キッズコンサート
2003/02/22 石川県立音楽堂交流ホール

ロジャース(星出尚志編曲)/ドレミの歌
松浦欣也編曲/もうひとつの動物カーニバル
楽器紹介
ロシア民謡(岩井直溥)/黒い瞳
指揮者体験コーナー
真島俊夫編曲/あの日聞いた歌(ふるさと,赤とんぼ,春の小川,花)
オッフェンバック(ヒバート編曲)/喜歌劇「天国と地獄」序曲
(アンコール)デンツァ/フニクリ・フニクラ
●演奏
寄島昭生指揮金沢吹奏楽研究会
金子万知子(司会)
Review by管理人hs
演奏会のポスターです。
今日は,交流ホールで行なわれた金沢吹奏楽研究会による入場無料の「キッズコンサート」に家族で行ってきました。昨年末には,オーケストラ・アンサンブル金沢の江原千絵さんのヴァイオリン独奏による子供向けの演奏会が行われたのですが,今回は,その時とはまた一味違う,吹奏楽の演奏ということで,我が家の子供も気楽に楽しんでいたようです。

金沢吹奏楽研究会の演奏は昨年の9月にも一度聞いたことがあります。その時も子供向けの演奏会で,「楽器紹介コーナー」「指揮者コーナー」など構成の点でも似たところがありました。司会者も同じ方でした。ただし,今回行われた交流ホールの方が,子供向けの演奏会には相応しいと思いました。ステージに近いので,客席の子供たちの反応も演奏者にもよく伝わっていたと思います。それとステージ上のモニターが大変有効に使われていました。交流ホールでは,カメラで撮影されている生の映像をそのまま大モニターに映すことができるのですが,その機能をフルに発揮していたので,楽器紹介などは大変分かりやすいものになっていました。レクチャーコンサートなどには最適の場所といえそうです。

演奏会はまず,「ドレミの歌」で始まりました。ブラスの音が近い距離からダイレクトに飛び込んできて,とても気持ちの良い演奏でした。演奏者の方は大部分の人が半袖を着ていましたが,その「爽やかさ」が演奏からも伝わって来ました。

その後は司会の方が登場して演奏会は進んで行きました。前回もそう思ったのですが,司会の金子さんの進行は見事でした。パンフレットには,「東京学芸大学音楽科卒」と書いてあったのですが,音楽についての知識に裏打ちされた司会は,プロのアナウンサーの司会よりも良いと思いました。この演奏会がリラックスした雰囲気になったのは,この方の功績が大きかったと思います。

この日は,2月22日だったのですが...司会の金子さんの話によると「今日はニャン,ニャン,ニャンの猫の日」とのことでした(初耳でした)。それにちなんで「もうひとつの動物カーニバル」という曲が演奏されました。最初はサン=サーンスの「動物の謝肉祭」のような感じで始まったのですが,2曲目からは「森のこやぎ」になったり「メリーさんの羊」になったり,本家とはちょっと違った動物が続々と登場します。最後に再度,サン=サーンスのフィナーレに戻って終わります。吹奏楽の各楽器が活躍するのですが,この演奏で良かったのは,モニターに移った動物の映像です。この演奏用に作られたのか,既存のものなのかはよくわかりませんが,曲に登場する動物が変わるたびに「ライオン」「こやぎ」「羊」...と映像が変わって行くのを子供たちはとても楽しんでいました。演奏の後,「どんな動物が出てきた?」という質問に対して,子供たちはとても素直に反応していました。それだけ分かりやすい演奏であり,映像でした。

この曲で出てきた各楽器の演奏が伏線となって,次に楽器紹介がされました。先にも書いた通り,交流ホールのカメラを使った楽器紹介は大変分かりやすいものでした。ステージの後方の楽器も大変よくわかりました。楽器紹介では,各楽器・楽器グループごとに親しみやすい曲の一節が演奏されたのですが,どれも親しみやすいものでした。サザエさんのエンディングの音楽をトランペットのアンサンブルで演奏したりとヒネリも効いていました。

次の「黒い瞳」は,あっと驚く宴会芸のような編曲・演奏でした。「ボルガの舟歌」の「エイコーラー」の掛け声に始まった後,会場の通路から金管楽器奏者が数人乱入して来ました。途中,洗面器,スリッパなど変な打楽器・鳴り物があちこちから入り,ついには立ち上がって演奏しているトランペット奏者に紙ふぶきが盛大に降りかけられました。次々と出てくる演奏者のパフォーマンスは,子供たち以上に大人の方が楽しんでいたようでした。

続く指揮者体験コーナーもお馴染みのコーナーです。今回は3人の子供が登場し,「とっとこハム太郎」のテーマ曲を演奏しました。それぞれに苦労していたようですが,モニターに映し出された子供たちの緊張した表情を見るのは(子供たちには悪かったのですが),とても楽しめました。

日本の親しみやすい唱歌などがメドレーが演奏された後,最後にフレンチ・カンカンでお馴染みの「天国と地獄」序曲が演奏されました。子供たちは,最初の部分では,ざわざわと聞いていましたが,コーダの有名な部分になると,手拍子をしたりして楽しんでいました。通常はヴァイオリンで演奏される部分はクラリネットなどで演奏されていましたが,違和感なく楽しめました。落ち着いたテンポのビシっとした雰囲気も良かったですが,管楽器だけの柔らかい雰囲気はフランスの曲には相応しいと思いました。

演奏会後,交流ホールを上からのぞき込んだ光景です。
アンコールでは,「フニクリ・フニクラ」が演奏されました。この曲は,前回の演奏会でも聞いた曲ですが,途中で全員が立ち上がるのを見るのは壮観です。この楽団の十八番でしょうか?ノリの良い曲なので,子供たちも「鬼のパンツだ」と楽しんでいました。

交流ホールでは,今回のような入場無料〜500円の演奏会を毎月のように開催していますが,これはとても良いことだと思います。交流ホールの上方の窓から「何をやっているのだろう?」とのぞき込んでいる人たちがいましたが(交流ホールの上方のガラス窓はついつい除き込みたくなります。),こういう活動がいちばん音楽の裾野を広げるのに役立つのではないかと思います。ダイレクトに宣伝するより,「下の方から何か聞こえてくるぞ?」という雰囲気がいつもある方が,多くの人の耳を引き付けるのではないかと思いました。(2003/02/22)