星空のコンサート:金沢を彩る光と影のロマン
2004/08/14 金沢城公園特設ステージ

■第1部
1)オープニング・ファンファーレ
2)ウィリアムズ,J/サモン・ザ・ヒーロー
3)坂本九メドレー(明日があるさ,見上げてごらん夜の星を,上を向いて歩こう)
4)ジョン・ウィリアムズ・イン・コンサート(映画「E.T.」フライング・テーマ,映画「スター・ウォーズ:帝国の逆襲」帝国のマーチ,映画「スター・ウォーズ」酒場のバンド,?,映画「ジョーズ」テーマ,映画「E.T.」フライング・テーマ)
5)谷村新司/いい日旅立ち
6)宮沢和史/島唄
7)槙原敬之/世界にひとつだけの花
8)君に微笑めば(When you're smiling)
9)鈴懸の道
10)りんごの木の下で
11)That's a plenty
●演奏
寄島昭生指揮金沢プログレッシブ・ウィンド・トゥループ(1-4)
山瀬泰吾指揮金沢浪漫紀行合唱団(5-7),廣田智美(ピアノ*5-7),伊藤史朗(ドラムス*7)
Dixie Union Jazz Band(8-11)
ドリルチームSTUFF(カラーガード*4)

■第2部:Starlight Concert
12)ウィリアムズ,J./オリンピック・ファンファーレ
13)ボブ佐久間編曲/桑田佳佑(いとしのエリー,TSUNAMI)
14)君には君しかいないのだから
15)やさしい雨
16)遅すぎた季節
17)今はこのまま
18)最初から今まで(「冬のソナタ」主題歌)
19)さよならをするために
20)南安雄編曲/白いブランコ
21)エルガー/行進曲「威風堂々」第1番
22)ボブ佐久間編曲/トロピカル・ファンタジア:ラテン・メドレー(シェリトリンド,テキーラ,ある恋の物語(?),ラ・バンバ)
23)ホルスト(海野洋司作詞,南安雄編曲)/北斗
24)海野洋司作詞,南安雄編曲/小さな世界
●演奏
ビリーバンバン(歌*14-20,24)
ボブ佐久間指揮金沢ポップス・オーケストラ*12-13,20-24(コンンサートマスター:坂本久仁雄),ジョナサン・カッツ(ピアノ*12-13,20-24),斉藤順(ベース*12-13,20-24),伊藤史朗(ドラムス*12-13,20-24),金沢プログレッシブ・ウィンド・トゥループ(12-13,20-24),山瀬泰吾指揮金沢浪漫紀行合唱団(20,23-24)
*
辰島佳寿美(司会),海野洋司(演出総括)

Review by管理人hs
石川門の奥にある金沢城址公園が会場。開演前なのでまだまだライトアップされていません。
入口でボランティアスタッフが「ゴミは持ち帰りましょう」と袋を配っていました。奥に映っているノボリは出店です。夏祭り的で良い雰囲気でした。
入口でもらった,グッズ一式をビニルシートの上で撮影。丸いのはうちわ。プログラムには参加者名が書いてあります。右側に写っているのはペンライト。こういったもの一式が紐のついたビニル袋の中に納まっていました。履物入れ兼ゴミ袋も重宝しました。
開演直前。背景の緑が良い雰囲気
開演直後
何だかよくわかりませんが合唱団が写っています。
ディキシーを演奏した6人組
何だかよくわかりませんがオーケストラが写っています。
ジョン・ウィリアムズの曲にはこういう雰囲気がピッタリです。
火事ではありません。
メイン・ゲストのビリーバンバンが登場。右下に写っているのがペンライトの光。
全員で「白いブランコ」を歌っているところ(多分)
合唱指揮の山瀬さん。客席のど真ん中の高い場所からステージ前面に並んだ合唱団を指揮されていました。ボブ佐久間さんは合唱団の後ろにいましたので1曲を2人で指揮することになります。こういうのは初めて見ました。

