オーケストラ・アンサンブル金沢 大阪公演
2004/06/29 いずみホール(大阪市)
1)ブリテン/イギリス民謡による組曲「過ぎ去りし時...」op.90
2)ナッセン/ヴァイオリン協奏曲op.30
3)武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウィンド
4)ラヴェル/マ・メール・ロア
●演奏
オリヴァー・ナッセン指揮オーケストラ・アンサンンブル金沢(コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング)
Review by ねこさん  

いずみホールでの大阪公演に行ってきました。

数日前の新聞に「当日券あります」と広告が出ていたので「チケットはあまり売れていないのだろうか」と心配していたのですが、行ってみるとそうでもなくていずみホールの客席は8割がた埋まっていました。ナッセンさんはほんとに大きな方でしたね。パッと見たときの第一印象は「熊!」と思ってしまいました。でも作っていかれる音楽はとても神経の行き届いた繊細なイメージです。

ブリテンでは2曲目の穏やかなメロディでの弦の美しさがまず印象に残りました。また3曲目での太鼓、踊りの行列が近づいてまた遠ざかっていく感じがよく出ていて素晴らしかったと思います。コンサートマスターのヤングさんですが、2月に金沢でバッハを聴かせてもらったときと全然違う印象だったので驚きました。切っ先鋭い刀を思わせるような緊張感をたたえたソロ。実にいろんな表現ができる方なのだな・・・と。また全体を通してコール・アングレの深い音色がとてもすてきでした。

現代音楽についてはいままで「食わず嫌い」のところがあってあまり勉強していないのでえらそうなことは書けません。金沢にお住まいの皆さんのほうがOEKの演奏会を通じて現代音楽に親しむ機会はずっと多いかもしれませんね。武満さんの作品は事前にCDで聴いて「なかなかいい曲だ」と思ったのですが、自分もオケをやっているものですから、実演を見るとついつい変わった打楽器や特殊奏法に目がいってしまって音楽に集中できませんでした。この次にこの曲を聴く機会があれば目をつぶって聴くことにしようと思います。

個人的には最後のラヴェルが一番楽しめました。チェレスタが2台並んでいる、と思ったのですが、よく見ると大きさが違っていて後から出てきた小さい方が「ジュ・ド・タンブル」という楽器なのでしょうか?(このあたりがセンチュリーだと掲示板に質問を寄せるとすぐに団員さんから回答がいただけるのでありがたいのです・・・) 「美女と野獣」のコントラファゴットが実によく雰囲気が出ていました。「妖精の国」の最後の盛り上がりは和泉公演で聴いた力強いベートーベンを思い出させてくれました。

OEKの団員さんたちは前日の夜に金沢で同じ公演をしたあと、今日の昼間に大阪へ移動して2日続けての演奏会だったわけですよね。ハードなスケジュールにもかかわらず集中力が途切れることはなく緊密な素晴らしい演奏だったと思います。ロビーで「あの集中力は普通のオケの2倍、3倍だよな」と話している人がいましたが、本当にそのとおりだと思いました。梅雨空の蒸し暑い大阪へ静かな、でもきらりと光る風を届けてくれたような演奏会でした。

2月からこちら、バッハ、リヒャルト・シュトラウス、モーツアルト、ハイドン、ベートーベン、そして今日のラヴェルや現代音楽とさまざまな時代の音楽をOEKで聴く機会に恵まれてきました。それぞれが実に素晴らしく、たいへん幅広い能力を持ったオーケストラであることを実感しています。次は9月の大阪公演がとても楽しみです。(2004/06/30)