オーケストラ・アンサンブル金沢,石川県ジュニア・オーケストラ,エンジェルコーラス ジョイント・コンサート
2002/08/24 石川県立音楽堂コンサートホール

1)モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
2)モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調,K.216〜第1,3楽章
3)ラヴェル/ツィガーヌ
4)木村弓(榊原栄編曲)/いつも何度でも
5)榊原栄編曲/カントリー・ロード
6)渡辺俊幸/NHK大河ドラマ「利家とまつ」の音楽〜利家のテーマ,永久の愛,まつのテーマ
7)渡辺俊幸/NHK大河ドラマ「利家とまつ」の音楽〜メインテーマ颯流
8)チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」〜トレパック,金平糖の踊り,花のワルツ
9)(アンコール)中村八大(編曲者不明)/明日があるさ(ジョージア編)
●演奏
森口真司/Oens金沢(1-3,6-9),石川県ジュニアO(4,5,7-9),OEKエンジェルコーラス(4,5,9)
松井直(コンサートマスター)
Review by管理人hs
毎年恒例になっているオーケストラ・アンサンブル金沢と関連団体とのジョイント・コンサートに出かけてきました。これまで,このジョイント・コンサートでは,OEKと石川県ジュニアオーケストラ,OEK合唱団が共演していましたが,今年は,OEK合唱団に代わり,OEKエンジェルコーラスが登場しました。それに加え,10年近くの歴史を重ねてきた石川県ジュニアオーケストラの「卒業生」がソリストとして登場しました。今回の演奏会は,県内の若い人がOEKと共演する演奏会,という位置づけの演奏会になっていました。いずれにしても,子供たちとプロ・オーケストラが共演する姿を見るのは,微笑ましい点があると同時に感動的です。雑多なプログラムでしたが,とても気持ちの良い演奏会でした。

まず,最初はOEKの演奏で「フィガロの結婚」序曲が,軽快でキレ味よく演奏されました。文字どおり演奏会の序曲になっていました。

続いて,石川県ジュニアオーケストラ出身のソリストとOEKとが共演するステージになりました。このジュニア・オーケストラは1994年に発足したアマチュア・オーケストラで,小学校5年生から高校2年生までが参加しています。今回登場した2人はいずれもヴァイオリン奏者で,現在ともに桐朋学園大学の1年生です。

最初に登場した松沼さんは,白いドレスで登場しました。松沼さんのモーツァルトは,全体的にツメが甘い気はしたのですが,地味目の音色で,しっとりとまとまった演奏になっていました。もっとのびのび演奏しても良いのかなという気はしましたが,オーケストラとの共演という大舞台にもかかわらず,大変落ち着いて演奏されていたと思いました。

坂口さんの演奏は,とても立派でした。ツィガーヌという曲は,プロのオーケストラの奏者でも弾くのが難しい曲ですが,それをしっかりと弾きこなしていました。こういう技巧を持った人が数年前まで,石川県ジュニア・オーケストラに入っていたというのは結構すごいことだと思います。OEKの団員の人も,演奏後は大きな拍手をしていました。「数年前までは子供だったのに...」という身内の成長を見守るような感じで聴いていたのではないかと思います。この曲はどの部分も演奏するのが大変なのですが,特に前半のソロの部分の緊張感と迫力が見事でした。坂口さんはオレンジ色のドレスで演奏されていましたが,演奏後の表情もとても明るく,この大舞台を堪能していたような感じでした。

今回登場したお2人は,OEKとの共演という貴重な機会を得たのですが,これを機会に活躍の場が広がっていくことでしょう。

後半は,タイトルどおりの「ジョイントコンサート」になりました。最初は,ジュニアオーケストラとエンジェルコーラスの共演となりました。一昨年まではOEK合唱団がこの演奏会に登場していたのですが,今年からはOEK専属の児童合唱団であるエンジェルコーラスの活躍の場が広がり,今回から登場することになったようです。ジュニアオーケストラの方は,学校の制服のような感じの衣装,エンジェルコーラスの方は,前回の朝日親子コンサートの時と同様のバンダナ+白シャツという衣装でした。いろいろな背の高さの子供たちが,次々とステージに登場するのを見ているだけで,微笑ましくなりました。

