ふだん着ティータイムコンサートVol.8
2005/06/19 金沢市民芸術村

ポスター
会場に掲示してあったコンサートのポスターです。
■オープン・スペース
14:00〜 子供のためのコンサート
1)シュトラウス,J./狩り
2)アンダーソン/プリンク・プレンク・プランク
3)渡辺俊幸/ドラマ「大地の子」〜テーマ
4)1分間指揮者コーナー:あなたも指揮者になれる
5)ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
6)宮川彬良/マツケンサンバII
●演奏
オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバー(松井直(コンサート・マスター))
藤井幹人(トランペット*3),柳浦慎史(司会)

■ミュージック工房
【第1部 15:10〜】

1)テレマン/ソナタト長調
2)ハイドン,M./ホルン,ヴィオラ,コントラバスのためのディヴェルティメント
3)イベール/5つの小品
4)メンケン/映画「美女と野獣」〜テーマ
5)映画「ピノキオ」〜星に願いを
●演奏
山野祐子(ヴァイオリン*1),加納律子(オーボエ*1),石黒靖典(ヴィオラ*2),山田篤(ホルン*2),今野淳(コントラバス*2),水谷元(オーボエ*3-5),柳浦慎史(ファゴット*3-5),遠藤文江(クラリネット*3-5)

【第2部16:00〜】
1)モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏K.423
2)三枝成章/ホップステップ・木登りねずみ,ブルドックのブルース,フォスターさんちの草競馬
3)久石譲/映画「ハウルの動く城」〜世界の約束,人生のメリーゴーランド4)モーツァルト/弦楽五重奏曲第4番ト短調K.516〜第1楽章
●演奏
竹中のりこ(ヴァイオリン*1),古宮山由里(ヴィオラ*1,4)
岡本えり子(フルート*2,3),加納律子(オーボエ*2,3),木藤みき(クラリネット*2,3),渡邉聖子(ファゴット*2,3)
松井直,ヴォーン・ヒューズ(ヴァイオリン*4),石黒靖典(ヴィオラ*4),早川寛(チェロ*4)

【第3部17:00〜】
1)ディッタースドルフ/ヴィオラとコントラバスのためのソナタ
2)テレマン/2つのオーボエのためのソナタ第1番
3)ブラームス/セレナード第1番〜第3-5楽章
●演奏
石黒靖典(ヴィオラ*1),今野淳(コントラバス*1,3)
水谷元,加納律子(オーボエ*2)
上島淳子(ヴァイオリン*3),古宮山由里(ヴィオラ*3),早川寛(チェロ*3),岡本えり子(フルート*3),木藤みき,遠藤文江(クラリネット*3),柳浦慎史(ファゴット*3),山田篤(ホルン*3))

Review by管理人hs

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の団員による無料コンサート「ふだん着ティータイム・コンサート」も今年で8回目となります。このイベントは昨年は,ヨーロッパ演奏旅行の関係もあり,秋に行われたのですが,今年はまた例年通り初夏に戻りました。天候も良かったこともあり,芝生を借景にしたオープンスペースでのコンサートを中心に行楽気分で楽しむことができました。

このイベントは演奏もさることながら,OEK団員の生の声が聞けるのも楽しみの一つです。前半の子供のためのコンサートでの柳浦さんの各団員へのインタビューだけでなく,後半の室内楽コンサートでも沢山の団員の皆さんの生の声を聞くことができました。本当に間近な距離で演奏されますので,参加された方は益々OEKへの親近感を増したのではないかと思います。

今回も石川県立音楽堂楽友会が市民芸術村専属のボランティア団体K-CUBICとともにいろいろお手伝いをしていました。私の方は,自分の家族と一緒に純粋にお客さんとして参加したのですが,いくつか写真も撮ってきましたので,その写真にキャプションを付ける形で紹介していきたいと思います(「OEK団員の素顔を知ってもらいたい」というこの演奏会の趣旨を考えて,あまり邪魔にならないように撮影してみましたが,問題がありましたらお知らせ下さい。)。

2年前のこのイベントの時同様,いくつかのパートに分けて御紹介しましょう。

■会場の雰囲気
この日は大変良い天気でした。金沢市民芸術村は,芝生の中にあるレンガ作りの建物ですが,芝生ではボール遊びなどをしている人たちも何人かいました(この写真では全然写っていませんが...)。

建物のすぐそばの水辺では水遊びをしている子供で賑わっていました。このすぐそばでOEKが演奏しました。
建物の中では例年どおり,飲み物のサービスがありました。前半は特に子連れが多かったので大変賑わっていました。

右の写真はOEの団員による「ごあいさつ」の張り紙です。


■子供のためのコンサート(14:00〜15:00)

