石川県立音楽堂開館1周年記念音楽堂ウィーク ファミリーコンサート 2002/09/16 石川県立音楽堂コンサートホール 第1部:ブラス・フォー・キッズ 1)ミッキーマウス・マーチ 2)デンツァ/フニクリフニクラ狂詩曲 3)楽器紹介 4)アニメメドレー(さんぽ,いつも何度でも,めざせポケモンマスター) 5)指揮者コーナー(指揮者コーナー) 6)日本の情景:秋(虫の声,まっかな秋,村まつり,もみじ) 9)ヘルナンデス/エル・クンバンチェロ 第2部:小林美恵ジョイ・オブ・クラシック 10)クライスラー/前奏とアレグロ 11)クライスラー/美しきロスマリン 12)クライスラー/愛の悲しみ 13)クライスラー/愛の喜び 14)リドー/フェルナンド 15)バッハ,J.S./無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番〜シャコンヌ 16)サラサーテ/ツィゴイネル・ワイゼン ●演奏 小野照三/金沢吹奏楽研究会(1-9) 小林美恵(Vn*10-16),田島睦子(Pf*10-13,16),広瀬美和(語り*14)
前半は,「ブラス・フォー・キッズ」というタイトルが付いていました。挨拶がわりにミッキーマウスマーチが演奏された後,司会の女性が登場し,演奏会が始まりました。この金沢吹奏楽研究会は,金沢でいちばん歴史のある市民吹奏楽団です。木管楽器,金管楽器,打楽器がフルに揃っており,パレードなどをするブラスバンドというよりは,コンサートで演奏会を行なうウィンド・オーケストラといった重量感とバランスの良さがありました。吹奏楽をきちんと聴くのは初めてのようなものなのですが,音楽堂のような立派なホールで聞くととても心地よく響きます。擦って音を出す弦楽器の響きとは違い,管楽器の音色は,どんなに音量が大きくなっても,基本的には音色がとても柔らかいのではないかと思います。もちろん,この団体の音色がとてもよくコントロールされていたのもその理由だと思います。 今回は,子供向けの演奏会ということで,通常の演奏に加え,楽器紹介コーナー,指揮者コーナーなどが入っていました。女性司会者が進行役だったのですが(名前を聞き漏らしていました),非常に手馴れていました。親しみやすくてしかもスムーズな進行ぶりは本当に見事でした。 プログラムは,子供の知っている曲が中心で,アニメメドレー,秋の唱歌メドレー,フニクリフニクラなどが演奏されました。指揮者コーナーでは,会場から2人の小学生が飛び入りでステージに登りました。演奏されたのは,スーパーでおなじみの「おさかな天国」でした。 このステージでは,最後に演奏された「エル・クンバンチェロ」が見事でした。全曲が強烈なラテンのリズムの上にノリに乗って演奏されていました。ソロを取る楽器が立ち上がるのも,見ていて楽しめました。指揮者の小野さんは,いかにもベテランらしい指揮ぶりで,落ち着きを感じさせながらも,ぐっと熱く聞かせてくれました。鋭いトランペットの音などを聞くと,やはり,ブラスとラテンの相性は良いなぁと痛感しました。 後半はヴァイオリンの小林美恵さんによる小品集でした。小林さんと同世代には,竹澤恭子,渡辺玲子,諏訪内晶子,五嶋みどりなど国際的に活躍している女流ヴァイオリニストが大勢いますので,この方の印象は,ちょっと薄いのですが,実力的には全く遜色はありません。今回の演奏でも,その実力を堪能できました。 最初は,クライスラーの曲が4曲演奏されました。非常に伸びやかな演奏で,曲の美しさが真っ直ぐに伝わってきました。今回は1階席に座っていたので,小林さんの伸びやかでしなやかな右腕の動きがよく見えました。この腕の動きがそのまま音になっているように感じました。 続いて,リドーという作曲家の「フェルナンド」という珍しい曲が演奏されました。この曲は,小林さんが子供の頃に大好きだった「花の好きな牛」という絵本を題材にした曲で,ナレーションが入ります。発想としては,「ピーターとおおかみ」「ゾウのババール」などと同じですが,演奏がヴァイオリン1本というのが変わっているところです。