ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団富山公演
2004/11/11 富山市オーバード・ホール(日本公演初日)
1)シュトラウス,J.U/ワルツ「戴冠式の歌」op.184
2)シュトラウス,J.U/ニコ・ポルカop.228
3)シュトラウス,J.U/皇帝円舞曲op.437
4)シュトラウス,J.U/ペルシャ行進曲op.289
5)シュトラウス,J.U/ワルツ「ウィーン気質」op.354
6)(アンコール)シュトラウス,J.I./アンネン・ポルカop.117
7)チャイコフスキー/交響曲第6番ロ短調op.74「悲愴」
●演奏
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(コンサート・マスター:ライナー・キュッヒル)
Review by 野々市町Tenさん  かず@富山さんの感想

前半はヨハンシュトラウスU世のワルツなど。プログラム解説によると、ロシアにちなんだ選曲とのこと。一曲目、ワルツ「戴冠式の歌」さすがに長旅の疲れか、管の音程も精妙さに欠け全体に鳴りがもうひとつだった。三曲目「皇帝円舞曲」で独奏チェロが優美なメロディを奏で、五曲目「ウィーン気質」で序奏のあと弦のトップ奏者で甘美にたっぷりゆったりと歌うあたりからようやくウィーンフィルによるウィンナワルツが堪能できた。指揮棒を持たないゲルギエフの両手も大きくしなやかに舞っていた。前半は(多分この曲のためと思われるが)コンサートマスターの二人が平台の上(よくチェロの独奏者が乗るような・例えばマイスキー)で演奏していた。(コンサートマスターはキュッヘルさん)

アンコールでポルカ風の小品が演奏された。前半でオーケストラのアンコールを聞いたのは初めてだ。多分「悲愴」の後ではなじまないので前半に持ってきたのではと思われる。

「悲愴」ゲルギエフは時に刺激的なアイデアではっとさせるが、この演奏では特別な仕掛けは無かった。全般に早めのテンポ、チャイコフスキー特有の強弱や粘着性をとりわけ強調するわけでもない。一気呵成でもなくあっさりしすぎているわけでもないのだが。

第一楽章、ファゴットのソロもかなり強い意志表示で始まる。提示部のビオラがさらに強い決意で第一主題を歌う。この時、ビオラのトップ奏者が全身から気迫をあふれさせリードする。この夜最高のパフォーマンスだった。アンダンテの第二主題はとても甘美でヴァイオリンのつややかな音色はウィーンフィルの独壇場といったところ。アレグロに入る直前のファゴットソロのppppppもはっきりと強調され直後のff 、sffも刺激的ではない。最後の金管のコラールによるコーダ、ホルンからトロンボーン・チューバへここも柔らかくかつ明確に締めくくる。

第二楽章、かなり速めのテンポで推進力がある。もう少しためらうようなワルツ風の演奏を期待したのだが。中間部のコントラバスとティンパニによる規則的な5つの単音はかなり控えめで悲劇性を強調していない。

第三楽章、これも速い。最後の全合奏による爆発的な行進曲も意外に控えめで、肩すかしにあったようだ。

第四楽章、ゲルギエフはここもまた間を置かない、あたかも全四楽章をひとつのまとまり「一大交響詩」のように捉えているのかも知れない。従って第二、三楽章はまさに全体の中間部としての扱いだった。第一、第二ヴァイオリンが主旋律を分け合いテヌートされる主題、中間部弦楽合奏による三、四、六、七連符による下降音型と八分音符二つのfff、それに続きいっぱいにffでテヌートされるアフタクトの四分音符、荒っぽいまでにするどく切り込むように主題が歌われる。ここにきてゲルギエフ・ウイーンフィル一体となった叫び、うねりに全身が包みこまれる。背筋が伸びる。タムタムがかなり大きく鳴らされ、最後の一音まで明確な意志を持って、喘ぎ悲しむのではなくしっかりと凛として全曲が締めくくられた。

座席:一、二階席最後列上手A席22,000円  (三階席が被っているのでかなり響きは悪い)音楽堂でも感じるのだがもっと響きを重視した座席のランク付けが必要に思う。予約などでは必ずしも希望に添った席は買えない。チケット代と音は比例してほしいと思うのだが。(2004/11/12)



Review by かず@富山さん

1階後列のいちばん左端の席だったので、ゲルギエフ氏の横顔が見えました♪

前半のウィンナ・ワルツでは、ウィーンの街かどにいるのではないかと錯覚するほどの夢心地気分になりました。ひと足早いニューイヤー・コンサートを聴いたよう。

後半チャイコフスキーでは、私の席までゲルギエフの大きな息遣いが聞こえました。ウィーン・フィルとのお得意のチャイコフスキーだけに、素晴らしい演奏を堪能させていただきました。

「悲愴」のあとのアンコールはありませんでした。休憩の前に1曲ありましたし。

しかし、ベルリン・フィルのときのように、鳴りやまない拍手の中、ゲルギエフ氏が再度ステージに出てこられました。

ベルリン・フィルとウィーン・フィルを立て続けに聴きましたので、なんだかすっかり力が抜けてしまった感じです(笑)。 (2004/11/12)