カルメン
2005/03/20 富山市オーバードホール
ビゼー/歌劇「カルメン」
●出演・配役
カルメン:キンガ・ドバイ(ハンガリー),ドン・ホセ:チョン・イグン(韓国),エスカミーリョ:チェ・ウンジョ(韓国),ミカエラ:松田奈緒美,メルセデス:鳥木弥生他
チョン・ミュンフン指揮桐朋学園音楽部特別オーケストラ
藤原歌劇団合唱部,オーバード声楽アンサンブル,他地元児童合唱・ダンス等
演出・装置:ジェローム・サヴァリ
Review by 野々市町Tenさん  

富山市が総力をあげて取り組んだプロジェクト公演。2001年夏の「アイーダ」もコンサート形式と称しながらも完璧な充実した市民オペラ公演だったので大いに期待した。

今回の公演は、同日(20日)夜にNHK教育TVで放映されたオランジュでの「カルメン」と同様な演出・装置・衣装であり、出演者が若手中心となったものだ。(※TVは途中までしか見なかったので全てかどうか断言できないが)

一口にいって、可憐なカルメンとたくましいホセだった。捕縛されたあとホセから逃げ出すあたりやジプシーの歌で懸命にホセの気を引こうとする健気な歌と踊りとカスタネットはとても悪女には見えなく、恋するカルメンそのもの。ホセも三幕でミカエラの説得に応じて帰郷する場面や四幕の大詰めあたりは男らしく堂々としていて女々しくない。だから花の歌ももう一つ切々としない。カルメンのハバネラは優しげでセギディーリアの方が生き生きしていた。結局、一度カルメンをふったホセがバカでカルメンはずっとホセ一筋だったのに、と思わせた。

エスカミーリョはやや単調な役で叙情的に歌う部分がないので、誰が歌っても私は関心がいかないのだが。闘牛士の歌の後半でかわるがわる「愛」と歌う場面、メルセデス役鳥木さんの「愛」の一声はとってもよかった。多少身びいきもあるのだが。ちなみにこの夏、彼女は藤原歌劇団による「アドリアーナ・ルクブルール」に出演予定とのこと。

合唱は藤原チームと地元チームの違いがわからないくらい演技共充実していた。女工の喧嘩シーンでは演技の方が勝って歌詞が不鮮明な位。子ども達の兵隊行進場面はとても立派な演技と歌で誰よりも拍手喝采、TVより良かった。一人混じった女の子(ミニカルメン)も将来性を予感させる。

桐朋学生チームのオーケストラは奮闘してはいたが、人数の割に響きが薄い。右端に位置する打楽器群のタイミングが弦と微妙にずれてしまう。(前日、OEKトーマスの会心のティンパニを聞いたばかりだった)シンバルの残音処理も気にかかった。コンミスはソロも美しく懸命のリードだった。このオケの定期公演は感心していたが、さすがにオケピットでの演奏は厳しかったのではないか。

チョン・ミュンフンの指揮は、第一幕や四幕前奏曲の早いテンポに象徴されるこの人らしいメリハリの利いたストレートな指揮ぶりで、相変わらず格好よい。

総じて期待を上回るとまでは言えなかった。とにかくかつてのアイーダが素晴らしく(確か3,000円だった)、市民参加型公演とは経費をかければ上手くいくというものではないと思う。来年度のオーバードホール主催公演にオペラ演目が無くなっている。一点豪華主義ではない息の長い活動を期待したい。 ((2005/03/22)