金沢交響楽団第36回定期演奏会
2003/06/28 金沢市観光会館
1)ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
2)ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調,op.104
3)シベリウス/交響曲第2番ニ短調,op.43
4)(アンコール)マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
●演奏
大能正紀指揮金沢交響楽団,大澤明(チェロ*2)

Review by管理人hs
金沢にあるアマチュア・オーケストラ,金沢交響楽団の定期演奏会に出かけてきました。実は,20年以上前に一度,偶然このオーケストラの定期演奏会に行ったことがあるのですが,全く記憶に残っていませんので,定期演奏会を聞くのは今回が初めてのようなものです(昨年3月のアマチュア・オーケストラ・フェスティヴァルで1曲だけ演奏を聞いたことはありますが)。

今回出掛けたのは,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のチェロ奏者の大澤明さんが客演しドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏するということと,シベリウスの交響曲第2番という大曲を演奏するということが理由です。どちらもOEKの演奏会ではなかなか聞くことのできない曲です。OEKの編成には入っていないトロンボーン3本,チューバ1本を含むフル編成のオーケストラの充実した響きはとても気持ちの良いものでした。

最初の曲は,ヴェルディの歌劇「運命の力」序曲でした。この曲もOEKの演奏会では聞いたことのない曲です。冒頭のファンファーレは,金管楽器の音がきっちりと揃っており,聞き応えがありました。「とてもよく鳴っているな」と思いました。その後は,かなりじっくりとしたテンポで進みました。途中,イタリア・オペラらしい甘いメロディも次々出てきましたが,この辺ではちょっと粗が目立つかな,という気もしました。やはり,フル編成での力強い響きの部分が楽しめました。

続いて,大澤さんがソリストとして登場しました。ドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴くのは2年前にカンタさんとOEKの演奏で聞いて以来のことです。大澤さんは,「大澤親分」という雰囲気の方で(失礼しました),OEKの定期会員でなくても,一見(?)しただけで親しみを感じてしまうのではないかと思います。今回の演奏もワイルドな中に男の優しさを感じさせるような素晴らしい演奏でした。甘い音で酔わせるというよりは,1楽章の荒々しい入りの部分から3楽章のクライマックスまで一貫して強い気迫を感じさせてくれました。

全体のテンポは,かなり遅目でしたが,オーケストラの方はソリスティックな面でも楽しませてくれました。1楽章で出てくるホルンのソロとか,クラリネットなども素晴らしかったのですが,第3楽章後半でのコンサートマスターと独奏チェロとの丁々発止という感じのやりとりが特に印象に残りました。私はこの曲のこの部分がとても好きなのですが,音楽の流れにとてもよく乗っていたと思いました。

後半のシベリウスの交響曲第2番を聞くのは,オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団の演奏会以来のこととなります。この日の大能さんのテンポ設定は,どの曲も大変じっくりとしたものでしたが,このシベリウスも「もしもチェリビダッケがこの曲を指揮していたら?」と思わせるような長大な演奏でした。あまりにもじっくりと演奏していたので,少々野暮ったい印象を持ちましたが,その分,最後の楽章の最後で長調に転調する部分の感動が大きくなりました。長い長い冬の後に待ち焦がれていた春が訪れたような感じです。ティンパニの強打とか力強い金管楽器の響きが入ってくると,ぐっとスケール感が出てきました。全体に緊張感を持続させるのが難しいテンポだと思いましたが,各楽章の後半になると次第にそのテンポに飲み込まれてしまい,結構快感になったりもしました。

アンコールに応えて,指揮者の大能さんが言うところの「田舎の騎士道」が演奏されました。何の曲?と一瞬思ったのですが,始まってみると,お馴染みの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲でした。この演奏が始まる直前,ステージ上のトロンボーン奏者3人とチューバ奏者が素早く退場したので「何があるのだろう?」と思っているうちに,この人たちは2階の最前列に移動していました。「カヴァレリア・ルスティカーナ」は,弦楽合奏が主体ですが,中間部で田舎の教会のオルガンのような響きが出てきます。この部分を2階最前列の別働部隊が演奏するという趣向でした。この響きが大変柔らかく,よくまとまっていました。こういうアイデアを見るのは初めてでしたが,とても良い効果が出ていたと思いました。

というわけで,OEKの奏者がソリストとして加わった地元のアマチュア・オーケストラの演奏というのも良いものだな,と思いました。これからも期待したいと思います。(2003/06/29)