演奏前は,子供たちだけで大丈夫なのだろうか?という不安はあったのですが,始まると大変スムーズな演奏でした。エンジェルコーラスの方は,ほとんどハモリのない曲でしたが,とても発音がきれいで,純粋な感じが良く出ていました。オーケストラの方は,お盆の14〜16日に合宿をしただけあって,こちらも実力を十分発揮していました。

次は再度,OEKのステージになり,おなじみの「利家とまつ」の音楽から数曲演奏されました。テーマ音楽以外を生で聴くのは4月以来のことですが,渡辺俊幸さんの曲は,いずれも気持ちの良いものです。「永久の愛」では,コンサートマスターの松井さんによる甘いけれども節度のある見事なソロを聞くことができました。「利家のテーマ」の最後の部分は,トランペットの高音が続き,奏者の方は大変だったのではないかと思いました。CDで聴いていてもあまり気付かないのですが,生で聴くとこの辺の迫力が非常によく伝わってきます。

最後のステージは,いよいよ,OEKとジュニアオーケストラとの共演です。合計120名ぐらいの奏者がステージ上に乗り,ほとんどスペースがないくらいになっていました。プロの奏者と子供たちとが互い違いに座っていたので,子供たちの方は何となく緊張した顔をしていましたが,OEKの方々は嬉しそうな感じでした(この日は,かなりエキストラが多かったようですが)。「利家とまつ」のメインテーマは,今年になって数回聞きましたが,その中でもいちばん重々しい演奏になっていました。サブタイトルにある「颯流」というイメージとはちょっと違ったかもしれませんが,その分,非常に聞き応えがありました。ジュニアオーケストラは,トランペットは非常に沢山いるけれども,ファゴットは1人だったりと,楽器のバランスが通常のオーケストラと違うのですが,そのせいか,いつも聞きなれないメロディが強調されている感じになっていました。この辺も面白かったですね。最後にテンポアップする部分の打楽器の細かい動きも楽しめました。

演奏会の最後のチャイコフスキーの「くるみ割り人形」の音楽も,きっちりと合わせるためか,遅めのテンポになっていました。トレパックではもっと荒れ狂って欲しい気はしましたが,「花のワルツ」などは,次から次へとメロディが湧き出してくるようなとても雰囲気のある演奏になっていました。「花のワルツ」のハープソロは,数年前石川県音楽登竜門演奏会に登場した吉村智子さんが担当されていましたが,OEKの存在自体,地元の音楽界とのつながりが強くなってきているような気がしました。ジュニアオーケストラを含めた県内のアマチュアオーケストラの頂点の部分にOEKがいるような形になりつつあると思います。

今回の指揮の森口さんは,暖かい雰囲気のある方で,「花のワルツ」の時などは,とても気持ち良さそうに指揮されていました。曲間のトークもリラックスした感じだったので,こういう子供が参加する演奏会には相応しい方だと思いました。

最後に,エンジェルコーラスが再度入ってきて(ということはステージ上は合計200人ぐらい!),「明日があるさ」が演奏されました。「よければ皆さんご一緒に」ということで,会場のお客さんも一緒に歌うことになったのですが,この曲は歌詞が長いので,全部歌うのは大変だったかもしれません。ただ,非常に快適なテンポにアレンジされていたので,手拍子をするには最適でした(ジュニアオーケストラの打楽器奏者を何となく眺めていたのですが,鉄アレイ(そんなわけないですが)みたいな形のものを最初から最後まで振っていました。結構筋肉が付きそうです)。

というわけで,多彩なプログラムが並び,聴く方からすると,気軽に楽しむことのできる演奏会になりました。朝日親子コンサートに続き,今回も家族で聞きに行ったのですが,エンジェルコーラスの関係者としては,来年もこういう感じで気軽に聞きに行けたらいいな,と思うような演奏会でした。(2002/08/24)