午後6時の音楽会Vol.7:金沢メンネルコール
2002/10/19 石川県立音楽堂交流ホール

1)バーバーショップ小品集(Aura Lee/Honey〜Little 'Lize Medley/Sweet, sweet roses of moon/The Story of the roses(Heart of my heart)
2)山田耕筰(林雄一郎編曲)/野薔薇(詩:三木露風)
3)山田耕筰(林雄一郎編曲)/薔薇の花に心をこめて(詩:大木淳夫)
4)山田耕筰(林雄一郎編曲)/みぞれに寄する愛の歌(詩:大木淳夫)
5)見岳章(林雄一郎編曲)/川の流れのように(詞:秋元康)
6)(アンコール)Good Night, Ladies
7)(アンコール)Shine on me
8)(アンコール)乾杯の歌
●演奏
中川達也/金沢メンネルコール,大野由加(Pf*2-5)
Review by管理人hs
この日は,夕方に空き時間が出来たので,石川県立音楽堂の「午後6時の音楽会」に出かけてきました。この演奏会には以前から注目していたのですが,出かけるのは今回が始めてです。この演奏会は,毎月1回土曜日の夕方6時から石川県立音楽堂交流ホールで行なっている入場無料の演奏会です。演奏時間は45分ほどで,毎回,県内のアマチュア演奏家が登場します。今回は金沢メンネルコールによる男声合唱の演奏会でした。

土曜日の夕方というのは,一週間の中でもいちばんリラックスできる時間帯です。今回の演奏会も,そういう雰囲気にぴったりのものでした。まず,会場全体にそういう雰囲気が漂っていました。交流ホールは,床をいろいろな形に移動できるのですが,演奏会を行なう場合は,床が階段状になり,その上に腰掛けて聞くことができるようになります。背もたれがないので,ちょっと腰が疲れてきますが,その気になれば,靴を脱いで足を延ばしてでも聞けそうなカジュアルな雰囲気があります(45分ぐらいの長さならば疲れませんが,腰の悪い人はパイプ椅子の席に座った方が良いかもしれません)。

6時になって金沢メンネルコールの方々が登場すると,まず挨拶がわりにプログラムに載っていない曲が1曲歌われました(曲名ははっきりわかりませんでしたが,「乾杯の歌」というドイツ語の歌とのことです。)。金沢メンネルコールは,金沢を中心に活躍している30年近くの歴史のある男声合唱団です。ズシリとした声が響いたとたん,会場の空気が締まったように感じたのは,男声ア・カペラの魅力でしょう。その後,進行役の団員の方が前に進み出て演奏会が始まりました。

最初のコーナーは,バーバーショップ小品集でした。バーバーショップという呼称は,今回初めて知ったのですが,アメリカ音楽の一ジャンルで,ア・カペラ男声4部合唱によるオールドファッションで親しみやすい愛唱曲集といった感じでした。最初に歌われた「オーラ・リー」はエルヴィス・プレスリーのヒット曲「ラヴ・ミー・テンダー」のオリジナル曲ですが,その他のエルヴィスの曲自体,このバーバーショップの流れを組むところがあるような気がしました。たまたま,この日は車の中でエルヴィス・プレスリーのCDを聞いていたのですが,エルヴィスの曲のバックには男声合唱が入っていることがかなり多いのです。

というわけで,この男声4部合唱というのは,アメリカ人の心のふるさと的なジャンルのように感じました。途中,合唱団の中から4人だけが前に出てきて,クワルテットになる部分がありました。こういう動きのあるステージも楽しめます。しっかりとした低音も良かったですが,時々,超高音が出てくるのも,ゾクゾクとさせてくれました。

後半は,山田耕筰の作品集でした。ここからは,ピアノの伴奏も加わりました。山田耕筰の曲は,ソロで歌われることが多いので,意外に合唱で聞く機会は少ないかもしれません。今回歌われた曲は,初めて聞く曲ばかりでしたが,どれも気持ちの良いものでした。進行役の方が「歌っている方はとても気持ちが良い」とおっしゃられていましたが,とてもじっくりと歌いこまれており,その気分が伝わってきました。この曲でも高音が出てくる部分があり,前半のバーバーショップと共通する雰囲気もありました。選曲の点でも「Rose」「薔薇」と韻を踏むように選曲されているのが面白いと思いました。

最後に美空ひばりの「川の流れのように」が歌われました。この曲の時は,ステージ後方にあった液晶画面に演奏者の映像がアップになって映し出されていました。カメラが何台もあったようで,あれこれ画面が切り替って面白かったのですが,その分演奏の方に集中できなかったかもしれません(バーバーショップと山田耕筰の時はイメージを伝える静止画像が映っていましたが,それぐらいの方が良かったかもしれません)。

この日の演奏会は,6時45分で終わる予定だったのですが,「時間が余りました」ということで,予定外(多分)のアンコールが沢山飛び出してきました。まず,バーバーショップの曲がさらに2曲演奏されました。それでも時間があったので,最初に歌われたのとは別の日本語の「乾杯の歌」が歌われました。これはまさしく実用的な「乾杯の歌」で最後に,「カンパーイ」と杯を持ち上げる動作も入っていました。こういう,アドリブ的なやりとりもあってアットホームな雰囲気のある演奏会になりました。客席との距離が近いのも良いですね。

45分という長さは,普通の演奏会の前半ぐらいの長さということで,「もう少し聞いてみたいな」と思わせる長さでもあります。金沢メンネルコールは,11月2日に定期演奏会を行なうのですが,まさに「この演奏会の続きは定期演奏会でどうぞ」という感じでした。演奏中,交流ホールの上の方の窓から通りがかりの人が「何をやっているのだろう?」という感じで何人か覗き込んでいましたが,音楽堂のPRにもなると思いました。

この「午後6時の音楽会」に初めて参加してきたのですが,いろいろな点で面白い演奏会だと思いました。気軽に出かけられる演奏会なので,今後も暇なときには出かけてみようかと思っています。家族で出かけて,その後夕食というのも良いと思います。(2002/10/19)