毎年,お盆休みの時期に金沢城址公園で「星空のコンサート」と題された入場無料の野外コンサートが行われています。今回で12回目となります。私は,この時期金沢に居ないことが多いので,今まで一度も行ったことはないのですが,今年はスケジュールの都合がついたので,初めて出かけてきました。「こんなすごいことを10回以上やっていたのか!」と今更ながら思わせる素晴らしいエンターテインメントでした。これが無料で聞けるというのは本当に素晴らしいことです。

この日の朝,金沢では本当に久しぶりの雨が降り,どうなるかと思ったのですが,夕方には何とか雨が上がってくれました。雨だった場合,金沢市観光会館で行われることになっていたのですが,野外と屋内では照明・効果をはじめ,かなり違ったパフォーマンスになっていたと思うので,主催者の方はホッとされたことでしょう。

この演奏会は,ボブ佐久間指揮の金沢ポップス・オーケストラ,金沢浪漫紀行合唱団を中心にいろいろなジャンルの音楽が次々と演奏されるものです。毎年,ゲストを招いており,今回はビリーバンバンのお二人が登場しました。

今回登場したオーケストラ,合唱団は共に県内のアマチュア団体のメンバーが中心になっています。オーケストラのトップにはオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーが数人入っていましたので,OEKを核として県内の音楽団体が結集した,という感じになります。

このコンサートの主催者は,金沢浪漫紀行実行委員会という団体です。このコンサート以外にも「かなざわ史跡コンサート」など,いろいろな公演を行っています。「星空のコンサート」も過去,10回以上行っていることもあり,大変しっかりとしたチームワークで運営されていました。パンフレット,会場案内,アンケートの準備も万端で(あとは天気だけ...),大変気持ちの良い雰囲気でコンサートに臨むことができました。

実際に会場で動いていたのはボランティアの皆さんでした。出演者も地元のアマチュア音楽家が中心です。文字通り金沢市民の手によるコンサートといえます。今回,半分花火見物気分で(実際,花火も出てきました)会場の写真を撮影してきましたので,併せて紹介しましょう。

コンサートは夜7:00開演でした。まだ,「星空」というには少々明るいので,後半のオーケストラ演奏,ビリーバンバンの演奏に先立って,3つの団体による演奏が行われました。

開幕の景気づけに金沢プログレッシブ・ウィンド・トゥループによってファンファーレが演奏されました。この団体は,県内の吹奏楽団の選抜メンバーで全員黄色のTシャツを着ていました。この日はアテネ・オリンピックの開会式だったこともあり,このコーナーでもサモン・ザ・ヒーロー(アトランタ・オリンピックのテーマ曲)などオリンピックにちなんだ曲が演奏されました(坂本九メドレーは命日にちなんでいる?)。照明やスモークが効果的に使われていたのに加え,ジョン・ウィリアムズ・メドレーでは,旗を音楽に合わせて動かすドリルチームSTUFFというフラッグ・チームも登場しました。あの手,この手で盛り上げてくれたステージでした。

野外で吹奏楽の爽やかな音を聞くのは良いものですが,スピーカーからの音響には馴染めないものがあります。野外コンサートでは当たり前の音量なのかもしれませんが,「ホール内で物音を立てず耳をすまして聞く」という聞き方ばかりしている私のような者にとっては,勝手に大音量が耳に入ってくる,というのは少々疲れます。マイクを通して拡大された音というのは,個性がなくなり,聞いていて疲れます。ビリーバンバンのコーナー以外は,もう少し音量を抑えても良かったような気がしました。今回,右スピーカーのかなり近くで聞くことになったのですが,スピーカーから離れた場所で聞くべきだったと後悔しています。

次の合唱のコーナーには金沢浪漫紀行合唱団が登場しました。その名のとおり,このコンサートのための合唱団で第1回目のコンサートからずっと参加しています。白のTシャツで揃えた総勢200名の大合唱団の皆さんが大変楽しげに歌を歌っていました。「世界に一つだけの花」ではドラムスも加わり,会場の気分を盛り上げていました。