原作は,スペインのお話です。花を眺めているのが大好きなやさしい牛が,勘違いで闘牛場に連れて行かれてしまうが,無事元の牧場に戻ることができる,という優しいムードの漂うお話です。闘牛場に連れて行かれた後,もっとひどい目に会う話なのかな,と思ったたのですが,さすがに子供向けということで丸く収まっていました。曲は,ストラヴィンスキーの「兵士の物語」などと近い雰囲気がありました。もしかしたら,小林さんが,自分のレパートリーとして各地で演奏している曲なのかもしれません。ナレーションは,ソプラノ歌手の広瀬美和さんが担当されました。この方は,石川県音楽登竜門コンサートに登場し,昨年の「カルメン」ではミカエラを歌った方です。本職のナレーターではないので,ちょっと初々しい感じでしたが,ドラマティックでなかなか楽しめるナレーションになっていました。セリフ部分を金沢弁に変えていたのは,誰のアイデアなのかわかりませんが,曲が進むうちにだんだんとお客さんに受けてきました。我が家の子供は,クライスラーの時はあまり集中して聞いていなかったのですが(もったいない),この曲の時はじっと聴いていました。絵本の読み聞かせに,ヴァイオリンが付いたような曲だったので,小学校低学年ぐらいの子供にとっては,とても喜んで聞ける曲だと思いました。 続いて,バッハのシャコンヌが演奏されました。この曲もとても伸びやかに演奏されており,曲が進むにつれて異次元空間に入り込んでいくような感覚を覚えました。特に中間部の長調になって,ちょっと淡い感じになるようなところの雰囲気が良いな,と思いました。 最後にツィゴイネル・ワイゼンが演奏されました。この曲は,このところ月1回のペースで生演奏を聞いているのですが,7月に聞いた五嶋みどりさんの演奏に劣らないほどよくこなれた演奏だったと思います(小ホールで聴いた分,みどりさんの方により迫力を感じましたが)。曲の各部分の弾き分けがとても見事でした。中間部では,強いヴィブラートによってジプシー風を強調していましたが,それでも全体としては,さらりとした感触があるのは小林さんの特徴だと思います。 というわけで,非常に見事なヴァイオリン独奏を楽しむことができました。ただし,我が家の子供は後半は少々退屈していました。後半は,「子供向け」というよりは,「小さい子供のいる親向け」の演奏会という感じだったかもしれません。室内楽の演奏会の場合,「交流ホール」あたりでやった方が子供たちもリラックスして聞けるのではないかと思います。それと,コンサートホールの1階は平面に近いので,小学校低学年ぐらい子供が座席に座った場合,前にある椅子の陰になって,ステージが全然見えないことがあります。その点でも,親子コンサートは,交流ホールで行なう方が良いかなと感じました。 (追記)後半のピアノ伴奏は,広瀬さん同様,石川県音楽登竜門コンサートに登場したことのある田島睦子さんでした。このコンサートの出身者が,いろいろな形で,音楽堂での演奏会に登場することはとても良いことだと思いました。(2002/09/16)
ファミりーコンサートと聞いて、うちの子は歌のお兄さん、お姉さんが登場するあのファミリーコンサートと勘違いしていたようでしたが、前半の吹奏楽のステージは結構楽しめたようです。音楽堂で聞くと、ブラスの響きが本当に柔らかくて、フワッとした音場に包まれている感じがしていいですね。また機会があったら是非聴いてみたくなりました。 後半のヴァイオリンはたった500円で聴かせてもらっていいの?といいたくなるほど密度の高い演奏でした。小林美恵さんの実演を聴くのは初めてですが、実にいい音です。演奏する姿も絵になっていました。中でもOEKゆかりの広瀬美和さんの語りを交えた『フェルディナンド(花の好きな牛)』は最高でした。 今回は2階の中央、オルガンをほぼ正面にみるあたりで聴いたので、いつもにも増して豊かな音響効果を楽しむことができたのかも知れません。 (2002/09/17) 音楽堂ウィーク中の音楽堂の風景
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