ギドン・クレーメル&クレメラータ・バルティカ室内管弦楽団演奏会
2004/10/17 石川県立音楽堂コンサートホール

1)バッハ,J.S./ブランデンブルク協奏曲3番ト長調BWV.1048
2)シュニトケ/合奏協奏曲3番
3)バッハ,J.S./ブランデンブルク協奏曲6番変ロ長調BWV.1051
4)シュニトケ/合奏協奏曲3番
5)(アンコール)ドゥナエフスキー/映画「サーカス」によるファンタジー
●演奏
クレメラータ・バルティカ
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン*2,4),マリア・ネマニテ(ヴァイオリン*2),エヴァ・ビンデーレ(ヴァイオリン*4)
ウラ・ウリジョナ,ダニエル・グリシン(ヴィオラ*3)
Review by Pfさん

今日の音楽堂での演奏会は本当に満足してきました。

シュニトケの曲は初めてでしたが、曲の中から、色々な国のいろいろな音楽を感じました。

ところで、アンコールの曲がとても面白く、ギドン氏の色々な技巧や音楽性をたっぷりと味わうことができましたが、作曲者を忘れてしまいました。『サーカス』という曲目でしたが、どなたか教えてください。 (2004/10/17)

わかりました。
ドナエフスキーという人でした。
「クレーメルランド」というCDの中に入っていました。(2004/10/18)

Review by 川崎(富山在住)さん

シュニトケさんを聴いた私のイメージ。「合奏協奏曲3番」。「アレグロ」。一見穏やかな無風状態、突然の鐘の一打で、整然とした古典的秩序の崩壊の始まり。ザワザワ、グチャグチャ、ウニウニ、消滅ステップ。シィーンとした静寂、壊滅フェイズ。「リゾリュート」、復活・復興への烽火、2人のヴァイオリニストの下。ワイワイ作業、蟻サン敵活動、コントラバスのリズム。悲観の目なし楽観モード、明日を信じての力強さ、無作法までの雄々しさ。明確な意思の音、強烈なインパクト。私の既製の先入観、馴れ合いの気分を突き刺す。弛まぬ継続、ネバーギブアップ。最後のワンセンテンス、順目から逆目、意外な反転にハッとされニヤッとする。作曲者の見事な工夫。

「ペザンテ」。秩序の再構築、2人のソリストとチェンバロでの雰囲気作り、共同作業。作曲家の静的世界を垣間見る。オーケストラのドラマチックな前振り、重々しく仰々しく。組み立て前の準備OK、周囲環境。断片的な重ね合わせ、一片一片は力無くともトータル的に高揚する気持。モノトーンから色合いが増す色彩感、どぎついカラフルさはない。準備万端、ココロの安らぎ。現状への満足、未来への期待。

「アダージョ」。心の中の反映、端折ることなくスミズミまで明らか。哲学的内面生活、いろんなコトを感じ思い考える。そして苦悩、その一挙手一投足が手に取る様。挫折した作曲家の復活へのプロセスなのか。過去への遡り、シュニトケさんの音の歴史の棚卸し。好き嫌いは聴き手に委ね、誇張なくありのままにさらけ出す。機が熟するのをジッと待つ。懐かしいメロヅィーがチェンバロで甦る。復帰のしるし、ピューピューピュー、弦の擦れ音。「モデラート」。2人のヴァイオリニストのスゴサ、ピッチカート、少しずつ遅らせながら高め合う。最初のメロディーが聞こえて来る、完全復活立ち直り。

「合奏協奏曲1番」。「プレリューディオ」。プリペアド・ピアノでの始まり始まり、2人のソリストの御披露目、前口上。クレーメルさんと小柄の眼鏡の女性、手慣らしのハイテクニック。オ−ケストラ全体が後に続き、サアサアサアサア。オールスタッフ勢揃い。「トッカータ」、わかり易いメロディー。快活で明るいリズム、トップモードのフル回転。ヴァイオリンの掛け合い競い合い、見もの楽しめるもの。コントラバスの強い弾きが打楽器代わり。ドンドンドンドン、品のいいチンドン屋さん。すべての楽器が吠えまくり、音のフルハウス。刺激的な躍動感。これまでという既製の枠を跳び越える。ノリノリの興奮、ダンシング・フィバー。可能性を超えてのシッチャカメッチャカ。

「レチタティーヴォ」。教会の大伽藍、荘厳なオルガンの連想はイージィな発想か。ホリの深い音楽をクッキリあざやか、心に深く刻み込まれる。大きな振幅、限界ギリギリ、メイッパイの音。作曲家のココロ内、音の風土・哲学の吐露、変遷の履歴をこと細かに説明。シュニトケさんを理解するには大きな手助け。楽章の終り部分、ワーワーワーワー、楽器すべてが叫び放題、無政府状態。鬱積した苦悩・わだかまりの放出。楽団員のはじける若さ、まさに壮観。「カデンツア」、一昨日のベートーベンのコンチェルトのカデンツアを思い出す。作曲家の豊富な音の持ち札、まとめ様なく断片フラッシュの連発、共通項のつながりを辿るだけ。微かで細やかな音、ピッチカート。ヴァイオリニストさんたち、お互いに相手の音に自分の音を乗せていく。クレーメルさんのウマサにニンマリする。

「ロンド」。同一メロディーの反復・連続、無限エコーの万華鏡。ソリストたちの手を変え形を変えての競い合い、凌ぎ合い。ひとしきりヤリトリの後、ハプシコードのレフリー、小声でワンクッション小休止。そのリフレイン、キレイな音楽は追い求めない、作曲家の試みすべてを探り続ける。固定観念なきの何でもござれ、全部を抱合したものがシュニトケさんの理想なのか。ピアソラの出現、色っぽく艶めかしく、楽団がアコーディオンの音色を模す。コントラバスをクルリと回転させてのエンタインメント。ショスターコヴィッチの5番の交響曲の軍隊までが聴こえそう、クライマックス。「ポストリューディオ」。かそけき響き、前の楽章との心地よいコントラスト。全力を出し切った後の爽やかな脱力感、喧騒の残り香、余韻、アフターマス。ショパンの葬送の4楽章。ヴァイオリン、オーケストラの夜の歌、大団円。 (2004/10/20)