次も第2回から参加しているという常連ゲストのコーナーでした。Dixie Union Jazz Bandという6人編成のディキシーを演奏する団体が登場しました。赤黒の縦縞のベスト,蝶ネクタイ,帽子という格好良い衣装でビシっと揃え,少しレトロな気分のあるジャズの名曲を4曲演奏しました。

スネアドラム,バンジョー,チューバのノリの良いリズムの上にコルネット,クラリネット,トロンボーンがメロディを演奏するような感じでした。クラリネットが入っている点とどこでも演奏可能という点からすると”チンドン屋”とかなり類似点がありますが(トークもパフォーマンスも大変楽しいものでした),その大きな違いはスピード感です。最後のThat's a Prentyは,ディキシーの名曲で,演奏する楽しさが素直に伝わってきました。

この曲では,スキンヘッドのスネアドラム奏者がドラえもんのタケコプターのように風車を頭に付け(吸盤で付けていた?),走りながら頭上の風車を回し,それに併せてドラムを叩くという,すごいパフォーマンスを見せてくれました。

後半は「Starlight Concert」となります(この日は,残念ながら「星」は全く見えませんでしたが,雨が降らなかっただけで”良し”としましょう)。このコンサートは非常にステージ転換がスムーズで,オーケストラのメンバーもいつの間にかステージに乗っており,ほとんどインターバルがありませんでした。この進行も見事でした。

後半はボブ佐久間さん指揮の金沢ポップス・オーケストラが登場しました。オーケストラのメンバーは水色のTシャツで揃えていました。この日登場した3つの団体は,水色,黄色,白色と3色で色分けされていましたが,遠くから見てもよく分かるので効果的でした。

後半最初のオリンピック・ファンファーレは1984年のロサンゼルス・オリンピック用に使われたもので,その後も度々使われている,ファンファーレの定番曲です。この日の演奏では,レーザー光線に加え,クライマックスには花火も登場し,最後は「ものすごいこと」になっていました。花火見物のような歓声が上がりました。「いとしのエリー〜TSUNAMI」のメドレーの方も夏の夜に聞くにはピッタリのものでした。

その後,メイン・ゲストのビリーバンバンのお二人が登場しました。私自身,子供の頃,「白いブランコ」は聞いたことはあるのですが,リアル・タイムよりは少し後になります。実はこのデュオが兄弟デュオだということも今回初めて知りました(サイモン&ガーファンクルのような感じかと思っていました)。兄の菅原孝さんはつい最近還暦になったとのことで,会場からは「ホー」という感じの声が出ていましたが,それは変わることのないお二人の爽やかな雰囲気から来るのではないかと思います。

曲の方は聞いたことのない曲ばかりでしたが,どれもさっぱりとした感触が残りました。歌いやすく,聞きやすい音域の曲が多く,お二人の声が気持ちよくハモっていました。メロディ・ラインには日本的な感覚が全然なく,演歌的な世界とは別世界でした。現在の日本のポップスの原点があるような気がしました。

それにしてもトークが楽しめました。せんだみつおさんがビリーバンバンの第3のメンバーだったことがあるとか,昔の長髪時代のヘアースタイルは海彦山彦のようだったとか,面白い話が沢山出てきました。

この日は入場時にペン・ライトを無料配布されたのですが,この頃から,その存在を思い出した人が,少しずつ振り始めました。「まるでホタルのように,ポッ,ポッと点いてきますね」とおっしゃられていたとおり,曲が進むにつれてライトの数は増えていきました。

ペンライントを振るというのは,かなり気恥ずかしいものがあります。その”作法”を観察していたのですが,やはり身体全体を使って左右に振るというのがいちばん楽し気に見えます。車のワイパーのように肘から上だけ動かすのは,かなりゾンザイな感じに見えます。中にペンライトを前後に振っているおばあさんを見かけたのですが,何だか微笑ましかったですね(正面から見ると点滅して見える?)。