●開演前
14:00からオープンスペースで「子供のためのコンサート」が行われました。左の写真は開演前の様子です。ガラスの向こうは先程子供たちが遊んでいた水辺になります。
パンフレットには例年どおり,OEK団員の顔写真とプロフィールが書かれていました。我が家の子供は,顔写真とご本人とを照合し,「見つけた」といって楽しんで(?)いました。OEKの皆さんのお顔を覚えるには最適のイベントといえそうです。

●開演

↑「ふだん着」ということですが,今年はさしずめ「クールビズ・コンサート」といったところでしょうか。
OEK団員が入ってきて演奏会が始まりました。今年もファゴットの柳浦さんの軽妙な司会で進められました。
最初に演奏されたのはシュトラウスのポルカ「狩り」でした。ピストルが入りますので景気づけにはぴったりの作品でした。

↑「狩り」の演奏中ピストルを撃つ柳浦さん

●楽器&団員紹介:弦楽器編
【ヴァイオリン】
続いて,楽器紹介を兼ねた団員紹介が行われました。この会場はあまり広くありませんので,弦楽器は半分ぐらいの人数でした。第2ヴァイオリンではいちばん最近入団した竹中さん(右の写真)がインタビューを受けていました。竹中さんが入ってOEKの平均年齢が一気に下がったそうです。
インタビューの後,各楽器ごとにデモンストレーションが行われました。コンサートマスターの松井さんが演奏したのは「もののけ姫」の一節でした。
【ヴィオラ】
ヴィオラのパートでは古宮山さんがインタビューを受けていました。古宮山さんも入団して2年ほどの若い女性で,竹中さん同様平均年齢をかなり引き下げたようです。
デモンストレーションでは石黒さんが「浜辺の歌」の一節を演奏しました。
↑ヴァイオリンとヴィオラの大きさ比べ
【チェロ】
チェロには元OEK団員で現在は事務局のフロリアン・リームさんが加わっていました。リームさんがチェロを弾く姿を見るのは久しぶりのことです。デモンストレーションでは,早川さんが「アンパンマンのマーチ」の一節を演奏しました。
【コントラバス】
コントラバスは,お馴染みの今野さんです。柳浦さんは,今回も,コントラバスを見て「これはタンスです」というジョークを言っていました。デモンストレーションでは「大きな古時計」の一節が演奏されました。
【プリンク・プレンク・プランク】
弦楽器の紹介が終わったところで弦楽器だけでアンダーソンの「プリンク・プレンク・プランク」が演奏されました(この曲名はなかなか覚えるのが難しいですね)。左の写真では柳浦さんが手を広げていますが,これは,曲の途中で手拍子を入れる場所を確認しているところです。

下の写真は本番の演奏の方です。ピツィカートで弦を弾いた瞬間に「パン」と手拍子を入れている瞬間です。後列の管楽器の皆さんがちゃんと手拍子をしています。ちなみにこの時,コントラバスの今野さんが楽器を回転させていたらしいのですが...手拍子に集中していて見逃してしまいました。

●楽器&団員紹介:管・打楽器編
【フルート】
続いて管楽器の紹介になりました。岡本さんが演奏したのは「七つの子」でした。
【オーボエ】
リードの作り方についていきなり質問された水谷さんはは,「切って,削って...」という過程を律儀にスラスラと説明され,子供たちもあっけに取られていたようでした。演奏した曲は「海」の一節でした。

その後,イングリッシュ・ホルンとオーボエの大きさ比べをしました。
【クラリネット】
木藤さんがデモで演奏したのは「ブンブンブン」の一節でした。
【ファゴット】
渡邉さんが演奏したのは「くまのプーさん」の一節でした。ファゴットの雰囲気にぴったりの選曲でした。
【ホルン】
続いて金管楽器に移りました。山田さんが演奏したのは「かたつむり」の一節でした。これもまた,(形状的に)ホルンにぴったりの選曲です。
【打楽器】
渡邉さんがティンパニで「うさぎとかめ」の一節を演奏しました。ティンパニは自由に音階を出せるということがよく分かりました。渡邉さんは,この後,格好良くドラムスのデモも行いました。
この日エキストラで参加していた中林愛子さんがシンバルを一発叩いているところですが...思わずブレてしまいました。最前列の子供たちもびっくりしていたようです。
【トランペット】
トランペットの楽器紹介は後回しになったのですが,その代わりに藤井さんの独奏で,渡辺俊幸作曲の「大地の子」のテーマが全曲演奏されました。近くで聞くトランペットには目が覚めるような迫力がありました。

●1分間指揮者コーナー
毎年お馴染みの「1分間指揮者コーナー」です。今回もまたいろいろな”指揮者”が登場し,「運命」の冒頭部を指揮しました。司会の柳浦さんの息子さんも登場しました。ほとんどの人は,段々テンポが遅くなってしまいました。「運命」の冒頭はいきなり休符で始まりますので,初心者がいきなり指揮をするのはかなり難しいのではないかと思います。

