石川県ジュニアオーケストラ第9回定期演奏会
2003/03/23 石川県立音楽堂コンサートホール

ヴェルディ/歌劇「アイーダ」〜凱旋の行進
チャイコフスキー/組曲「くるみ割り人形」op.71a
ブラームス/交響曲第1番ハ短調op.68
(アンコール)渡辺俊幸/NHK大河ドラマ「利家とまつ」の音楽〜颯流
●演奏
鈴木織衛指揮石川県ジュニアオーケストラ
Review by管理人hs
音楽堂に掲示してあった手作りポスター。これもジュニアならではです。
今日は,半分保護者気分で,石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会に出かけてきました。石川県ジュニアオーケストラというのは,県内の小・中・高校生によるオーケストラで,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーや県内の音楽関係者が指導に当たっています。年度ごとに団員を募集していますので,年度末の定期演奏会は1年間の成果を示す発表の場ということになります。

今回のプログラムは,ブラームスの交響曲第1番を中心とした本格的な内容でした。本当に演奏できるのだろうか?と演奏前は,ちょっと心配したりもしたのですが(時にハラハラする場面もありましたが),とても爽やかに聞かせてくれました。いちばん素晴らしいと思ったのは,テンポが全然ダレていなかったことです。どの曲も勢いのある演奏でした。

ホールに入り,ステージ上を見ると,椅子がズラリと並んでおり,まず,「おっ」と思いました。指導されている先生も加わっていましたが,全部で80人ぐらいはいたのではないかと思います。この日は,OEKの定期公演同様,客席を明るくしたままの演奏会でしたが,パンフレットを読みながら聞くには,とても都合が良いことがわかりました。

最初の「アイーダ」の行進曲は,全員の顔見世的な演奏だったと思います。ジュニアオーケストラは楽器ごとに人数の偏りがあり,トランペット,フルート,クラリネットなどは10人ずつぐらいいたと思います。その中でもトランペットは多かったのですが,「アイーダ」では,そのトランペット軍団を有効利用していました。オルガンのバルコニーに5人ほど並べ,中間部の有名なメロディを演奏していました。この部分は結構手に汗を握る感じでしたが,全体的には壮大に決まっていました。高いところで演奏した子供たちはさぞかし気持ちよかったことと思います。

続く「くるみ割り人形」組曲では,オーケストラ全体の響きに加え,個人技を楽しむことができました。チェレスタ,フルート,クラリネットなど1つの楽器で演奏される箇所が幾つかあるのですが,どれもきちんと演奏されていました。いちばん驚いたのは「花のワルツ」のハープのカデンツァの部分です。きっと大人のエキストラの人が演奏するのだろう,と思っていたのですが,これもジュニアが担当していました。さすがにとってもゆっくりになっていましたが,その一つ一つの音に感動しました。「花のワルツ」では,ホルンの重奏も良かったし,OEK fanの掲示板でおなじみのわかなさんもしっかり第1クラリネットを演奏していました(今回のプログラムは顔写真入りだったので,分ってしまいました)。

後半はブラームスの交響曲第1番が演奏されました。ジュニアが演奏するには,体力的にも大変な曲だと思うのですが,見事に聞かせてくれました。この日の演奏は,どの曲もアマチュア向けに手加減したようなテンポではなく,通常のテンポで演奏されていましたが,ブラームスは特に速いテンポでした。若い人が演奏するのに相応しい,爽快なブラームスになっていました。

聞かせどころも決まっていました。第1楽章の冒頭の堂々とした感じ,第4楽章のホルンの重奏,第1主題の弦楽合奏,クライマックスの盛り上がり...どれも素晴らしいものでした。第2楽章の後半に出てくる,ジュニアのコンサートマスターによるヴァイオリン・ソロもとてもきれいでした。こちらの方は,もう少しまわりの楽器の音量を抑えてくれると,もっと浮き上がって聞こえてくるのにとも思ったのですが,ひたむきな美しさが良く出ていたと思います。

アンコールでは,今では少し懐かしくなってしまった「利家とまつ」のテーマが演奏されました。この曲は,コンパクトにまとまっている上,打楽器が大活躍して盛り上がるのでアンコールには最適です。この曲が残ったことがNHK大河ドラマのいちばん大きな遺産だったのではないかと思いました。

ジュニアオーケストラだけの演奏会を聞くのは初めてのことだったのですが,毎年一度,自分の子供の成長を見守るように,彼らの演奏会に出かけるのも良いものです。2003年度には兄弟分(女の子が多いので「姉妹分」か?)のエンジェルコーラスとの合同演奏会もあるようなので(11月29日の「午後6時の演奏会」),また聞きに行ってみたいと思っています。 (2003/03/23)