オーケストラ・アンサンブル金沢しらかわ公演
2003/11/09 しらかわホール(名古屋市)
1)藤家渓子/ギター協奏曲第1番
2)藤家渓子/ギター協奏曲第2番「恋すてふ」
3)ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
4)ムソルグスキー(ジュリアン・ユー編曲)/組曲「展覧会の絵」
5)(アンコール)ムソルグスキー(ジュリアン・ユー編曲)/組曲「展覧会の絵」の中の1曲
●演奏
岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
Review by 七尾の住人さん
昨日の日曜日、日帰りで名古屋まで行って来ました。
プログラムは、
 1.藤家渓子 ギター協奏曲第1番
 2.藤家渓子 ギター協奏曲第2番「恋すてふ」
   (15分休憩)
 3.ロドリーゴ アランフェス協奏曲
   (10分休憩)
 4.ムソルグスキー(ジュリアン・ユー編曲) 組曲「展覧会の絵」
で、1〜3までが、山下和仁さんのギターが入っています。

石川からわざわざ名古屋まで日帰りで出かけたのは、今回のこのプログラムが非常に魅力的だったからです。新型車輌のしらさぎが結構揺れが少なく快適だということが分かったおまけもつきましたが、ギターが好きな自分にとっては、絶対聴きたいプログラムだったわけです。

プレトークは岩城さんが出てこられましたが、きのっぴさんが書いておられるように喉の調子がいつも以上に悪いらしく「声変わりでして・・・」と言って少し話され、すぐに会場に来ていた藤家渓子さんにバトンタッチ(マイクタッチ?)され、藤家さんが自分の曲の話を含めプレトークをなされました。

さて、本番は、藤家さんの曲は金沢で演奏されていますが、まだ自分がOEKに興味を持たないときのことだったので、今回初めて耳にする事になりました。協奏曲と言っても、楽章がないか、あるいは続けて演奏されるかのどちらかで、第1番、第2番とも切れ目なしの一続きの曲でした。どちらも響きや弦楽器の変わった奏法、管楽器の出した音の音程を変えていくなど現代曲らしい所があるのですが、何と言ってもギターの音がとても魅力的に響いていました。いろいろと音色や音の表情を変えて、やわらかな時はこれ以上ないと言うくらい心に優しく響く音色でした。もちろん伴奏の岩城さん指揮のOEKも見事なもので、第150回定期公演で聴いたハイドンも生き生きしたものでしたが、今回も見事なくらいツボにはまる演奏でした。ハイドンやベートーヴェンといった本当の意味での古典はもちろんですが、現代曲でもOEKの実力の高さが堪能できるので、本当に嬉しく思いますし、また地元にこんなオケがあることをとても誇りに思います。

藤家さんの2曲が終わった所で、プログラムには印刷されていない休憩が入りました。ですから2部構成ではなく、3部構成のコンサートとなったわけですが、今回の曲の性格を考えるとこちらの方がいいと思われる休憩の入れ方でした。

休憩後、いよいよ待望のアランフェス協奏曲です。この曲は第2楽章の美しく悲しい旋律が有名です。他の人の演奏のCDを聴いた時から、ぜひこの曲をOEKの演奏で聴いてみたいと思っていたのですが、その夢がこの日に叶ったわけです。ということで、うれしくて有名な第2楽章に入る直前にすでに目がうるうるしてました。オーボエ(この時はオーボエ・ダモーレかな?)の水谷さんも大活躍で見事なものでした。山下さんのギターには、とても早いパッセージが現れたりしますが、早さに押しつぶされることなく音の粒もそろってますし音量も十分で、さすがだとうならせる演奏でした。もちろん早弾きできるという技術面だけでなく、第2楽章のギターの低音で旋律を歌わせる所は見事なもので、たった一つの楽器であそこまで表現できるのだとつくづく感心させられます。と言う事で、演奏が終わってから拍手が続き山下さんは何度かその拍手に答えていました。

そして、10分の休憩後、ジュリアン・ユー編曲の「展覧会の絵」となりました。この曲は今年の夏以降2度ほど金沢で演奏されていますが、私は今回が初めてとなります。有名なプロムナードがトランペットではなくヴィオラだと言う事しか前知識がなく、パーカッションが2名(だったと思います)にピアノ、チェレスタが加わり、あとは弦も管も1人ずつという小編成で演奏されるのは驚きでした。てっきりOEKの小編成用に書かれたと思っていましたので、小編成でもフルオーケストラで演奏されるものと思っていたわけです。ですが、これだけの人数となるとオーケストラというより室内楽といった感じでしょうか。ところが、音の方はさすがOEKだけあって全然こぢんまりとせず、豊かな響きでこの曲を奏でていました。プロムナードのメロディは有名なラヴェル編曲はトランペットが担当しますが、このOEKの編曲を聴くとむしろこちらの方がピッタリとはまっているような気がします。トランペットは華やかでいいのですが、昔カラヤンがBPOの入団テストで吹かせたというくらいトランペットには難しさがある所らしく、ヴィオラの方が優雅に響き展覧会の場にふさわしいような気がします。

しかし、この「展覧会の絵」はラヴェル編曲があまりにも有名で、どうしても聴き比べてしまうのが最初の演奏では避けられないですね。あの重厚な響きが頭にこびりついているものですから、1回目は物足りないような気がする所もあったりしました。このジュリアン・ユー編曲の「絵」は2回目、3回目と聴いていくうちにもっともっと楽しめるような気がします。ラヴェルのと聴き比べていなければ、という思いがあり、そういう後悔を感じたものの楽しめた事は間違いありません。ですからなおさら頭を真っ白にして聴いてみたいという思いが強いのです。この曲のCDが発売になるようですが、ぜひまた金沢で演奏して欲しいです。

アンコールは、この「絵」からどの部分か忘れましたが演奏されて、コンサートは終了しました。終わってから岩城さんと楽団員との懇親会が開かれていたのですが、帰りの列車の時間の事があったので最初のほう少しいて帰りました。地元石川以外の場所でOEKを聴くのも、いつもと違う雰囲気が楽しめておもしろいと思います。さすがに東京までは出張でもない限り聴きに行けませんが、名古屋や関西あたりは日帰りで行けるので、また機会があればOEKの追っかけをやってみたいと思います。 (2003/11/11)