エンジェルコーラスわくわくコンサート
2003/04/05 石川県立音楽堂交流ホール
1)美鈴こゆき作詞・作曲/エール!!
2)新美徳英作・編曲(谷川雁作詞)/ふたりで
3)三善晃(谷川俊太郎,三善晃作詞)/風のとおりみち〜栗の実,かっぱ,りすの子,仔ぎつねの歌
4)源田俊一郎編曲/ふるさとの四季〜春の小川,おぼろづきよ,鯉のぼり,茶摘み,ふるさと
5)プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」〜「ああ,私のいとしいお父様」
6)ドニゼッティ/歌劇「リタ」〜「この家とホテルは栄え」
7)青島広志(井上ひさし作詞)/11ぴきのネコ〜にゃあごろソング,ノラネコ暮らしの是非についての問答歌,オーケストラソング,こんど生まれてくるときはのレクイエム,十一ぴきのネコが旅に出た,雲においつけ,魚見えたか節,動物づくしによる体をきたえようソング,ノラネコ天国ソング
8)(アンコール)美鈴こゆき作詞・作曲/エール!!
●演奏
篠原陽子指揮オーケストラ・アンサンブル金沢エンジェル・コーラス(1-3,7,8)
広瀬美和(ソプラノ*4-6,8),清水史津(ピアノ)
Review by管理人hs
↑この演奏会の案内
↑交流ホールはとても賑わっていました。さすがに親子連れが多かったようです。
今日は私の子供が参加しているオーケストラ・アンサンブル(OEK)金沢エンジェルコーラスの「わくわくコンサート」に出かけてきました。この児童合唱団の1年間の成果の発表であるとともに,新年度のメンバーを勧誘をするための演奏会でした。約1時間の無料のコンサートでしたが,いろいろと変化のある内容で楽しめました。演奏会は3つの部分から成っていました。

最初の2曲は,どちらも親しみやすい曲でした。特に最初の「エール」という曲は,とてもシンプルな曲で新しい愛唱歌になりそうな良い曲だと思いました。続く「風のとおりみち」からの4曲は昨年夏の朝日サマーコンサートでOEKと一緒に歌った曲です。今回はオリジナルのピアノ伴奏で歌いましたが,鳴り物が入っており,楽しく聞くことができました。

エンジェル・コーラスは,1998年のウィーン少年合唱団金沢公演で共演するためにオーデションで選ばれた児童からなる合唱団が発展したものです。昨年からはオーデションなしで誰でも参加できる児童合唱団になりました。我が家の子供は,その「後発組」で,本格的な声を出すことはできません。そのため,高学年と低学年で声質が違うところがあります。その辺のバラツキがちょっと気になるところはありますが,素朴な低学年の声もわらべ歌的で可愛らしいものです。

この曲の後,一度,エンジェル・コーラスは引っ込んで,ソプラノの広瀬美和さんのステージになりました。やはり,エンジェル・コーラスだけで1時間のステージを構成するのは難しいと思いますので,変化を付けるためにも,このステージを作ったことは良かったと思いました。広瀬さんは,歌のお姉さん的な雰囲気がありますので,子供たちの歌声との相性もぴったりでした。日本のメロディのメドレーの清潔感も良かったし,イタリア・オペラのアリア2曲も明るく軽やかな表情で歌われており,雰囲気を盛り上げてくれました。

最後に歌われた「11ぴきのネコ」は,この日のいちばんの聞きものでした。合唱だけではなく,ソロが入ったり,振り付けが入ったりと,とてもよく出来た曲でした。井上ひさしさんの歌詞は,ゴロ合わせ的なものが多かったのですが,青島広志さんの曲の方もパロディの精神に溢れていました。ベートーヴェンの第9の替え歌みたいなのが出て来たり,ソーラン節な雰囲気になったり,楽しませようという精神がいっぱいでした。

エンジェルコーラスの子供たちが,会場の後ろの方から「ニャア,ニャア」言いながら,ステージに上がってきた後,指揮者がストップというと第1曲が始まります。この曲では,所々でソロが出てくるのですが,先に書いた多様な声が,いろいろな猫の個性のように感じられて面白く感じられました(我が家の子供も一声歌っていました)。

続く,「ノラネコ暮らしの...問答歌」という曲は,その名のとおり低学年と高学年による掛け合いになっていました。低学年が可愛らしい声で歌うと,高学年がしっかりした声で「いつもハラペコ」と答えるパターンの繰り返しが,何ともいえない面白みを出していました。続く,オーケストラソングというのは,先ほど書いたとおり第9の替え歌でした。4人ぐらいの子供たちが「オー,フロインデ」とドイツ語で歌い始めたのですが,なかなか見事に歌っていました。その後の「...レクイエム」では,中学生ぐらいの団員が1人で見事なソロを聞かせてくれました。アルトぐらいの声質で,レクイエムに相応しい,はかなげな情感が伝わってきたのはすごいと思いました。

「十一ぴきのネコが旅に出た」という曲はどこかで聞いたことのある曲でした。中間部のメロディは,「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲のメロディにも似ていました。続く,「雲においつけ」という曲は楽しい輪唱です。子供たちが一定のリズムに乗って体を左右に動かしながら歌います。フーガのことを遁走曲と言ったりしますが,そのことを意識して「おいつけ」という歌詞の輪唱になっているのも洒落ていると思いました。同じメロディが延々と続いて最後まで追い付かないのは,明るいメロディだけれども悲しいような気分もあると思いました(余談:我が家の子供は丁度指揮者の影になる位置に立っていました。子供の話では,左右に揺れれば自分の姿が親の方からも見えるかな,と期待したらしいのですが...指揮の篠原先生も同じリズムで左右に揺れたので残念ながら見えなかったとのことでした。変なことを考えながら歌っているものです)。

その後の曲も,楽しい曲で,「大きな魚を捕まえるために体を鍛えよう」といった展開になります。この「11ぴきのネコ」というお話は,かつて演劇で見たことがあるのですが,最後の結末は覚えていませんでした。今回の歌を聞いても,よくわからなかったのですが,ハッピーエンドになったようでした。

最後に指揮者の篠原さんが「皆さん立ち上がってください」と言って,最初に歌った「エール!!」を会場にいる人全員で歌いました。確かに起立すると,気分が変わり,声がよく出るような気がします。大人の中にも歌ってみたい人が出てきたのではないかと思います。

昨年度のエンジェルコーラスは,新曲の初演,バレエ,オペラ,マーラーと超多忙でしたが,今年度はもう少し落ち着いた活動になるようです。OEKとの共演とは別に,今回のような「11ぴきのネコ」とか「風のとおりみち」のような児童合唱用の名曲もどんどん聞いてみたいものだと思いました。(2003/04/05)