●ハンガリー舞曲&マツケンサンバII
お口直し(?)に指揮者なしでブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏されました。その後,このコーナーの”締め”として「マツケンサンバII」が演奏されました。OEKによるマツケンサンバというのも貴重かもしれません。
演奏が終わり,全員でご挨拶をして,このコーナーは終わりました。我が家の子供は,ここまで聞いて帰りました。出入り自由というのもこの演奏会の気楽なところです。

■室内楽コンサート(15:00〜17:45)


【第1部】
写真はありません 後半はミュージック工房に移動しての室内楽プログラムとなりました。さまざまな変わった組み合わせのユニットが次々と登場しました。
最初にオーボエの加納さんとヴァイオリンの山野さんによる二重奏があったのですが,私は休憩中,自分の車まで一度戻っていたこともあり演奏途中から聞くことになってしまいました。それで写真はありません。
続いて,ホルン,ヴィオラ,コントラバスという非常に変わった組み合わせの曲が演奏されました。ワルツなどでは,最初から最後までリズムを刻んでいる「めぐまれない3楽器」(今野さん談)による演奏でした。今野さん,石黒さん,山田さん(写真の左から)のお三方は,設立当初から在籍されていますので,まさにOEKを地道に下から支えられている方々と言えます。
オーボエ,クラリネット,ファゴットによる三重奏というのは,この演奏会では毎年お馴染みです。このミュージック工房のようなこじんまりとした場所で聞くには,木管三重奏というのは最適です。左から水谷さん,柳浦さん,遠藤さんです。

【第2部】
第1部の「古株3人組」に対抗するかのように,ヴァイオリン,ヴィオラの「新人2人組」が登場しました。今回演奏された,モーツァルトの曲はハイドンの代わりにモーツァルトが注文を受けて書いてあげた曲とのことですが,とても素晴らしい演奏でした。特に竹中さん(写真左)のヴァイオリンのすがすがしさが印象に残りました。
続いては木管楽器の女性奏者4人組「ビューティ・フォー(自称)」によって子供向けの作品が数曲演奏されました。三枝成章作曲のピアノ曲をオーボエの加納さんが木管四重奏用にアレンジした曲とのことです。木管楽器の優しく明るい響きは,こういう作品にぴったりです。写真は左から岡本さん,加納さん,渡邉さん,木藤さんです。
第2部最後はモーツァルトのト短調の弦楽五重奏の第1楽章が演奏されました。非常にすっきりとまとまった演奏でした。機会があれば是非全曲を聞いてみたい名曲です。写真は左から早川さん,ヒューズさん,古宮山さん,松井さん,石黒さんです。

【第3部】
最後のコーナーの最初は,ヴィオラ&コントラバスという「もっとも地味なデュオ」(今野さん談)によるソナタでした。それにしてもいろいろな組み合わせの曲があるものです。聞いているうちに,段々とゆったりとした気分になるような癒しを感じさせてくれる演奏でした。写真は左から石黒さん,今野さんです。
一転して,加納さん,水谷さんによるオーボエ二重奏は大変鮮やかなものでした。今回の室内楽プログラムをずっと聞いてみて,オーボエの音がいちばんよく通るなと実感しました。素晴らしい掛け合いでした。
最後に,今回の室内楽プログラムの中で最大の編成である九重奏でブラームスのセレナード第1番の後半が演奏されました。「セレナード」という曲のタイトルからすると,オーケストラ版よりも今回のような少人数での演奏の方が相応しいのかもしれません。かなり前,山下一史さん指揮の定期公演でも演奏されたことがある曲ですが,充実感とともに親しみやすさを感じました。
この演奏に参加していたのは,上島さん,古宮山さん,早川さん,今野さん,柳浦さん,山田さん,遠藤さん,木藤さん,岡本さんの9名でした。オーボエが入らない代わりにクラリネットが2本入るのが独特でした。
演奏後,9人全員で挨拶して,お開きとなりました。お疲れ様でした。

というような感じでコンサートが終わりました。今回のイベントは,分刻みで動いていたようで,ダラダラとしたところが全然ありませんでした。大変スムーズな進行でした。以前のこの演奏会は,もう少し長時間だったのですが,今回ぐらいの長さが演奏者と聴衆の疲労感からしても,丁度良かった気がします(背もたれなしの平土間でさらに長時間座るのはしんどいと思います)。この辺の進行の良さは,照明,舞台設営も含めて,専属ボランティア団体のK-CUBICの力が大きかったと思います。

最初に書いたとおり,OEK団員に身近に接することのできる,このコンサートは,団員と市民とのつながりをより深いものにするために大きな力があると思いました。今回も大変賑わっていましたが,来年以降も是非続けていってほしい演奏会です。(2005/06/21)