金沢大学フィルハーモニー管弦楽団第30回サマーコンサート
2005/06/11 石川県立音楽堂コンサートホール

1)ベートーヴェン/「エグモント」序曲
2)ドリーブ/バレエ音楽「シルヴィア」組曲
3)ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調op.88
4)(アンコール)マスカーニ/歌劇「カヴァレリア=ルスティカーナ」間奏曲
●演奏
河内良平(1-2);塚田瑠美(3)指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団
Review by 野々市町Tenさん  

毎年楽しみにしているコンサートが金大フィルの公演だ。20数年前のシベリウスや巨人は未だに私の聴いた同曲演奏No1である。前回の悲愴も名演だった。3月に富山カンマーフィルによる高レベルのドヴォルザークを聴いたばかりだったので、今回のサマーコンサートはその比較も楽しみだった。

エグモント、充実した演奏だった。とりわけ弦合奏がずっしり響いた。全員の息づかいが伝わってくる。いつも書くがベートーヴェンは偉大だ。ホルン群は見事。木管はクラリネットの音色にもう少し深みがあればと思う。コーダの盛り上がりも自然で壮大。

シルヴィア、金大では何度か取り上げているらしい。初めて聴くが楽しかった。第1曲、華やかな幕明けのあとホルンによるジークフリートの動機のような主題が流れる。第2曲、冒頭の木管が不安定。OEKの真夏の夜の夢序曲でもそうだったように、このような曲はあたまもピッチもそろわないことが多い。逆にそろうと何とも至福な時となるのだが。第3曲、ピチカートの曲を選択するあたり弦の自信がうかがえる。第4曲、華やいだ音楽だ。全曲とおしてよくまとまった品のある演奏だが少し元気がたりない。多分パーカションが控えめだからだろう。このあたりは指揮の河内さんの好みなのか。ティンパニ・大太鼓、もっとズドンときて欲しい。この曲にはおなじみのハープ稗島さんが彩りを添えてくれた。いつもながら丁寧なアシストだ。

さて、ドヴォルザーク、指揮の塚田さんは指揮を始めて6ヶ月、初めての舞台とのこと。残念ながら荷が重かったか。第1楽章は4拍子だが四分音符138の指定であり、ふたつ振りの感じになる。第2楽章は2拍子だが八分音符80であり、ふたつかよっつか悩ましい。第3楽章は3拍子だが付点四分音符50、ひとつ振りか。第4楽章は2拍子四分音符116。こうなるとどうしても1拍目を中心として縦の線を合わすのに精一杯となる。そのため指揮者の緊張が管楽器メンバーに伝わり小さなミスがつづき音楽が萎縮してしまう。アウフタクトはたっぷりとってはいるのだが2拍、3拍の横の流れが皆無で、総じて1,2 1,2の行進曲風となる。テンポの揺れも穏やかでダイナミズムにも欠ける。チェロパートは良く歌っているし、2楽章のコンサートマスターのソロ、終楽章のフルートソロなど聴かせどころでは十二分に立派ではある。ただティンパニの抜けが悪いのが残念、2楽章C音の音程が気にかかった。

アンコールにカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲が演奏された。早めのテンポ、自慢の弦をもっとたっぷり歌わせてはどうだったか。

次回は京都大学との合同演奏とのこと。これも昔だが「展覧会の絵」での観光会館の天井が抜けそうな豪演を思い出す。大いに期待している。(2005/06/13)