福野桂子チェロリサイタル
2004/11/25 金沢市アートホール
シューマン/幻想小曲集op.73
ブラームス/チェロ・ソナタ第1番ホ短調op.38
ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第5番ニ長調op.102-2
(アンコール)無言歌など3曲
●演奏
福野桂子(チェロ),鶴見彩

Review by 野々市町Tenさん

金沢出身の若いお二人による堂々たるプログラムのリサイタルで期待してでかけた。

一曲目は遅刻で会場に入れず、二曲目のブラームスから聞いた。第一楽章の主題から心のこもったチェロの響きに満たされる。ただピアノとの一体感に少し欠ける気がした。多分、曲がそのように出来ているのだろう、ピアノが濁ってうるさく聞こえる。いかにも渋いブラームスである。最後に主題が戻ってくる辺りは埋もれてしまった。第二楽章のメヌエットもピアノの二拍目、三拍目のリズムが固く、何か流れに乗り切れていないようだ。中間部のトリオはよく流れ、メヌエットに戻り固さがほぐれてきた。第三楽章はとても気迫がこもっていた。もう少し声部をみとおせれば良いのだが、がむしゃらな感じもした。

ベートーヴェンはさすがに名曲だ。後期の作品ではあるが実に若々しい演奏で感心した。冒頭から良く歌い、曲の構成も立派で第二楽章も感傷に浸るのではない端正な歌が聞かれた。三楽章のフーガも緊張感を持続させていた。ブラームスと同様、曲がそのように出来ているといったら失礼だがベートーヴェンは偉大だ。

福野さんのチェロは大変立派で充実していた。高音にもう少し輝きがあればとないものねだりをしたい。残念なことは譜面を出していること。そのため譜面台でピアニストが隠れてしまった。あれだけの演奏が出来るのだから次回は譜面なしでお願いしたい。このホールは弦楽器にふさわしくピアノだと響き過ぎる。ピアノは全開だったがバランスを取るのが難しい。

アンコールに無言歌など小品が三曲演奏された。いずれも気持ちがこもっていた。(2004/11/23)