ルドヴィート・カンタ写真展:ザ・ハーモニー・オブ・ライト
03/1/7〜1/12 石川県立音楽堂交流ホール

Gallery Concert I, II
03/1/8, 1/10 石川県立音楽堂交流ホール

Review by管理人hs 七尾の住人さんの感想
■オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の首席チェロ奏者ルドヴィート・カンタさんの写真展が行なわれましたので出かけてきました。場所が石川県立音楽堂交流ホールだったこともあり,通常の展覧会に加え,ミニ・コンサートも2回行なわれました。

■左の会場の風景の写真にあるように,会場全体は,非常に美しい演出がされていました。カンタさんの写真自体もそうですが,展覧会全体の演出もプロ顔負けの本格的なものでした。配布資料として縮小カラー印刷された全出品作品リストやカンタさんの「お礼の言葉」などが付いていたのも嬉しかったです。いろいろな人の協力のもとに作られた展覧会だということがよくわかりました。

■会場に入ると,正面のディスプレイにスライド式に写真が大きく映し出されていました。この辺の見せ方もとても巧いと思いました(もちろんBGMにはカンタさんのチェロのCDが流れていました)。会場は全体的に照明を暗くし,写真にだけスポット・ライトが当たっていました。セピア色の写真が多かったのですが,そのせいもあって,会場全体にはとても暖かい雰囲気がありました。

■カンタさんの写真は,写したそのままをプリントするのではなく,いろいろな加工されている感じでした。技術的なことは全くわからないのですが,その編集作業自体が一つの技術=芸術になっているように思いました。その作業を加えることによって,実際の風景や人物を撮影した写真が抽象絵画のような雰囲気に変わっているのが大変面白く感じました。

■会場には「音楽と写真に共通するもの」というカンタさんの文章が書いてありました。(1)フレイミング,(2)ライン,(3)コントラスト,(4)レピテーションの4点を挙げていらっしゃいましたが,これも非常に興味深い内容でした。音楽を聞く時にも大変に参考になる言葉だと思いました。

■この4つのコンセプトを切り口として,改めて出品作品を見てみると,納得できるものばかりでした。モノクロームの写真は非常に明暗のコントラストがはっきりします。風景の写真の多くでは,木とか瓦とか「繰り返しの美しさ」を感じさせてくれるものが沢山ありました。その他,カンタさんのお子さんの写真も印象に残りました。千里浜が外国の景色のように写っていました。岩城さんのポートレートもユーモラスかつ迫力のある写真でした。こういう写真は団員でないと撮影できないのではないかと思います。

■会場にはピアノも置いてありました。1月8日と10日にはギャラリーコンサートがこの場所で行なわれたらしいのですが,大変良い雰囲気のあるリサイタルになったのではないかと思います(私は残念ながら行けなかったのですが)。(2003/1/11)

※今回,展覧会の雰囲気を伝えるために会場の様子をディジタル・カメラで撮影してきました。
↑写真展のポスター
↑会場の風景↓
↓特設ステージ

Review by七尾の住人さん

今日は、カンタさんの写真展開催に合わせたギャラリー・コンサートへ行ってきました。

コンサートが始まる前に時間があったのでカンタさんの写真も十分見ることができました。カンタさんの写真はご自身のコダーイの無伴奏チェロソナタのCDのジャケットにも使われていますので、それを見られた方も多いんじゃないかと思います。会場には海外の写真雑誌(?)があり、カンタさんの写真が載っていましたし、実際自分の目で見て写真のうまさを十分感じることができました。

自分も一時期写真に凝り、カメラ雑誌を買っていろいろと知識を仕入れたことがあります。しかし、あまり専門的な知識がないので、今回展示されていた写真はフィルムから印画紙にそのまま焼き付けたものではなく、焼き付ける時にいろいろな処理を行っているものもあるような気がしました。でも、最初からそうなるように撮影されたのかもしれません。撮影機材からアマチュアでは一般的な35mmフィルムではないことが分かりますので、そこまでの詳しいことにはお手上げです。現像もご自分でなされるとのことですから、できあがった写真にはカンタさんの感性が染み込んだものと言ってもいいと思います。

音楽でもそうですが、写真も雑誌やパンフレットといった何か別のものを通して見るよりかは、本当の実際の写真を見た方がその作品が味わえると思います。微妙な陰影などは、やはり本物でないとしっかりと表れていないような気がします。説得力という言い方は少し変ですが、どの写真も心に訴えるものがあり、ほんの瞬間の静止した映像のはずなのに、見ていて時間の流れが感じられたのは不思議でした。ナイアガラの滝の写真など滝の雄大さがよく伝わり、巨大な滝が目の前にあり音までも聞こえてくるような感じでした。そういう不思議な感覚を味わえて、とても面白く写真を楽しむことができました。

さて、写真の話が長くなりましたがコンサートの方へ話を移します。
ヨー・ヨー・マさんとOEKの共演もありましたが、これだけじっくりとチェロの演奏を聴いたのは初めてのことでした。体にも心にも染みわたるものがあり、チェロの表現の豊かさに驚くばかりでした。いろいろな曲が聴けたわけですが、ショパンのノクターン作品9−2と20番を聴いた時には、これは元々チェロの曲なんじゃないかと疑うほどぴったりとくるいい演奏でした(蛇足ですが、最初プログラムでこの2曲を見た時は、ピアノ伴奏の人へのはなむけでピアノだけで演奏するものと勘違いしてしまいました)。ジャズを思わせるようなノリのいい曲もあり、ハンガリー舞曲あり、アンコールはサン・サンサースの「白鳥」と、「チャールダッシュ」。よくよく考えたら無料のコンサートだったわけで、そんなことが信じられないほどの充実して楽しいコンサートとなりました。(2003/1/11)