アートホールクラシック2004
2004/03/19 金沢市アートホール

(第1部)
1)ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調op.24「春」
2)フォーレ/幻想曲op.79
3)ライネッケ/フルート協奏曲ニ長調op.283〜第1楽章,第3楽章
4)ヨゼフ・ホロヴィッツ/ソナチネ
(第2部)
5)ラフマニノフ/組曲第2番op.17〜第4楽章「タランテラ」
6)ミヨー/ピアノ・ヴァイオリンとクラリネットのための組曲op.157b
7)ユグー/「仮面舞踏会」の主題によるグランドコンチェルトファンタジー
8)ウェブスター/カルメンラプソディ
●演奏
中島早紀子(ヴァイオリン*1,6),國本明江(フルート*2,7),池田恵美(フルート*7),木下大祐(フルート*3,8),上田奈緒(クラリネット*4,6,8)
太田優美子(ピアノ*1,4,6),北林多香子(ピアノ*2,5,7),澤田加能子(ピアノ*3,8),本多春奈(ピアノ*5)


Review by みやっちさん

今回私は魅力的な小品で彩られたアートホールクラシックを2年ぶりに聴いてきました。このコンサートは石川県内の若手音楽家たちの登竜門である「フレッシュコンサート」オーディションに合格・出演し、その後も活躍を続ける音楽家たちが毎年3月に出演して行われる演奏会です。

最初の曲目は有名なベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」で、特に第2楽章のヴァイオリンの落ち着いた中低音から穏やかな春のほのぼのとした佇まいを感じさせるしみじみとした演奏でした。第4楽章も伸びやかな高音がよく響き渡り、おおらかな雰囲気がにじみ出ていました。この曲を生で聴いたのは初めてでしたが、全体的にまとまった優雅な気品が漂う演奏でした。

この曲は来月1日にOEK奏者トロイ・グーギンズさんのリサイタルでも演奏されますので、トロイさんのほのぼのとした人柄がにじみ出る「スプリング・ソナタ」を楽しみにしているOEKファンの方も多いことでしょう。

フォーレの「幻想曲」もとても有名な美しい曲で、前半のしっとりとした穏やかさと後半の軽やかで気分が浮き立つような雰囲気がフルートの音色から十分伝わってきました。

シューマン、リストらと親交をもったロマン派の作曲家ライネッケのフルート協奏曲では、とてもリズミカルなメロディーで、新鮮で伸びやかな響きが印象的でした。フルートの木下さんは先日の第3回北陸新人登竜門コンサート第2次審査では同じ曲で残念ながら合格しませんでしたが、この日は協奏曲らしい技巧的な面も駆使しながら、味わいのある心地よい演奏でした。全楽章で一度オーケストラをバックに聴いてみたいと感じさせる素晴らしい隠れた名曲です。

前半最後のヨゼフ・ホロヴィッツ(かの有名なピアニスト・ホロヴィッツではありません。)「ソナチネ」は、サクソフォーンのような高音からファゴットのような低音までクラリネットの幅広い音域が響き渡る魅力的な曲で、ジャズ風の軽快で楽しげな演奏でした。クラリネットの上田さんは第6回石川県新人登竜門コンサートでOEKと共演している方なのですが、後半にも2曲演奏されとても気持ちをこめた音色が印象的でした。

後半に入り、ラフマニノフの2台のピアノによる組曲では、力強いタッチによる重厚な響きの中に華麗なタランテラ舞曲を超絶技巧で引き立てたとても息の合った演奏でした。

続くミヨーの三重奏は本当に味わいのある情景豊かな演奏でした。特に第2楽章の中島さんのヴァイオリンからは懐かしさを感じさせる叙情的な音色が印象的で、しっとりとしたクラリネットと共にとても優雅な演奏でした。第4楽章ではヴァイオリンの滑らかな高音と落ち着きのある中低音が心地良く、全体的にフランスらしいしゃれた小気味よさと気品のよさを感じさせるバランスのいい演奏でした。

ユグーの曲は2本のフルートによる演奏で、ヴェルディの歌劇「仮面舞踏会」の名場面を主題に軽やかに、またしっとりと美しい音色で描き出し、フィナーレの息もつかせぬ超絶技巧の絶妙なコンビネーションは圧巻でした。

上田さんと木下さんが奏でる「カルメンラプソディ」では、クラリネットの深みのある音色とフルートの叙情豊かな響きが絡み合い、様々な情景を表情豊かに再現していくビゼーのカルメンの世界に引き込まれました。

この2人のソロも素晴らしかったし、お客さんの反応が遅いのかミヨーの曲を含め、ライネッケのフルート協奏曲と最後の「カルメンラプソディ」で拍手一番乗りしていました(笑)。

全体的にフルートやクラリネットといった木管楽器の魅力を伝える素敵な曲が散りばめられ、絶妙なハーモニーを身近に感じた室内楽で、とても心地よい演奏会でした。(2004/03/22)