2004いしかわミュージックアカデミー:オーケストラコンサート
2004/08/25 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
2)ミャスコフスキー/チェロ協奏曲ハ短調op.66
3)サン=サーンス/ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」
4)(アンコール)サティ/グノシエンヌ第5番
●演奏
神谷美千子(ヴァイオリン*1),ジャン・ワン(チェロ*2),パスカル・ロジェ(ピアノ*3,4)
ジョルジュ・パウク(1);原田幸一郎(2-3)指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング)

Review by 管理人hs  みやっちさんの感想

先日の室内楽コンサートに続き,いしかわミュージックアカデミーのオーケストラコンサートに出かけてきました。毎年,この演奏会では,アカデミーの講師陣がソリストとして登場し,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と共演しますが,今年は3種類の楽器による3人の作曲家の協奏曲が演奏されました。

この日は,仕事の関係で開演時間に間に合わず,1曲目のモーツァルトの第2楽章から会場に入りました。入ってみるとソロを弾いているはずのジョルジュ・パウクさんが指揮をし,若い女性がソロを演奏していました。後で掲示を読むとパウクさんの腕の故障で,アカデミーにゲストとして参加していた神谷美千子さんに変更になったとのことでした。神谷さんは,まだそれほど知名度は高くはありませんが,NAXOSからCDを出すなど国際的に活躍の場を広げている方です。

会場に入って第2楽章が始まると,滑らかで気持ちの良いレガートが流れてきました。OEKのまろやかな伴奏の上に広がる癖のない安定感のある音が大変魅力的でした。第3楽章も慌てることはなく,品の良さを感じさせてくれる演奏でした。ベテラン・ヴァイオリニストのパウクさんの演奏を聞けなかったのは非常に残念でしたが,若く実力のある演奏家を発見できたのは収穫でした。

次のミャスコフスキーのチェロ協奏曲は,演奏される機会が非常に少ない曲です。全く予備知識なしで聞き始めたのですが,すっと耳に馴染んでくるような曲でした。全体に「こじんまりとしたチャイコフスキー」といった感じでした。

2つの楽章からなっている曲で,まずファゴットのソロを含む憂鬱な雰囲気で始まりました。どこか「悲愴」交響曲を思わせるところがありました。この楽章は全体にゆったりとした感じでしたが,ジャン・ワンさんの音にはふやけた所はなく,常にしっかりとした芯がありました。いつもながら,集中力と緊張感のある演奏でした。

第2楽章はもっと動きのある気分で始まります。カデンツァに続いて,エンディングになりますが,この部分にも「悲愴」交響曲を思わせるようなところがありました。独奏チェロがデクレッシェンドし,震えるようなの弱音になると,ゾクっとするような緊張感が走りました。めったに聞くことのできない曲ですが,隠れた名曲的な作品だと思いました。

後半はサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」でした。この曲ではホルン4,トロンボーン3と管楽器が増強されていましたが,OEKぐらいの編成で聞くと非常に爽やかに響きます。ロジェさんの演奏もとても軽やかなものでした。すっきりとした速目のテンポで演奏され,さりげないきらびやかさがありました。さっぱりとしたOEKの弦の響きにも威圧的なところはなく,洒落た気分を感じさせてくれました。

第2楽章はこの曲のサブタイトルの由来となっている「エジプト風」の楽章ですが,エキゾティックな気分はあまり感じませんでした。透明感のあるクリスタル風の響きがが印象的でした。
1階玄関付近では最近のコンサートの写真展を行っていました。さだまさしさん,ペギー葉山さん,ハイティンクさんの写真が飾ってありました。これからも時々やってくれるのかもしれません。

第3楽章は勢いとスピード感のある演奏で,最後に大きく盛り上がり,視覚的にも華やかなテクニックを見せつけてくれました。常に計算された大変スマートな演奏でした。サン=サーンスの曲は,大変分かりやすく作られているので,あまり熱演をすると,かえって田舎くさい感じになります。ロジェさんの演奏は,その対極にあるような都会的な演奏でした。

アンコールには,サティ風のピアノ曲が演奏されました(後で家にあったCDで調べてみると,やはりサティの曲で,グノシエンヌの第5番でした)。ここでも透明感とさりげなさのある演奏で,アンコールにぴったりでした。

いしかわミュージックアカデミーのオーケストラ・コンサートが終わると,今年も夏の終わりに近づいたなと感じます。爽やかな秋の空気の気配を感じさせる演奏会でした。 (2004/08/27)



Review by みやっちさん  

私もIMAコンサートへ行ってきました。自由席だったので久しぶりに演奏者の息遣いの感じる1階前列で聴きました。

> 1曲目はジョルジュ・パウクさんが登場するはずだったのですが,神谷美千子さんに変更になっていました。私自身,パウクさんの演奏を大変楽しみにしていたのですが,神谷さんの演奏も大変正統的で立派な演奏でした。

そうですね、とても叙情的な美しい音楽を優雅に奏でていました。モーツァルトの第4番を楽しみにしていたのですが、神谷さんの眠りを誘うな第3番の第2楽章は、とても穏やかで心地よく思わず少し寝てしまいました(笑)。

> ジャン・ワンさんの弾いたミヤスコフスキーのチェロ協奏曲は非常に珍しい曲ですが,チャイコフスキーを思わせるメランコリーがあり,隠れた名曲的な曲だと思いました。

この曲は愁いを感じる渋みのあるチェロの音色を中心に、ジャン・ワンさんのいぶし銀ぶりが冴え渡っていました。オーケストラも楽章ごとにロシア的風土を感じさせる寂しさや荒々しさ、そして雄大な情景を見事に物語っていました。ミヤスコフスキーの曲はもちろん初めて聴いたのですが、管理人さんと同様、素晴らしい演奏だったと思います。

> パスカル・ロジェさんのサン=サーンスは,非常に洗練された演奏で,期待どおりの見事な演奏でした。

 ロジェさんの演奏は室内楽で聴いて以来2年ぶりですが、第3楽章の圧倒的な超絶技巧で息もつかせぬピアノの響きとそれに劣ることのないオーケストラの高揚感が圧巻でした。拍手が鳴り止まない中、アンコールのサティ/グノシェンヌ第5番はしっとりとした音色で協奏曲の興奮を和らげてくれる、締めくくりにふさわしい演奏でした。

> というわけで,IMAが終わると今年の8月ももうすぐ終わりですね。少々寂しさもあります。

 IMA同様、メダルラッシュに沸いたオリンピックも終わる寂しさがありますね。明日の夜は涼しくなった野外の金沢城公園でIMA受講生によるオーケストラが奏でるバロックの響きに浸りたいと思っています。(2004/08/26)