中山知子ピアノコンサート
2005/03/12 金沢市民芸術村ミュージック工房
ハイドン/ソナタホ短調
ドビュッシー/ベルガマスク組曲
バルトーク/15のハンガリー農民歌
バルトーク/組曲 作品14
リスト/ハンガリア狂詩曲第12番嬰ハ短調
(アンコール)バルトークの小品
●演奏
中山知子(ピアノ)
Review by 野々市町Tenさん  
RECORD JACKET ART展の一環として開かれたピアノコンサートにでかけた。中山さんは金沢市出身、国立リスト音楽院で学ばれ、今月末には今回と同様のプログラムでニューヨークでも演奏されるとのこと。

ご存じのようにこの会場は旧紡績工場を再生したもので、雰囲気は充分だが、音響はとてもデッドで演奏家泣かせである。中山さんもかなり苦心されたようだ。

1曲目、軽やかに始まり、とても小気味よい演奏だ。とりわけバスの動きが力強く、残響のなさが逆にクラヴィーア演奏のような雰囲気を出していた。アダージョはもう少し歌ってほしいと感じたが、終楽章のリズム感も良かった。

ドビュッシーはかなりペダルを多用したロマンチックな演奏だった。高音に輝きがもう少しほしい気がするが、メヌエットはハイドン同様歯切れ良い。月の光は終始気持ちがこもった弱音でじっと耳をすます感じ。

ハンガリー農民歌、第1部の「4つの古い哀歌」はとても短い単旋律の歌だが、ふと万葉集でも流れているような気分になり、よく言われるマジャール系と日本とのつながりを思い起こさせた。第4部の「古い舞曲」、とりわけ最後の第15曲は興にのったリズム感あふれる楽しい演奏だった。

組曲、第2楽章のスケルツォが断然面白い。12音列を用いているとのことだが、つづく第3楽章とも早いパッセージが生き生きと躍動感にあふれ、難しげなところは全くない。

ハンガリア狂詩曲、どの曲もそうだが技巧的な部分はそつなく演奏されているのだが、少しスケール感に乏しい気もする。もっと華やかさがあればと思う。ハンガリア狂詩曲という曲はなにか煽っているわりに肩すかしを受けるような曲が多い気がしている。

使用されたピアノはヤマハのセミコンサートピアノだった。先入観かも知れないが全般に音が軽い気もした。これに残響のなさも手伝ってffの量感が不足する。再度、響きの良いホールでの演奏を期待したい。

アンコールにバルトークの小品が演奏されたあと、中山さんによるトークがあり、ハンガリー農民歌を原語で歌うという素敵なプレゼントで締めくくられた。 (2005/03/14)