ランチタイム・コンサート
オーケストラ・アンサンブル金沢
2004/05/27 石川県立音楽堂コンサートホール

1)モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
2)パッヘルベル/カノン
3)ヘンデル/水上の音楽〜アラ・ホーンパイプ
4)森山直太朗/さくら
5)アーレン/映画「オズの魔法使い」〜虹の彼方に
6)ポーランド民謡/クラリネット・ポルカ
7)ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調op.68「田園」〜第1楽章
8)(アンコール)シューベルト/軍隊行進曲
●演奏
ジャン=ルイ・フォレスティエ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
遠藤文江,木藤みき(クラリネット*6)
ジャン=ルイ・フォレスティエ,江原千絵(トーク)
Review by管理人hs

今日は,休日出勤の代休で仕事が休みになったので石川県立音楽堂で毎月行われているタンチタイム・コンサートに出掛けてきました。このコンサートでは,これまで室内楽など比較的小編成のプログラムが取り上げられてきましたが,今回は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)がフルメンバーで出演しました。これは,9月からの「新定期会員募集」と4〜5月の「ヨーロッパ公演応援ありがとう!」を兼ねての企画だったようです。入場料は,わずか500円でドリンク付きでしたので,気軽にOEKに接することのできる良い機会となりました。

それにしても,平日の昼にコンサートホールでクラシック音楽を聞くというのは何とも言えず,優雅なものです。この日はコンサートホールの1階席はほぼ満席,2階席も保半分ぐらいは埋まっていましたので,中高年者を中心に常連客も結構多いのではないかと思いました。

このコンサートは12:15〜13:00までの45分のコンパクトなものでしたが,その中に変化に富んだ7曲が盛り込まれていました。OEKの団員は普段着でステージに登場していましたので,聞く方もリラックスして楽しめました(リハーサル風景のようでもありましたが)。

最初に演奏されたのは,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲でした。OEKの編成に編成にぴったりの曲ですので,OEKをPRするための序曲としても最適です。爽快なテンポで一気に聞かせてくれました。

その後,指揮のフォレスティエさんと通訳を兼ねていた第2ヴァイオリンの江原さんのトークを挟みながら進められました。最初の曲はフル編成だったのですが,続く3曲は弦・管に分かれての演奏となりました。2曲目に演奏されたのは,弦楽器だけによるカノンでした。意外なことに,私自身,この曲を生で聞くは初めてのような気がします(記憶は定かではありませんが)。楽器編成はヴィオラ抜きという変わったものでした。通奏低音としてのチェロとコントラバスが同じ音型を延々と演奏する上に,3部に分かれたヴァイオリンが文字通りカノンを演奏します。この曲も比較的速いテンポでサラリと演奏されており,ムード音楽的な演奏とは一線を画した引き締まったものでした。

3曲目のヘンデルでは,弦楽器奏者が引っ込み,代わりに管楽器奏者たちが入ってきました。木管−トランペット−ホルンという順で楽しげなメロディが演奏され,これもまた爽やかな空気の感じられる演奏となっていました。

4曲目は,再度弦楽合奏になりましたが,ここで初めてクラシック音楽以外の曲が取り上げられました。「さくら」は昨年大ヒットした曲ですが,こういう形でアレンジされても全然違和感がないところを見ると,これからもスタンダードとして残って行く曲といえそうです。オリジナルのタイトルは「さくら(独唱)」ですが,弦楽合奏だと「さくら(重奏)」という感じになります。重奏で響きが厚くなる辺りと曲の盛り上がりとがよくマッチしており,清々しい感動がありました。

続く「虹の彼方に」では,打楽器奏者が増え,この日演奏された曲の中では,いちばんポップスに近いアレンジになっていました。恐らく,ワーナー・ミュージック・ジャパンから発売されている「極上のクラッシック:TV&シネマBEST」に収録されているOEKの演奏による「虹の彼方に」と同じく榊原栄さんのアレンジだと思います。途中からトランペットがソリストのように活躍していました。

次の「クラリネット・ポルカ」では,OEKの2人のクラリネット奏者が独奏者としてステージ前方に登場しました。この曲は,聞けば誰でも知っている軽快な曲です。お昼に聞くには最適です(ビールなど飲みながら聞けるともっと良い?)。遠藤さんと木藤さんのクラリネットは,仲の良い友人が冗談を言いながらじゃれ合っているような演奏で,大変楽しいものでした。ちなみにこのお二人ですが,江原さんのお話によると7月にビクターからCDを発売されるとのことです。この日の演奏を聞いて,どういうCDなのか楽しみになりました。

プログラム最後はベートーヴェンの田園交響曲の第1楽章でした。やはり,”トリ”はベートーヴェンということでしょうか。この日は,いつもと違い,2階サイドのバルコニー席で聞いていたのですが,演奏者とお客さんの両方を見ながら,この曲をボーッと聞いていると最初に書いたように「優雅な時間が過ぎて行くなぁ」と感じました。

田園交響曲の演奏後,「13:00までもう少し時間があるな」と思って拍手をしているとやはりアンコールがありました。これもお馴染みの軍隊行進曲でした。定期公演のアンコールでも時々演奏される曲ですが,この日の演奏はとてもキビキビとしたものでした。

今回のプログラムは,中学生向けの音楽鑑賞教室等のプログラムと共通するものがあるような気もしましたが,弦楽器だけの曲,管楽器だけの曲,クラシック以外の曲などがバランス良く並べられており,誰もが飽きずに楽しむことができました。演奏後,チケット・ボックスの前を通りかかると,大勢の人が並んでいましたので,OEKを初めて聞いた人が「この演奏会にも行ってみよう,あの演奏会にも行ってみよう」と関心を示していたのかもしれません。豪華版のランチタイム・コンサートは好評だったようです。

OEKヨーロッパ公演写真展(at 石川県立音楽堂入口付近)
音楽堂入口付近で,2004年春に行われたOEKヨーロッパ公演の写真展が行われていました。通りかかりの人が皆,眺めていました。 今回の公演の演奏者と演奏曲目のリストです。アンコールの曲名まで書いてあります。 全公演の写真があったようです。上の写真は有名なウィーンのムジークフェライン・ザールでのOEKの公演の写真です。形としては音楽堂に似ているようですが,文字通り”黄金のホール”です 今回のコンサートのポスターです。やはり「フルメンバーで登場」というのは宣伝効果があったようです。
(2004/05/27)