8月4日にユニバーサルレコードから「冬のソナタ」のテーマ(今回も歌われたようですが,私にはよく分かりませんでした)と焼酎「いいちこ」のCMに流れている「今はこのまま」(残念ながらこの曲も聞いたこともありません)を含むCDが発売された,との宣伝があった後,「最大のヒット曲,これが頂点」という「さよならをするために」が歌われて,このコーナーが終わりました。

最後はこれまで登場した団体が勢ぞろいするステージとなりました。まず,ビリーバンバンのお二人のデビュー曲でもっともよく知られている「白いブランコ」がオーケストラ+合唱と共に演奏されました。この曲は非常に美しく親しみやすいメロディを持っており,スタンダード・ナンバーとしての地位を確立しています。この演奏会の一つのクライマックスになっていました。

ちなみに「白いブランコ」の歌詞の中に「肩を抱いて...」という言葉が出てくるので,「箱形ブランコ」でしょうか?という質問が司会者からありました。お二人の話では「普通のブランコですよ。箱形ブランコは危険です。うちの孫も...」と社会問題にまで発展していました。だけど,普通のブランコで肩を抱くというのは確かに難しそうです。

続いてオーケストラのみで2曲演奏されました。おなじみの威風堂々の華やかな演奏に続いて,トロピカル・ファンタジアというラテン・メドレーが演奏されました。この曲ではボブ佐久間さんの華やかなアレンジが楽しめました。テキーラに続けて「酒は飲め飲め...」と黒田節がラテンのリズムに乗って出てくる辺り,洒落っ気もたっぷりでした。「テキーラ!」という団員の掛け声なども入り,大変楽しめる演奏でした。コンサートマスターの坂本さんのソロ,トロンボーン,トランペットなどのソロ(立ち上がって演奏するのは格好良い)など,視覚的にも楽しめました。

最後は全員参加で2曲歌われました。「北斗」という曲はホルストの組曲「惑星」の中の「木星」に,このコンサートの総合プロデューサの海野洋司さんが詞を付けた曲です。毎年,このコンサートの中で歌われているそうです。今年は同じ発想で「木星」に歌詞を付けた曲が人気を集めていますが,この曲の方がアイデアとしては先ということになります。

お揃いのTシャツの人が沢山ステージに乗って,スケールの大きな歌詞を持つ曲を歌う,というのは何となく民放の24時間テレビのエンディングを思い出させるようなところがありました。個人的にはこの手の番組は好きではないので,見たことはないのですが,生で参加するとなるとちょっと違います。天気を気にしながらコンサートをサポートして来た人に感謝したい気分になりました。

最後にアンコール的にディズニーランドでお馴染みの「小さな世界」が演奏されました(実は,私はディズニーランドにも行ったこともないのですが)。そこでのアトラクションを彷彿とさせるような演出が曲の最後の方に用意されていました。その趣向は以下の写真のとおりです。
↑赤くなったり... ↑白くなったり... ↑合唱団の皆さん ↑これだけ派手だとは思いませんでした。
↑最後は紅白歌合戦のように金色のテープが客席に舞いました。 ↑思わず何枚も撮ってしまいました。 ↑宴の後の風情 ↑二の丸付近もライトアップされていました

というようなわけで,休憩なしの約2時間があっという間に過ぎました。音楽をじっくり楽しむというよりは,”身体で感じる,目で楽しむ”というコンサートでしたが,出演者にとってもお客さんにとっても「この夏いちばんの思い出の1つ」になったと思います。

帰り際に,「すごかった」「感激した」「今回はじめて来た」「私は○回目」といった会話をよく耳にしましたが,今後,夏の名物イベントとして金沢市民の間にさらに定着していって欲しいものだと思いました。今回も沢山のお客さんが入っており,主催者の用意したビニールシート上は満席でしたが,今後,金沢城公園の芝生がいっぱいになるほどの大コンサートになったらとても楽しそうです(1万人ぐらい入ったらすごいのですが?)。
(参考)
金沢浪漫紀行ホームページ
ビリーバンバンホームページ
(2004/08/15)