オーケストラ・アンサンブル金沢 和泉公演2004
2004/06/06 和泉シティプラザ弥生の風ホール

1)モーツァルト/ディヴェルティメントニ長調K.136
2)ハイドン/チェロ協奏曲第2番ニ長調Hob.Z b-2
3)ベートーベン/交響曲第7番イ長調op.92
4)(アンコール)グルック/ミュゼット
●演奏
岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢,ルドヴィート・カンタ(チェロ*2)

Review byねこさん

前日の大阪センチュリー交響楽団との合同公演に引き続いて大阪で行われたOEK単独の公演に出かけてきました。この日はモーツアルト、ハイドン、ベートーベンというおなじみのプログラムです。つい昨日大編成の演奏を聴いたばかりのせいか、今日はとりわけOEKのピアノ、ピアニシモの音色の美しさに心を打たれました。

よく「弱音をきれいに演奏できるオーケストラは上手い」といいます。OEKはまさにそういうオケであることをつくづく感じました。モーツアルトの1楽章でテーマが短調に変わった部分でのニュアンスの何ともいえない美しい色合い。とろけるような心地よさです。

ハイドンのチェロ協奏曲ではまずカンタさんの右手の美しさに目を奪われました。無駄な力が全然入っていない柔らかな弓の握り方、そして手首の返しのなめらかさ。そこから出てくるチェロの音色は力強い中にも絹のような美しさがあって本当に素晴らしいチェリストです。

2楽章ではカンタさんのチェロが慈しむように奏でる旋律を真綿でくるむように包み込むオーケストラの響きのやさしさに感動。3楽章は楽しげな3拍子で、仲間と過ごす楽しいひとときという雰囲気ですが、気心の知れたオーケストラとの演奏はまさにこれにぴったりです。この協奏曲はハイドンが勤めたエステルハージ楽団の名チェリストのために書かれたものだそうですが、名チェリストと小さいけれど優秀なオーケストラの組み合わせ、ということは共通していて、書かれた当時の演奏もきっとこんな感じだったのではないかと思ったことでした。

休憩をはさんでベートーベン。この曲はまさにOEKの本領発揮という感じでした。私の好きな2楽章は1楽章に続いてほとんどアタッカで始められ、え?と思うくらい速いテンポだったので最初はちょっとびっくり。でもビオラ、チェロ、バイオリンと受け継がれる最初のテーマは弱音で奏されながらえもいわれぬ美しさで、またもとろけるような気分を味わいました。中間部前半は「何だか第9の3楽章と雰囲気が共通しているなぁ」と思いながら過ぎていき、後半のフーガのまた美しかったこと。でも本当にびっくりしたのはそのあとの盛り上がりで、これがわずか40名のメンバーで奏される音かと信じられないくらいの力強いフォルテを聴かせてくれました。

このピアニシモの美しさとそこからのクレシェンド、そして力強いフォルテというのは3、4楽章でも同じように感じられ、これができるのがこのオーケストラの力だなということをあらためて感じました。4楽章の最後の部分ではティンパニが本当に思いっきり叩いているように見えたのですが、あれだけの人数の弦楽器がそれに全然負けていないのはさすがです。

アンコールではグルックの「ミュゼット」が演奏されました。テーマが繰り返される部分では岩城さんは棒をほとんど動かさず、オーケストラはこれ以上ないくらいの最弱音で演奏する…思わず引き込まれて聴いてしまいます。とても遊びごごろにあふれたすてきなアンコールでした。

昨日今日と続けてOEKの違った姿を見せてもらった幸せな2日間。あらためてこのオーケストラの魅力・実力を実感して、また聴きに行きたいと思ったことでした。(2004/06/07)