にも書かれているように、ファゴットやクラリネットのソロが浮かび上がる部分が実に上手く洒落た味わいがあり、ゲストメンバーによって増強された金管楽器群の炸裂も力強く輝かしいものでした。また、最近古巣に戻られたのか、よくお見かけするオケーリー氏の小気味よいパーカッションも見ていて(聴いていて?)実に爽快でした。このショスタコーヴィッチは、プロコフィエフの古典交響曲と同様にOEKの得意なレパートリーとして今後も取り上げてほしい曲ですね。

OEKとしてはフル編成のショスタコーヴィッチで最高に盛り上がったあとは、会場の万雷の拍手に応えて2曲のアンコールです。最初の曲はどこかで聴いたような知らない曲のような、不思議なしかしとても愛らしい曲でした。フックスさんが再び登場してクラリネットの席に着席して、クラリネット3名、フルート3名(うちお一人はピッコロ?)、ハープそして鉄琴(正式には何と言うのでしょうか?)の計8人だけによるこぢんまりした曲でしたが、ショスタコーヴィッチで上昇した体温をすーっと下げてくれるような不思議な曲でした。そして最後は予想どおり、キタエンコ氏お得意のロシアものでハチャトリアンのワルツでした。ワルツとは言ってもそこはロシアものですから、結構重厚な絢爛豪華な曲でしたが、コンサートの最後を飾るのにふさわしい曲が選ばれたのでしょう。この曲なども今後OEKのアンコールピース集に入れて欲しい曲ですね。前半のクラリネットソロによるアンコール曲2曲と合わせると、アンコールだけでも4曲も演奏してくれたことになり、これはOEKの演奏会史上でも記録的なことかもしれません(本当かどうかは自信はありません)。

今回のコンサートは、何度も言うようですが、本当に中身の詰まった、聴きどころの多いコンサートだったと思います。終演後託児コーナーに子供を迎えに行くと、長時間の親不在にもかかわらず、ご機嫌で遊んでいてくれたようでほっとしました。5歳になる姉の方が、結構けなげに1歳半の妹の面倒を見てくれたようで、演奏会の後もこちらの方で少しジーンと来ました。アンサンブル金沢の託児コーナーのお世話をしてくださる係の方々には、この場をお借りして改めてお礼を申し上げたいと思います。(2002/2/26)