バロック音楽の愉しみV
2005/01/29 石川県立音楽堂交流ホール

1)パーセル/愛,それは人間の最上の喜び
2)パーセル/いえ,いいえ,さからっても無駄なこと
3)ルクレール/フルートと通奏低音のためのソナタホ短調
4)ヘンデル/カンタータ「胸が高鳴る」
5)ヴィヴァルディ/カンタータ「疑惑の陰に」
6)バッハ,C.P.E./スペインのフォリアによる変奏曲ニ短調
7)バッハ,J.S./カンタータ第78番「イエスよ,汝わが魂を」BWV.78〜われらは急ぐ,弱けれどたゆみなき足どりもて
8)バッハ,J.S./カンタータ第9番「われらに救いの来たれるは」〜主よ,汝は善き業の多きを見ず
9)(アンコール)バッハ,J.S./ミサ曲ロ短調から
●演奏
長澤幸乃(ソプラノ),横町あゆみ(メゾソプラノ),岩淵恵美子(チェンバロ),中村忠(フラウト・トラヴェルソ)

Review by 野々市町Tenさん  

長澤,横町,石川県出身のお二人は「ラ・ストーリア」なる声楽アンサンブルを結成され,バロック以前の声楽曲に熱心に取り組んでおられる。今回はゲストのお二人を招き一層充実したコンサートとなった。

パーセルの二曲は二声とチェンバロによる劇場作品の付帯曲で,典雅な雰囲気に包まれた。こうした曲はさぞかし音程を整えるに困難を伴うのだろう。少し固さも感じられた。

ルクレールのソナタ,中村さんは大変な力量をお持ちで見事な演奏だった。演奏が進むに連れ古楽器独特のあたたかな響きや柔軟な節回しにすっかり魅了された。

ヘンデルのカンタータは横町さんのソロ。レチタティーヴォとアリアで表情に変化もつけ,中村さんの演奏も加わりあざやかな生き生きとした歌声だった。

ヴィヴァルディは長澤さんのソロ。これまたいかにもヴィヴァルディらしく曲想が明るく愉悦に満ちている。(歌詞の内容はそうでもない)ここも本領発揮というところ。

C.P.E.バッハはチェンバロ独奏の変奏曲で,いままで的確な伴奏を努めていた岩淵さんの華麗な演奏だった。私にはチェンバロ演奏家の個性は今ひとつ理解しにくく,普段はピアノ演奏によるバッハなどのCDを楽しむことが多いのだが,岩淵さんは変化に富む十二の変奏を紛れのない鮮やかな演奏を繰りひろげた。

大バッハの二曲は出演者全員による演奏。教会カンタータからの二重唱のアリアは最初のパーセルよりずっとアンサンブルが密になり,かつ空間の広がりを感じた。

アンコールにバッハのロ短調ミサから一曲演奏された。

今回のコンサートは素晴らしいゲストが加わり,大勢のお客さんも満足されていたようだ。毎回,プログラムにはお二人自らの訳による歌詞がついているが,これは大変ありがたい。お二人の努力による心遣いに感謝したい。 (2005/02/02)