第6回もりのみやこコンサート
2004/04/10 石川県立音楽堂コンサートホール
1)ベートーヴェン/「エグモント」序曲
2)ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調op.67「運命」
(以下順不同)
うたえバンバン,ビリーブ,気球に乗ってどこまでも,滝廉太郎/花(以上もりのみやこ少年少女合唱団)
サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」〜君が御声に心は開く(メゾ・ソプラノ:串田淑子)
蘇州夜曲,愛の讃歌,花(すべての人の心に花を)(以上,歌:李広宏)
山賊のギャロップ,夢路より,あわて床屋,乾杯(以上もりのみやこ合唱団)

●演奏
金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
もりのみやこ合唱団,もりのみやこ少年少女合唱団,
串田淑子(メゾ・ソプラノ),李広宏(歌)

Review by 広太家さん

エグモント」の冒頭から、厚みのある音色で迫り、オケに乱れもなく、これは名演奏を予感させる凄みを感じた。金聖響さんの美しく弧を描く指揮は、しなやかなにしなる指揮棒の隅々にまで凄みがあり、私は目が釘付けとなり恍惚感を味わいました。少し速めの「運命」は、終了までオケの緊張が途切れることなく感動の高みに達しました。金聖響さんの演奏は今回が初体験でしたが、皆さんが一様に高く評価されるように、私もこんな凄い指揮者がいたのかという驚きがありました。OEKのメンバーに愛されている指揮者なのだということが伝わってきます。今回使われた古楽器ティンパニーは借り物ではなく、OEKの自前だそうで、高価な楽器をそろえてしまうOEKの本気が伺えます。

就学前の子どもも入場するファミリー向けコンサートでCD録音するということで、開始前、司会者からは「小さなお子様がCDの録音に立ち会うというのは滅多にないことなので、音楽マナーを学ぶよい機会としてください。」とのお話と、演奏時間と拍手のタイミングについてのお知らせがありました。そのため、いつもの、もりのみやこコンサートとは違う緊張した空気に会場が包まれました。録音する40数分を、会場の子どもたちがおとなしくしていられるだろうか、というスリルが味わえるコンサートも、ちょっと面白かった。

途中、3歳未満児?で泣き出す子どももいましたが、予想されたことで、別録してあるとのことです。心配したオケの緊張の途切れもすぐに立ち直ったようです。ここで会場の子どもたちに対する誤解が生じてはならないので付け加えますと、もりのみやこコンサート会場の子どもは、いつも大変行儀が良く(家族が出演しているためか?意識が高い)、今回もこれだけ多くの子どもたちが入場している割には、静かだったので感心しました。こうした音楽マナーを学ぶ体験が、将来のOEKファンを育ててゆくという意味では、今回のような冒険も悪くなかったと思います。

前半のベートーベンで緊張し、後半の歌で笑えるという不思議体験コンサート。ど素人の合唱団がOEKと共演してしまえるという凄さ。金聖響さんの懐の深さ。合唱練習では関西弁まるだしでギャクをとばす金聖響さん。出会う人々を惹きつけるカリスマ性。次の世代を担う指揮者に熱くなる夢のような一週間でした。(2004/04/11)